かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:フランク 交響詩集

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、フランクが作曲した交響詩を集めたアルバムをご紹介します。

フランクと言えば、19世紀フランスの作曲家ですが、実はもともとベルギー人であり、ルーツとしてはドイツになります。

ja.wikipedia.org

そのせいなのか、フランクは生涯5曲の交響詩を作曲しています。特にフランクは幼少期からリストの影響を受けており、またフランクを作曲家に仕様とした父もリストのような存在に息子をしたかったという背景もあります。

しかし、ベルギーはドイツというよりは文化的にはフランスの影響を受ける国。そのためフランクはベルギーよりはフランスで音楽教育を受けた人でした。そういったバックグラウンドが、ここに収録された4曲には色濃いと思います。

半音階的な和声、交響詩という様式という二つは、明らかにドイツ音楽に強く影響を受けております。ですが題材としてはフランス文学に立脚していたりします。ここに上げられた交響詩の中ではドイツ文学に立脚するのは「のろわれた狩人」のみ。それ以外はフランス文学または聖書の世界です。

こういったフランクのある意味ごちゃまぜになった音楽は、決してフランスの人たちに好意を以て受け入れられたわけではありません。愛国的な作品も書いたにも関わらず、フランクの人生の半ばあたりまでは不遇な時期が続きます。

交響詩はある意味、フランク「らしさ」が存分に出ているジャンルと言ってもいいでしょう。実際ここに上げられた作品は1870年代以降の作曲で、フランクが充実し自分らしさを前面に押し出した時期の作品です。

のろわれた狩人 1883年
アイオリスの人々 1876年
ジン 1884年
贖罪 1874年(ただし改訂)

このアルバムでは、2部構成になっており、前半2曲は純粋な管弦楽曲、後半2曲は他の楽器などとの協奏作品です。「ジン」はピアノと管弦楽のための交響詩ですし、「贖罪」はソプラノ独唱、合唱と管弦楽のための交響詩です。交響詩にピアノや声楽まで取り入れるのは、フランクの独創性を表していると言っていいでしょう。

「贖罪」はこのアルバムでは13分ほどの演奏時間しかありませんが、実は1時間くらいの大曲。コンサート等で交響詩と単独で扱われる場合はそのうちの第5曲だけが抜き出されるようです。

kisonoabaraya.qcweb.jp

非常に壮大な作品ですが、そもそも「贖罪」ですので・・・・・第1曲の「呪われた狩人」といい、「贖罪」といい、教会の影がちらつきます。後期ロマン派の時代は教会音楽は下火になったのでは?と思うかもしれませんが、キリスト教会の影響自体は存在感がある時代です。政治的な力をもたなくなったというほうが適切でしょう。実際ドイツではブルックナーが活動した時期にあたり、決してキリスト教の影響がなくなったわけではありません。我が国の四字熟語に仏教由来が多いこととそれほど違いはありません。それにそもそも、フランクは教会オルガニストですしね。

ja.wikipedia.org

その意味では、我が国で置き換えれば、南満州鉄道に勤めていた人が復員して戦後経済を支えたということに近いと思います。そのキーワードは「コスモポリタン」。フランクの活動拠点は確かにフランスであり、内容もフランスに関わるものが多かったですが、実際はその背景としてドイツ音楽の影響もあります。そういった国際的な内容は明らかにコスモポリタンと言っていいのでは?と思います。

フランクがコスモポリタンという側面を持っているという切り口で、このアルバムは編集されていると私は考えています。なぜなら、指揮がアンドレ・クリュイタンス、管弦楽はベルギー国立管弦楽団。「ジン」のピアニストであるチッコリーニはイタリア人であり活躍したのがフランス。そして「のろわれた狩人」の素材はドイツの詩人ゴットフリート・アウグスト・ビュルガーのバラード、そして「ジン」はユーゴー(「レ・ミゼラブル」を書いた作家)の詩集「東方詩集」で、実はアラビアン・ナイトコスモポリタンとするには材料がそろいすぎています。そもそもそれは、フランクがコスモポリタンだったからだと言っていいでしょう。

ja.wikipedia.org

指揮者、オケ、ピアニストともに演奏は生き生きしており、特にチッコリーニのピアノは収録された時代(1962年)もあってか、かなりハイスピード。ですが生命力は決して失われていません。私は演奏者がフランクがコスモポリタンであるという共通意識があってだと考えています。その意識が演奏ににじみ出ているとしか受け取れないんです。そして作品にもにじみ出ており、其れへの共感にあふれていると感じるのです。

フランクは人生において、サン=サーンス印象派の作曲家たちとはスタンスを異していきますが、しかしフランクの存在なしにはフランスの「国民音楽協会」は成立しなかったでしょうし、また対立した印象派音楽も成立しえなかったと私は思っています。そんな歴史へのオマージュに彩られているとするのは、考えすぎでしょうか・・・・・

 


聴いている音源
セザール・フランク作曲
交響詩「のろわれた狩人」
交響詩「アイオリスの人々」
交響詩「ジン(魔神)」
交響詩「贖罪」
アルド・チッコリーニ(ピアノ)
アンドレ・クリュイタンス指揮
ベルギー国立管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。