かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:バッハ オリジナルの調性・調弦による、リュートのための作品集2

東京の図書館から、前回と今回の2回に渡り、小金井市立図書館のライブラリである、バッハのオリジナルの調性と調弦によるリュートのための作品集のアルバムを取り上げていますが、今回はその第2回目。第2集を取り上げます。

第2集に収録されているのは、BWV997、BWV999、そしてBWV1006aです。あれ?かんちゃんさん、バッハのリュート作品はBWV995~1000だと言っていませんでしたか?というア・ナ・タ。はい言いましたしその通りです。ですが実はもうひと作品あり、それがBWV1006aです。BWVからお分かりの様に、このBWV1006aはBWV1006、つまり無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータのパルティータ第3番の編曲です。なので前回、バッハのリュート作品は7つありますよと申し上げたのです。

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この編曲が成立したのは1736年か37年ごろとされ、ライプツィヒ時代です。絶賛教会カンタータを書いている時代ですね~。いや、もうかなり教会カンタータが作られて教会編年に沿った作品が充実してきた時期だとも言えるでしょう。そんな時期にバッハは無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータのパルティータ第3番をリュート用へ編曲していた、ということになります。なお、原曲BWV1006の成立はケーテン時代の1720年(最終稿)です。

ですから、作曲してから10数年経ってから編曲した、ということになります。実はBWV1006aはどうやらそもそも鍵盤用として編曲された節があり、しかし演奏するにはかなり難易度が高いことから、リュートだとされていますが、これはまだ決着がついていません。ただ長年リュート用とされてきたために、ギター愛好家ではかなりポピュラーであるそうです。とはいえ、これもまた演奏は難しいそうなのですが・・・・・

BWV997はパルティータとCDでは記述されているのですが、東京書籍の「バッハ事典」P.390では「組曲(パルティータ)」となっています。確かに組曲らしい構成になっていますが、そもそもプレリュードとフーガに続いて舞曲がある点で組曲と言いつつも変ですし、途中で変奏もあることから、むしろCD通りパルティータのほうが正しいのでは?という気がします。なおBWV997の成立は1739年ごろとされ、ライプツィヒ時代。7つの中では最も遅く成立した作品となっています。

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BWV999はケーテン時代の作品で成立が1720年ごろとされています。ただ「バッハ事典」では?マークがついていますから、これも推測の域を出ないということになります。いずれにしても、リュートはバッハが生きていた時代はポピュラー楽器だと言っていいもので、恐らくバッハも家族やサロンでたしなんでいたと推測されますから、気軽な作品でかなり早い段階で触れていたと想像できます。そのため、前回バッハはリュートも念頭に置いていたのでは?と書いたわけです。慣れていますからね。それでいてリュートも立派な通奏低音楽器ですし。

キルヒホーフはかなり楽譜から史料批判をしたうえで演奏していると思います。実はクラシック音楽の演奏とは、時として史料批判が必要になることもしばしばなんです。だからこそ国史学専攻の私もついついのめりこみ、沼にはまるんですねえ。結局クラシック音楽を極めようとするとどこかで歴史学と一緒になりますので。スコアリーディングはまさに歴史学における史料批判と作業が一緒なのです。その対象が文字なのか音符なのかの違いに過ぎません。

それにしても、リュートのほうがより舞曲は舞曲らしさが出ます。生命力が復活すると言えば言い過ぎかもですが、しかしリュートの音はどこか「作品の生命を置いてかないで~」と聴こえるんです。不思議です。それはハイレゾ相当で聴いているからなのかもしれませんが・・・・・

いずれにしても、キルヒホーフの演奏は実に実直かつ生命力に富んでおり、爽快ですらあります。バッハという作曲家の、教会カンタータなどの演奏によって纏われたイメージを払しょくする、名演だと言えましょう。

 


聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
パルティ―タ ハ短調BWV997
プレリュード ハ短調BWV999
組曲ホ長調BWV1006a
ルッツ・キルヒホーフ(BWV1006a:バロックリュート24弦、BWV997・999:テオルボ24弦)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。