かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:メンデルスゾーン 合唱曲作品集1

神奈川県立図書館ライブラリ、今回から10回にわたってメンデルスゾーンの合唱曲を取り上げます。もともとはブリリアント・クラシックスのものです。

こういう全集、ブリリアントはたくさん出してくれています。神奈川県立図書館もかなりライブラリとして持っています。また私もいくつか「今月のお買いもの」でご紹介もしているかと思います。

10集あるのに、これでも全部ではないんです。中大混声が取り上げた、「野に歌う6つの歌」は残念ながら収録されていません。実はそれを期待して借りたのですが・・・・・・

とは言え、メンデルスゾーンと言えば、合唱団員であれば「ひばり」など、重要な作品がいくつもあるので、ブルックナーともども軽視できない作曲家です。

すくなくとも、メンデルスゾーンの作品を取り上げることが多いのは果たしてオケなのかそれとも合唱団なのか・・・・・そういう作曲家でもあります。

さて、まず第1集は宗教曲がならんでいます。詩篇を歌詞に使ったカンタータです。

カンタータと言われて、バッハを思いだす方も多いかと思いますし、関連を考えることでしょう。勿論、関連がないわけがありません。小さい時にバッハの作品と触れたメンデルスゾーンは、自然とバッハの宗教曲に触れていくことになります。

フェリックス・メンデルスゾーン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3

そもそも、バッハ再興の祖です。マタイ受難曲の復活演奏はメンデルスゾーンの最大の功績と言っていいでしょう。バッハのような宗教曲を、メンデルスゾーンも書いていくことになります。

とは言え、時代は前期ロマン派です。バロック音楽を書いたわけではありません。純然たるロマン派の音楽がそこには存在します。バッハのように聖書を根底にした諭旨を音楽にしたということであり、バッハがバロック期の音楽だったからこそバロック音楽だったように、メンデルスゾーンは前期ロマン派の音楽で表現した、ということです。それがまず第1集に収録された3曲です。

まず第1曲目の詩篇42番ですが、「鹿が谷川の流れを慕いあえぐように」という題がついています。これはネットで調べてみますと、「涸れた谷に鹿が水を求めるように」という訳のほうが、歌詞の内容に会っているようです。

詩編42−43 解説
http://mikio.wada.catholic.ne.jp/PS_42_43.html

聖書翻訳について
鹿が谷川の流れを慕いあえぐように
http://blog.livedoor.jp/yoshihirano/archives/51632452.html

水が生き物にとって生命を維持するのに大変重要な役割をもっているように、苦難にあって人は神を求める様子を描いた作品です。レチタティーヴォもきちんと歌になっていますし、かつてベートーヴェンがオリーヴ山上のキリストで語った「新しいキリストの表現」が現出されています。その点では、かつて私は「エリア」を取り上げた時、メンデルスゾーンベートーヴェンを超えたのだと述べましたが、すでにカンタータでしっかりと声楽曲に於いてはベートーヴェンを超えたと言えるかと思います。

続く2曲も様式的には同じでして、おなじようにバッハ同様詩篇の歌詞から喩を導き出そうとしています。詩篇第95番は神への感謝から人間が以下に生きるべきかを問うていますし、また詩篇98番「新しき歌を主に向かって歌え」は、バッハも作曲した歌詞をそのままメンデルスゾーンも使っています。徹底的にバッハを意識した作曲の作品がこの3曲です。

「主に向かって喜び歌おう」
詩篇95:1−3

http://homepage1.nifty.com/myrtus/sermon101017.pdf

詩篇95−100篇 「主に歌え」
http://www.logos-ministries.org/old_b/psa95-100.html

こういった作品が基礎にあって、「エリア」や「聖パウロ」は生まれたと言えるでしょう。勿論、この二つのオラトリオへの興味はこの合唱曲集があってこそです。この作品集のほうが先に借りてきていますから。

というよりも、この第1集で私は衝撃を受けたと言っていいと思います。そもそも、スウェーデン放送合唱団のコンサートでメンデルスゾーンの宗教曲に触れた時から、メンデルスゾーンの合唱曲は聴きたいと思っていましたが、実際に聴いてみますと衝撃だったのです。なんと豊かな作品群だろうか、と。

メンデルスゾーンはたくさんの宗教合唱曲を書いていて、それが結実した頂点が「エリア」であり、「聖パウロ」である、と。それはバッハがカンタータやモテットを作曲し、その頂点で受難曲を作曲したのと全く同じだからです。

どこまでもメンデルスゾーンはバッハを尊敬したのだな・・・・・と。ですから以前、バッハは古典派の時代を生き残り、ロマン派へと受け継がれたと述べたわけです。実際には失われてなどいません。大バッハの息子達や、モーツァルトベートーヴェンによってフーガの技法が受け継がれています。バロック音楽自体は時代遅れとなりましたが、バッハの「精神」といったものは死んではいなかったのです。常に新しい形に取り込まれることで、生き残り、受け継がれたと言っていいでしょう。そのことこそ、わたしにとって衝撃だったのです。

その意味では、ロマン派の作曲家たちがモーツァルトを尊敬し、その様式をロマン派の音楽としてとりこんでいったことは自然な方向であると言えましょう。バロック音楽の影響をまだ残しているモーツァルトを、完全な古典派であるベートーヴェンよりも取り入れることは、バッハを尊敬してるメンデルスゾーンをして規定したと言ってもいいかもしれません。

勿論、ベートーヴェンの音楽もロマン派を規定しており、それは交響曲に於いて顕著ですが、ロマン派は決してベートーヴェンだけではなかったということを、メンデルスゾーンのこういった合唱曲は教えてくれるのです。

演奏は、ニコル・マット指揮ロイトリンゲン・ブリュッテンブルク・フィルハーモニー管弦楽団と、ヨーロッパ室内合唱団。この組み合わせはブリリアント・クラシックスでは結構普通にあるもので、すでに私もハイドンの宗教曲などでご紹介しているかと思います。端正な演奏、そして軽くも力強いアンサンブルは、伸びやかで美しい演奏を私たちに聴かせてくれます。バッハの時代であれば聖歌隊が歌ったような作品を、普通の合唱団がまるで聖歌隊のように表現しています。室内合唱団という規模がそれを可能にしているのでしょう。オケが演奏していない、所謂アカペラの部分こそ本当に美しく、この合唱団が実力をしっかりともっていることを私たちに教えてくれます。

アカペラは本当に難しいのです。カラオケで伴奏がなくなると歌いにくいという経験をされた方も多いかと思いますが、同様にオケなどの伴奏がない中で歌うと言うことは、互いの音を聴きあい、それでアンサンブルを合わすということを意味します。確かに、指揮者はいるでしょうが、それでもアインザッツを合わすなどは伴奏の導入もない中でやるのは互いの息が合わないと難しく、その「息」を合わすためには互いの息を合わさないといけないのです。

特に、バッハを強く意識した詩篇98番で感動的な演奏へとそれはつながっており、美しいアカペラの後に、すくっと立つごとくオケと合唱団がユニゾンを演奏する部分は、涙さえ出て来ます。仏教徒なのに、です。

キリスト教が「歌」という、どの民族も持っている普遍的なツールで表現しているからこそ、それが可能なのでしょうし、それを高度の技をもって表現する優秀な合唱団が存在してこそ、実現する世界だと思います。




聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
詩編第42番「鹿が谷川の流れを慕いあえぐように"Wie der Hirsch shcreit"」作品42
詩編第95番「さあ主に向かって礼拝しよう"Kommt, lasst uns anbeten"」作品46
詩編第98番「新しき歌を主に向かって歌え"Singet dem Herrn"」作品91
イザベル・ミュラー・カント(ソプラノ、詩編42・95)
ぺトラ・ラビツキ(ソプラノ、詩編95)
ダニエル・サンズ(テノール�T、詩編42・95)
ゲルハルト・ノイマンテノール�U、詩編42)
マンフレッド・ビットナー(バス�T、詩編42)
クリストフ・フィッセザー(バス�U、詩編42)
ヨーロッパ室内合唱団
ニコル・マット指揮
ロイトリンゲン・ブリュッテンブルク・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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