コンサート雑感、今回は令和5(2023)年5月31日に聴きに行きました、サーナ・テクセレ第3回演奏会のレビューです。
まず、中央大学管弦楽団の皆さんにお詫びいたします。事情がありこのサーナ・テクセレさんを先にアップします。中央大学管弦楽団のレビューは来週取り上げますので、少々お待ちください!申し訳ありません・・・・・
サーナ・テクセレとは、女声合唱団で、バリトン歌手の加耒徹氏が指揮者を務める団体です。
女声合唱団サーナ・テクセレ - 女声合唱団サーナ・テクセレ~Sana Texere~
このコンサートに行ったきっかけは、団員さんのフェイスブックへの投稿でした。その団員さんとは以前よりピアニストの瀬川玄氏のサロンで顔見知りで、合唱もされていることから話が弾んだ人であり、最近は様々なこともあってご苦労されており、コンサートに出演されるのならと思い、当日券の有無を問い合わせましたら取り置きしてくださいということで、行ってきました。しかもホールは近所の小金井宮地楽器ホール(小金井市民会館)。体調が優れない私にとって、うってつけの場所でもありました。
私が合唱曲のコンサートに行くとなれば、混声ばかりであることはコアな読者の方であればご存じの方も多いと思うのですが、女声合唱って珍しくないかと思った方もいらっしゃると思います。実は団員さんとの関係があって、行くことにしたというわけです。とはいえ、私自身女声合唱が嫌いなわけではありません。ただ、アマチュア合唱団員だったころ、混声合唱が女声合唱と比べられ、貶められたことがあったため、トラウマになっている部分があったため、避けていただけなんです。決して女声合唱が嫌いなわけではありません。
というか、同性合唱というのは男声であろうが女声であろうが、美しいものなんです。やはり声質が似ていますから。とはいえ、実際は一人一人に個性があり、各々の個性をどうハーモニーに生かしていくかが、合唱の魅力なのです。ばっちりあったときの美しさと言ったら!
今回はドイツの声楽曲が取り上げられ、メインはブラームスの「愛の歌」。前半ではシューマンやシューベルト、リストやラインベルガーなど多彩。ただ、後半はブラームスのみで、前半とコントラストがついていたのは印象的です。
前半の作曲家たちは、文節ごとにフレーズがついているものが多く、一方ブラームスはどんどんつなげていくという感じ。歌詞を負って行かないと今どの歌を歌っているのかが追えなくなるくらいです(というか、実際追えなかった時がありました)。これはあえて分けたのでは?と思います。指揮者であり音楽監督である加耒氏はBCJにも参加する実力者であり音楽家です。深い考察なしにプログラムは組まないだろうと思います。合唱団員の実力を見ながら方々から楽譜を取り寄せたそうで、団員さんたちは幸せだなあと思います。
曲ごとの解説は多すぎますので今回は省きまして、演奏についてズバリ行きましょう!とにかく、美しい・・・・・さすが女声合唱団だと思います。とはいえ、アルトが若干弱いかな?と思いました。男声でもそうなんですが、低音パートは下支えなので、美しくというよりはむしろ野太い声として重要なんです。文字通り腹から声を出すということが必要なんです。まあ、女性でなかなか難しいとは思うんですが、ソプラノパートののびやかで力強い歌声に対し、アルトはどこか引っ込み思案になっているように聴こえるんです。
おそらくですが、今回取り上げられた作曲家のうち、ロマン派の作曲家はアルトパートが引っ込み思案で歌うことを想定していないと思います。むしろのびやかな人間の魂からいずる歌声を想定して作曲していると思います。その観点からすれば、アルトが弱かったのはちょっと残念だなあと思いました。ハーモニーは素晴らしく、さすが声楽家が指揮してないなあと思います。まあ、加耒氏も忙しい人なので常に練習場にきているわけではないでしょうが(私も合唱団にいたころ、練習指揮者がとか下手すればピアニストのみなんてことはしょっちゅうでした)、やはり声楽家が音楽監督であるということは有利だなと思います。
それと、ピアニストがフレージングを大切にする演奏をする人であるということも、素晴らしかったなと思います。だからこそソプラノはのびのびと歌えたはずなんです。ソリストも歌いやすそうでしたし、やはりピアニストが声楽のことを知っているか否かは重要だなあと思います。メインはおそらくいつも練習場に来てくださっているピアニストなのでしょう。その意味でも合唱団との息はぴったりでした。
さて、野太い声は女性でできるのか?という声もあるかと思います。実はそれほど難しくはありません。ただ、身体を使いますので・・・・・オーケストラとは違い、合唱団は身体の使い方が異なり、なるべく動かないことが重要です。それよりもどれだけしっかりと立つか、のほうが大事なんです。そのうえで、ノリノリになってしまったら、体を動かす、というほうがアルトは声が野太くかつ遠くに飛びます。私はテノールパートでしたが、アルトの音域も出るためアルトのお手伝いをしたことも第九などではありますが、その時も「足腰でしっかり体を支えてくださいね」とアドヴァイスしたことがあります。それだけで声って変るんです!
なかなか、主婦をされていて体を鍛えるというような時間は取れないと思いますが、たとえば寝ているときに足を数センチだけ浮かせることで腹筋を鍛えるというだけで、声は変わります。散歩を習慣づけてもいいかもしれません。私自身首から上で歌う習慣があったものですから、一時期就業場所があった銀座から青山一丁目まで毎日歩いたことがあります。そこまでやるのはお勧めしませんが(テノールは世界の少数民族だからそこまでやったまでなので)、買い物ついでに歩くとかやってみると、変わると思います。足腰に問題がある方なら、前述の寝るときに足を上げて腹筋で支えるというのをやってみると効果ありです。自然と声を出すときに腹に意識が行きます。
その観点では、若い人に入ってきてほしいですね。どうしても最近は年齢層が高くなる傾向にありますので・・・・・特に日本の合唱曲は女声合唱のほうが多い傾向にありますし。サーナ・テクセレさんで日本の合唱曲を歌う機会があるかはわかりませんが、いろんな地域の作品を歌っていますので、そのうち日本人の作品も取り上げるような気はしています。次回はヴィヴァルディのグローリアがメインなのでイタリア楽曲になるとのことですが。
いずれにしても、力強さもありますし、表現力が豊かな合唱団で、堪能しました!特にロマン派の作品はどうしても人間の関係性をテーマにしたものが多く、味わい深いものがたくさんあるため、なんだかしんみりしたことも事実です。けれどそれは単に作品が持つ生命力だけでなく、十分表現していた合唱団の実力だと思います。次回もまた聴きに行きたいです!
聴いて来たコンサート
サーナ・テクセレ第3回演奏会
すみれ(モーツァルト)
春への想い(シューベルト)
献呈(シューマン)
愛の夢(リスト)
笑いと涙(シューベルト)
万霊節(リヒャルト・シュトラウス)
春の朝(マーラー)
別離と忌避(マーラー)
海の精(シューマン)
海の底には(シューマン)
夜の歌(ラインベルガー)
讃歌(ラインベルガー)
私の恋は緑(ブラームス)
甲斐なきセレナーデ(ブラームス)
岸辺から(ブラームス)
愛の歌(ブラームス)
山口清子(ソプラノ)
杉山由紀(メゾソプラノ)
尾藤万希子(ピアノ)
河内菜穂(ピアノ、愛の歌)
加耒徹指揮
女声合唱団サーナ・テクセレ
令和5(2023)年5月31日、東京小金井、小金井宮地楽器ホール大ホール
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