かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:ラ・フォル・ジュルネTOKYO2023 「人類はみな兄妹に・・・」。ベートーヴェンは熱く平和を歌う を聴いて

コンサート雑感、今回は令和5(2023)年5月6日に聴きに行きました、ラ・フォル・ジュルネTOKYO2023のレビューです。

このコンサートには標題がついており、テーマは「『人類はみな兄妹に・・・』。ベートーヴェンは熱く平和を歌う」です。今年のラ・フォル・ジュルネTOKYOの「大トリ」、交響曲第9番です。

二日前に聴きに行った、三重協奏曲とは違い、開場前ですでに列ができていました。さすが・・・・・第九という曲の人気ぶりを象徴する光景ですが、恐らくですが、この日の出演者にも理由があったのでは?という気がしています。通な人なら、まさにこれぞお祭り、と思います。

下記にソリストも上げておきますが、最も印象的なのは、神奈川フィルと東響コーラスの共演です。これ、なかなか見られないんです。いや、別に東響コーラスと神奈川フィルが仲が悪いというわけではなくて、そもそも東響コーラスさんは東京交響楽団の関連です。なので組むとすれば東京交響楽団なのです。神奈川フィルでの共演は珍しいのです。

ただ、こういう組み合わせ、実は私は昔からあってもいいと思ってきました。まだアマチュア合唱団員でかわさき市民第九に毎年参加していたころ、東海道線沿線のアマチュアが集まって第九を歌うというのも面白いのではないか?と思っていたからです。川崎だけで盛り上がるのではなく、相互で歌いに行く、たとえば年末の第九を川崎は横浜へ歌いに行き、横浜も川崎にうたいにいく、ということがあってもいいと思っていたというわけなのです。ホールとしては横浜みなとみらいホールや県民ホール、ミューザ川崎などを想定していました。

そんなことが、プロで実現するとは・・・さすがラ・フォル・ジュルネだと思います。そういえば、会場で気が付いたのですが、ラ・フォル・ジュルネTOKYOはJR東日本東日本旅客鉄道)も協賛していました・・・・・どうりで丸の内オアゾ(元JR東日本本社ビル、かつては国鉄本社でした)でも無料のコンサートをやっているわけだと思いました(それについては来週語りたいと思います)。

指揮するのは、リオ・クオクマン。マカオ出身の新進気鋭の指揮者です。二日前の松本宗利音といい、今回のクオクマンといい、ラ・フォル・ジュルネは新進気鋭の指揮者を起用する傾向にあるのかな?と思いました。なお、もちろんベテランもタクトを振っており、「運命」は現役引退を表明された井上道義氏が振っていました(私はそれは選択しなかったのですが・・・・・できれば行きたかったですね)。

演奏はまさに、情熱的というか、溌溂というか、若い演奏!途中、神奈川フィルがタクトに対し走ってしまう場面も・・・・・プロオケで珍しいと思いました。神奈川フィルと言えば私としては共演の経験もあるだけに、通常ではありえないので、そうとう気合い入っているなと思いました。大トリですしね・・・・・

聴き始めて気が付いたのですが、二日前の三重協奏曲で感じた、アインザッツの弱さはだいぶ緩和され、聴いていて問題ないレベルでした。むしろティンパニ金管は強すぎるくらい!大きいホールなので大編制のほうがあっているのだなあと思いました。指揮者もかなり気合いが入っていると見受けられ、いつも私がクローズアップする第4楽章Vor Gott!の部分はVor1拍に対しGott!が8拍!変態演奏でございます。しかし、全く問題ないどころか、むしろ完全に素晴らしい余韻となっていました。クオクマン、これは巨匠になりますよ。

特に素晴らしかったのは東響コーラス!横に広いホールなのにしっかりと音が飛んできており、魂に突き刺さります。さすがプロですが、オーケストラでも人数によっては音が拡散してしまうホールでしっかり前へ飛ばすのは、しっかりと体ができていないと難しいんです。これ、私もミューザ川崎で経験済みです・・・・・なので圧倒されました。さすがミューザを本拠とする東響コーラスさんだなあと思いました。そして、東響コーラスさんだからなのか、歌詞は口語体。あまり驚く方もいらっしゃらなかったので、口語体で歌うのはすっかり市民権を得たと感じました。

この第九に関してはサウンド・ハグというものが導入されていましたが、私は2階席のさらに後ろの方にアサインされましたので、全く見えませんでした。音を体感できるような装置だと言いますが、特に第4楽章で合唱が入ったところではどんな感じだったのだろうかというのは興味があります。私のように聴きながらリズムを取るような人、あまりいないんですよね・・・・・もっと体で感じてもいいと思うのですが。

最後まで情熱的な演奏で、拍手も残響を楽しむどころか残響が終わる直前で一斉に拍手!皆さんあまりにも素晴らしすぎて余韻に浸ることも忘れていたみたいです。いや、残念だとか言っているのでなく、それは当然だと思っています。それほど熱が入った素晴らしい演奏で、まさに「ベートーヴェンは熱く平和を歌う」というテーマに沿っている、と思ったのです。ホールAに集いしすべての人が、年齢、人種、性別を超えてまさに「兄妹」になった瞬間だったと思います。

聴き終わって、やはり音楽祭だと思いましたし、やっぱり一日券を買って楽しみ倒すほうが楽しいなあ、と思いました。来年どうなるかはわかりませんし、もうプロオケは今年以降聴きに行けないかもしれません。しかしそうであったとしても素晴らしい経験で、来年以降も一日券は買えずとも、どこか一つは聴きに行きたいと思わせる演奏でした。まさにラ・フォル・ジュルネの和訳「熱狂の日」にふさわしいコンサートだったと思います。

さて、ラ・フォル・ジュルネに関しては来週もエントリを立てたいと思います。二日間聴いての私の感想、そして問題点の指摘、解決策などを探っていきたいと思います。

 


聴きに行ったコンサート
ラ・フォル・ジュルネTOKYO2023「315『人類はみな兄妹に・・・』。ベートーヴェンは熱く平和を歌う」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
種谷典子(ソプラノ)
鳥屋尚子(アルト)
宮里直樹(テノール
河野鉄平(バリトン
東響コーラス
リオ・クオクマン指揮
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

令和5(2023)年5月6日、東京千代田、東京国際フォーラム ホールA(マリア・マグダレーナ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。