かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:横浜シティ合唱団第17回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は平成29年11月4日に聴きに行きました、横浜シティ合唱団第17回定期演奏会をご紹介します。

横浜シティ合唱団と言えば、昨年もバッハのロ短調ミサを聴きに行っています。

コンサート雑感:横浜シティ合唱団第16回定期演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1481

横浜シティ合唱団さんは、その年の演奏会で次の演奏会が何時で、何を演奏するのかが決まっているため、プログラムに記載があります。そこで、ことし11月に「エリア」を演奏するということを知ったため、予定を組んだのでした。かつ、土曜日と、私が時間を作れる曜日。ですから、1年以上も前から予定を組みました。

メンデルスゾーンの「エリア」と言えば、以前N響定期演奏会1000回記念のCDを御紹介しています。

今月のお買いもの:サヴァリッシュ/N響の「エリア」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1027

ホールが異なりますので、残響などが異なり簡単に比較はできませんが、私はアマチュアでこのN響と同等かそれ以上の演奏になったと思います。まあ、昨年のロ短調で実力がある合唱団であることは織り込み済みですが、「エリア」はオラトリオであるがゆえに、合唱団は表現が実は難しい作品です。

エリヤ (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%A4_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

バロック時代のオラトリオと決定的に違うのは、メンデルスゾーンの時代、とてもドラマティックになっており、むしろ受難曲に近い様式になっていると言う点です。受難曲とオペラの中間のような感じです。

ですから、合唱団は単に合唱を担当するのではなく、その合唱が「誰を」表現しているかによって作品上の役割が変ると言う事です。つまり、その分切り替えが大切ですし、またドラマティックであるがゆえに、余計な感情が入ってしまいかねないという点もあるのです。

サヴァリッシュ/N響の演奏では、感情移入の点で優れており、聴いていて「熱い」んです。あの端正でつまらないとまで言われることが多いN響が、とても熱い。オペラも演奏するがゆえに、恐らくサヴァリッシュがオペラ風と言う指示を出したのだろうと私は予測していますが、そんな演奏です。

一方、今回の横浜シティ合唱団さんは、感情移入も勿論、ホールの残響を上手に使った美しさも兼ね備え、徹頭徹尾その合唱がしっかりと役割を果たしており、群衆が扇動されていく様は鬼気迫るものがありました。ソリストも抜群で、特にエリアを担当した与那城圭は素晴らしかったです!若いですが、エリアの預言者としての風格、そして人間としての内面性の表現が素晴らしい!

そんなソリストたち、そして今回も幾人かソリストが合唱団と共に歌っていましたが、遜色ないんです。だからこその、例えば第2部において、女王に「自分たちが侮辱されたのだぞ、エリアを殺せ!」と扇動され、憤っていく様は絶妙です。これ、できそうで難しいんです。どうしても感情に引っ張られて行くんで。でも、感情に流されず、しかし民衆が扇動され怒りに打ち震え、エリアを殺すべく狂っていく様の表現は冷静さも内に秘めているのに、そうとう鬼気迫る素晴らしい演奏でした。

でも、プロの合唱団でもないですし、音大の学生合唱団でもないんです。社会人が集まった混声合唱団なんです。本当に素晴らしい!最後合唱団だけになった時にブラヴォウ!をかけさせていただきました。ふわっとした軽めの最後「アーメン」も美しく、これでブラヴォウをかけなければどこでかけるのかという感じです。

一方で、オケも素晴らしい!実は東京シティフィル。以前飯守泰次郎指揮のベートーヴェン交響曲全集を取り上げた時のオケです。それだけ実力がしっかりしているオケと、合唱団がアマチュアなのに遜色がないんです。本当に驚くとともに、ごく普通に感動します。そしてもちろんですが、あそこは多分こういう部分だから、練習大変だったろうなあとか考えると、涙腺まで緩んでしまいます・・・・・

「エリア」は旧約聖書が題材ですが、私はメンデルスゾーンの実体験が反映されている作品だと思っています。それゆえに、現代でもいろいろ置き換えて考えることが可能な、素晴らしい内容を持っています。だからこそ、下手な演奏は興ざめですが、全くそんなことがありません。もう脱帽するしかありません。

人数は比較的多いとはいえ、数からすればコア・アプラウスといい勝負です。それでも今回、オケと共に横浜みなとみらいホールの舞台上に立ち、3階席までしっかりと声が飛んでいるのが素晴らしかったですし、しっかりと音も上から筒こむんですね。しっかりとホールを楽器としても使えているアマチュア合唱団はそうそういません。正直、フィルハーモニック・コーラスさんは横浜シティ合唱団の演奏はお勧めです。とても刺激を受けるのではないでしょうか。

力任せではなく、発声も軽く、でも力強く、しなやかさもあるので、もうプロとして評論したほうがいいくらいのレヴェルです。それは指揮しているのがバロックオーソリティである声楽家の青木洋也氏であると言うこともあるのでしょう。フレージングがとてもいいですし、無理がないです。声楽家ならではの解釈とアプローチは、聴く者をいつしか「エリア」の地平へと連れて行きます。本当に素晴らしいです。

帰りに、とても幸せに包まれている自分がいることに気が付いて、いい一日だったなあって思います。こういう演奏会に巡り合えるのが、幸せですね。本当に演奏者の皆さんに感謝です。次回は再来年の日曜日なので、行けませんが、私が居ようが居まいが、今の横浜シティ合唱団さんの実力をもってすれば、またプロ並みの素晴らしい演奏が聴けるものと思います。私はその次に機会があれば聴きに行こうと思いますが、読者の皆さんで時間が作れるのであれば、是非とも平成31年3月24日に同じみなとみらいホールでバッハの「ヨハネ受難曲」を、まさに受難節に演奏するそうなので、是非聴きに行ってください!お奨めです!




聴いてきた演奏会
横浜シティ合唱団 設立25周年記念第17回定期演奏会
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
オラトリオ「エリア」作品70
藤崎美笛(ソプラノ1、少年、天使)
清水梢(ソプラノ2、やもめ、天使)
布施奈緒子(アルト1、王女イザベル)
輿石まりあ(アルト2)
櫻田 亮(テノール1、オバドヤ(宮廷長)、アハズ王)
島弘城(テノール2)
与那城敬(バス1、エリア)
白岩 洵(バス2)
中田恵子(オルガン)
青木洋也指揮
東京シティフィルハーモニック管弦楽団
横浜シティ合唱団

平成29年11月4日、横浜中、横浜みなとみらいホール大ホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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