東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、カール・ベーム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によるモーツァルトの協奏交響曲を収録したアルバムをご紹介します。
モーツァルトの協奏交響曲はすでにエッシェンバッハ指揮北ドイツ放送響で持っていますが(ソリストは五島みどり、今井信子)、これはかつていい演奏なので聴いてみたらと薦められていた演奏です。
しかし、借りてみてびっくり。この演奏、実はソリストがベルリン・フィルの各パートのトップ(首席奏者)がやってるんです。1曲目はモーツァルト真作のヴァイオリンとヴィオラ、管弦楽のための協奏交響曲変ホ長調K364。これも第1ヴァイオリンとヴィオラのトップがソリスト。第2曲は偽作とされているオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲 変ホ長調 K.297b。これもオーボエとクラリネット、ホルン、そしてファゴットの各トップがソリストを務めています。
そのせいか、息はピッタリ!古典派というか、モーツァルトの時代までなら、十分ありえる編成なんです。ベームの名前だけでこれ買ったり借りたりすると見過ごされがちかもしれません。むしろベルリン・フィルというオーケストラのプロらしさのほうが強く出ている演奏です。
そんなベルリン・フィルの演奏で第2曲目を聴きますと、偽作ってマヂ?って思ってしまうんですよね。随所にモーツァルトらしさは出ている作品なので、偽作と切り捨てるのはなあと思います(ただ、偽作に入れたのは国史学専攻だった私としては理解はしています)。偽作の疑いとするほうがよかったような気がします。むしろ下記ウィキにあるような姿勢のほうがいいような気がするのです。
「音楽学者のフリードリヒ・ブルーメは
「……しかし作品の由来はなお曖昧であるとはいえ、我々が所有している版の真憑性に対して早まった疑問を投げかけることは、間違っていないだろうか。なぜなら、作品のどの部分にも――編曲版のどの部分にもというわけではないにしても――モーツァルトの手が明瞭に認められるからである」
— 音楽之友社 1983、318頁
という見解を示している。」
それを受けて1974年にコンピュータを使って統計学的に解析してみたら、面白い結果が現在では出ているようで、同じウィキには
「モーツァルトの真筆であるという結論を出した。しかし、管弦楽法にモーツァルトらしからぬ点が多く、ソロ・パートのみが後世に伝わり第三者がオーケストラ・パートを加筆したと鑑定」
とあり、私としてはそちらを支持するものです。おそらく、ベームもベルリン・フィルも同じではないかなあと感じています。現在のAIなどを使ってみたらどんな結果が導き出せるのか、どなたかやっていただけると嬉しいです。もしかするとその結果で次の新全集では変わるかもしれません。
ベルリン・フィルの演奏は世界トップレベルだと言われますが、ではなぜトップレベルなのかが垣間見える演奏がこのアルバムだと言っていいと思います。つまり、何もソリストを呼ばなくても協奏曲が演奏できてしまうだけのタレントがそろっているから、トップレベルであるわけです。ベルリン・フィルもウィーン・フィルも室内楽を演奏する団体を団員が組織している場合もあります。むしろそれこそこの二つのオーケストラが世界トップレベルの証であるということを、じっくり味わえるアルバムになっているわけなんです。
K364は演奏はエッシェンバッハのほうが好きですけれども、ではこの演奏を否定するのかと言えばそんなことはないんです。これが私がよく言う「説得力」です。これもいいよね、と思わせる芸術性の高さ。さすがベームとベルリン・フィルであると言えるでしょう。
聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K.364(320d)
オーボエ、クラリネット、ファゴットとホルンのための協奏交響曲変ホ長調K.297b(Anh.C14.01)
カール・ベーム指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ソリストはオケ各1st)
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