かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:前橋汀子が弾くバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全集

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ全集を取り上げます。演奏は前橋汀子さん。

いろんな演奏がある中でこれを選んだのは、そういえば日本人の演奏って聴いてないよなあ、ということでした。しかも、前橋汀子さんと言えば、近年の日本人ヴァイオリニストの中でもオーソリティ。実は私はまともにほとんど聴いたことがないんです、前橋さんの演奏を。

そんなこともあって、前橋さんの演奏を選択した、というわけでした。有名曲は図書館でという方針は、神奈川県立図書館から府中市立図書館や小金井市立図書館へと移っても変わりはありません。むしろ、神奈川県立図書館に通っていた時から、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータは物色し、借りてきてもいるもの。府中でいいものがないかなあと思っていた矢先に見つけたのがこの前橋さんの演奏でした。

バロック期の作品をロマン派のように演奏することに私は抵抗がありますが、かといってバロック期の音楽に全く感情などがないのかと言えばそんなことはないわけで、前橋さんの演奏はソナタ第1番からパルティータ第3番に至るまで、徹頭徹尾感情を込めることに徹しています。そのうえで、パルティータは舞曲集という側面もしっかりとらえた演奏になっていて、意外と聴きどころ満載です。

特に、パルティータ第2番の終曲、シャコンヌは、過度な感情に溺れることなく、舞曲であるという点をしっかりとらえたうえで、そこに感情をこめていくという演奏スタイルなので、リズム感の中に秘められた感情を掬い取っているように感じます。決して楽譜をなぞっているというようではなく、筋肉質ななかにじんわりと感じるものがあるなあ、という印象です。

これをです、ソニーのDSEE HXを動作させて聴きますと、スピーカーであってもまるでホールで聴いているかのようです。ロケーションは国内でハーモニーホール松本。もう30年以上前の録音ですが、とてもみずみずしい!まるで松本の現地で、相対しているかのようですし、前橋さんの息吹すら感じられるように思えるほどです。ソニーのDSEE HXは特にこういう独奏曲において非常に威力を発揮し、コンサートへ行くことが困難なこの時期において、非常に優れた技術だと思います。もちろん、これがリアルを代替えすることにはなりませんが・・・・・

この曲の演奏の難しさは、以下に示すウィキの記述にある技巧性の高さだけではなく、ソナタとパルティータが同居しているという点にあると思います。ソナタは教会ソナタに準拠し、パルティータはフランス舞曲が元です。ある意味聖と俗という対照的なものが、芸術の下一つに統合されているわけで、その切り替えも難しい曲だと思います。しかしその切り替えを本当に見事にやってのけているのがこの演奏のすばらしさだと思います。まさか日本人の演奏でこのようなものが聴けるとは!

ja.wikipedia.org

こういう録音を図書館が持っているという事実と、その役割に、もう少し市民の目が向いて、認識を改にしていただけると嬉しいです。

 


聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番ト短調BWV1001
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティ―タ第1番ロ短調BWV1002
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番イ短調BWV1003
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティ―タ第2番ニ短調BWV1004
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番ハ長調BWV1005
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティ―タ第3番ホ長調BWV1006
前橋汀子(ヴァイオリン)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。