かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ベームとウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲全集から1

東京の図書館から、今回から4回に渡り、小金井市立図書館のライブラリである、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるベートーヴェン交響曲全集を取り上げます。とは言っても、全てを取り上げるわけではないんですが・・・・・

全集ものも充実している小金井市立図書館ですが、ベートーヴェン交響曲に関してはあまり全集がなかったような気がします。その中でもベーム指揮ウィーン・フィルがあるのはさすがだと思います。府中市立図書館でもベームが指揮した全集あったかなと思うのです。

まずは、交響曲第4番と第5番「運命」がカップリングされたものから。テンポとしてはどっしりしているのですが、あまりおそさを感じさせず、むしろ生き生きとしているのはさすがベームウィーン・フィルのコンビだなあと感じます。録音が1972年。絶頂と言ってもいい時期だと思います。

それは第5番でも同様で、どっしりしつつもダイナミックかつ生命力がある演奏で、聴いていてどこか魂が震える部分があります。ゴールデンコンビと言ってもいいコンビですから、当たり前かもしれませんが。

ですがベームはやはりすごかった!ではこのブログが終わってしまいますので、一つ考察しますと、やはりベームの譜読みの深さだと思います。それと、経験値でしょうか。70年代に活躍したいわゆる巨匠と言われる人たちは、すべからく戦争を経験しています。戦争が楽しかったという人はあまり多くないと思います。ほとんどの人が苦しかった経験を持っていると思います。特にドイツの場合、建物ばかりではなく社会や人々の魂まで徹底的に破壊されています。

そんな経験をすれば、どうしても魂レベルでは深みが加わってしまうもの。なので劇的な演奏が多くなります。それはそれで素晴らしいのですが、はたしてそれは幸せなことなのか?というのは投げかけてもいいのでは?と思います。

最近では、ロシアのウクライナ侵攻によって戦争が美化される傾向があります。確かに攻められているのはウクライナですので、どうしても肩入れしたいのはわかるのですが、しかしながら、けっしてそれは幸せなことではありません。むしろ現地の人々は苦しみの中にいます。それはウクライナだけではなく、前線にいるロシア軍兵士にしても同じです。そのロシア兵の親族たちも、気が気でならないでしょう。戦争とはそういうものです。

ベームも、第2次大戦によって同じような苦しみの経験を持っているわけで、その人生経験が作品解釈に影響しているといえます。聴き手の私たちにとっては感動する演奏であっても、その背景に解釈をしている人たちの苦しみの経験があることは、理解しておく必要があるのではないでしょうか。

特に、「運命」では神がかった演奏になっており、そこにはベームの人生を想わずにはいられないのです。ベームがスコアリーディングの結果掬い取った作品の魂を、自らの経験を照らし合わせ、ともすればフラッシュバックする想い出も投影される・・・・・そしてそれはベームだけではなく、演奏しているウィーン・フィルの団員達も同様です。1970年代と言えば、第2次世界大戦が終わってから25年ほどしか経っていないわけです。第4番が27年後、第5番が25年後の録音です。演奏している大部分の人たちが戦争を経験しているわけで、とても複雑な心理を持っているわけです。それが演奏にどうしても影響するわけですね。

ですがそういった演奏を一つの基準として「最近の演奏はだめだ」とか言うのも、私はあまり賛同しません。あくまでも私の美意識と相通じるかが私の判断基準であり、そのうえで善し悪しを決めます。ベームのような経験を最近の指揮者たちがどれだけ経験しているでしょう?酷ですよ、その比較は。しているわけがないし、それはむしろ幸せなことです。ならあなたは爆弾が落ちまくっている状況がいいとでも?なら尖閣辺りに行って守ってきてくださいって言いたいですね、そんなに戦争がお好きなら。自衛官が喜びますよ。あ、足引っ張るからお断りかも・・・・・

ということで、ベームの演奏は素晴らしいのですが、そのすばらしさがどこからいずるのか、そして私たちは何に共感しているのか。そのあたりを考えない論考は、まともなことを言っているようで私は嫌いです。私自身がベームの演奏に感動するのは同じようにせんそうではないけれど傷つき体験をしているからだと思います。私自身、いじめられたときはまるで爆弾が落ちているように感じましたし防空壕に逃げたいと思ったものでした。なので共感できるのだと思いますが、しかしそれがいい思い出とは考えていません。できればそんなことがなければいいと思っています。

ベームウィーン・フィルの演奏は、その点で私たちに「なぜ自分はこの演奏に感動し共感するのか」を考えさせる演奏だと思っています。おそらく、残りのアルバムも同じように共感することでしょう。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第4番変ロ長調作品60
交響曲第5番ハ短調作品67「運命」
カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。