かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:ラ・フォル・ジュルネTOKYO2023 名手たちの彩りのコンチェルト を聴いて

コンサート雑感、今回は令和5(2023)年5月4日に聴きに行きました、ラ・フォル・ジュルネTOKYO203 名手たちの彩りのコンチェルトのレビューです。

ラ・フォル・ジュルネ・・・・・私にとってはあこがれの音楽祭です。都心の利便性のいい場所でやるわりには、なかなか盛沢山すぎて今まで足が遠のいていた音楽祭です。なので初音楽祭は2年前のフェスタサマーミューザです。

元々、ラ・フォル・ジュルネはフランスで行わていますが、それが東京でも行われるようになりました。その時から注目してた音楽祭なのですが、一日券ってとにかく高い・・・・・というか、ラ・フォル・ジュルネは盛りだくさんなので一日じゃあ楽しみ切れないんです!なので結構高い値段がしてしまうんですよね。せっかくなので期間中一日券を購入して楽しみ倒すくらいじゃないと満足できません!

そのため、金銭的理由で避けていた、ということになります。実は以前第九を合唱するというイベントだけ参加したことはありますが・・・・・それは無料ですから。それと3日間開けられる時間がない、ということもあります。私はそもそもサービス業なので、シフトで働いていましたので祝日も出勤せねばならぬ時もあります。そうそう自分の都合が常に通るわけじゃあないので、3日間時間ができるなんて年にそうそうある話ではありません。頑張って正月くらいでしょうか。それを5月のゴールデンウィークでというのは、そうそう実現できないです・・・・・明け公休夜勤なら何とかなるかもですが。

しかし今年は、病欠ということで思わぬ形で3日間が与えられることになりました。勿論それはいいことではありませんが、折角ですから行ってみるのもいいかもしれないと思ったのでした。しかも今年のテーマはベートーヴェン!確か3年前にも誕生イヤーか何かでベートーヴェンがテーマだったのですが、新型コロナウイルス感染拡大により流れてしまったのでした・・・・・今年はそのリベンジ、という側面もあろうかと思います。

さて、そのような経緯で行こうと決めたラ・フォル・ジュルネ。とはいえ、傷病手当金をもらっている身分では、一日券など買えません。なので本当に聴きたいコンサートだけを買う、ということで行ってきました。ベートーヴェンの作品は聴きたいものにあふれているんですが、そこから本当にこれは!というものを絞るのは本当に骨が折れる作業ですが、治療に比べればなんという事はありません。そこで、今回は二つに絞りました。そのうちの一つが今回取り上げるコンサートになります。

ラ・フォル・ジュルネは我が国では東京の有楽町にある東京国際フォーラムで行われています。今年は5月4日~6日での開催。なお私は4日と6日でそれぞれ一公演づつチケットを買いました(今回はその4日のものということです)。ホールは4つ用意され、オーケストラの演奏は主に最も大きいホールであるホールAで行われます。

www.t-i-forum.co.jp

コンサートをするにはとてつもなく大きな器ですが・・・・・それについては後述します。いずれにしてもこの大きなホールで今回のコンサートは行われました。なお期間中は「マリア・マグダレーナ」という名称が与えられています。

曲目は以下の通り。

オール・ベートーヴェン・プログラム
①ピアノと管弦楽のためのロンド 変ロ長調WoO6
②ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲ハ長調作品56

これ、いずれもコンチェルトでまとめられています。ロンドはコンチェルトではないでしょ?という方もいらっしゃるかと思いますが、ロンドなのでベートーヴェンとしては協奏曲の最終楽章を念頭に置いて作曲したとも考えられる作品です。

ja.wikipedia.org

上記ウィキではピアノ協奏曲第2番最終楽章とする予定だったとの記載がありますが要出展となっていますのでどこまで正しいかはわかりません。ただ聴いた限りでは協奏曲の第3楽章でもおかしくないなと感じました。

そして、三重協奏曲。これがあるからこそこのコンサートを選択したのです。この曲、演奏機会はあまり多くありません。録音は最近になって多くなってきています。コンサート会場でもかつてのダスビのようにCDが販売されており、中には1200円というバジェットプライスのものもありましたが、状況を考えてあきらめました・・・・・

いずれにしても、演奏機会の少ない三重協奏曲が生で聴ける機会は、私の人生の中でそうあることではないと直感したのです。そのためこのコンサートを選択した、ということになります。

まず、「ロンド」。上品かつしなやかな演奏は聴いていてとても気持ちがよく、さらに生き生きともしています。ピアニストは谷口智聡(ちさと)さん。ホールいっぱいに広がる音場も素晴らしい!というか、ホールA。めちゃくちゃ音響がいい・・・・・良すぎるくらいです。ただそれが私にとっては物足りなさもあったのですが、少なくともこの「ロンド」においてはあまり感じませんでした。若き日のベートーヴェンの作品にある溌溂さがみなぎっていました。

そして、メインの三重協奏曲。ソリストはピアノは代わってレミ・ジュニエ氏。ヴァイオリンは辻彩奈女史。チェロは伊東裕。三人とも溌溂とした、そして生命力と気品を持った演奏で素晴らしい!国内でこんな演奏が聴けて本当に幸せです・・・・・・が。

オーケストラは東京シティフィルなんですが、どこかアインザッツが弱いんです。いや、そんなことはないはずと思っています。オーケストラはしっかりとつけているはずなんです。指揮者は松本宗利音(しゅりひと)。指揮者シューリヒト夫人が名付け親になったという逸話がある人で、どこかのアマチュアオケの演奏でこの人の演奏を聴いた記憶がありますが、アインザッツが弱いという印象ないんです。もっと生き生きとした演奏をした記憶があるんですよね。

それはプロオケの演奏を聴きすぎなんじゃないの?という突っ込みもあるかもしれませんが、確かに私が好んで聴いているのはカラヤン指揮ベルリン・フィルで、ソリストオイストラフロストロポーヴィチリヒテルですからアインザッツもそれなりに強くもあります。ですが私はハイレゾでピリオド演奏のものも持っており、それも同様にしっかりとアインザッツがついているんです。それを東京シティ・フィルが極端に変えるとは思えませんし、変態解釈を松本氏がするようにも思えないんです。

そこで気が付いたのが、ホールの大きさです。ホールAは兎に角大きいホールなんです。上記東京国際フォーラムのホールAのサイトを再掲しておきますが、縦もそうなんですがとにかく横に長いホールなんです。オリンパスホール八王子や昭和音大のホールに比べるとその横の長さは別格といってもいいです。

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このホールはクラシックコンサートでも音響が素晴らしいホールですが、収容人数からするとむしろ国際会議をするのに適したホールと言えます。あるいはオペラの演奏とか。そうなると古典派の協奏曲だとオーケストラの響きはいいけれど音の強さ、つまりアインザッツは減少されるなあと思います。

ホールの響きは、いろんな要素がありますがその形にも左右されます。なので通常クラシック音楽を演奏するホールの場合、縦に大きいホールはあれど、横は絞った形が多いのです。例えばサントリーホールならば舞台後ろや真横に席を置いていたりしますし、斜めに座席を置いてもいます。杉並公会堂なら後ろがない代わりに真横と真正面だけです。そのうえで上方へと昇った構造です。ですがこの東京国際フォーラムのホールAの場合、縦横にながーいんです。これだと確かに音はまろやかで残響は長くとも、音は逃げて行ってしまいます。ということはアインザッツを相当強く演奏しないと、聴衆には弱く感じてしまう、ということになります。

恐らく、オーケストラはそこに気が付かなかったのだろうと思います。それは指揮者もだと思います。ソリストたちは海外で慣れているのでこのホールだとアインザッツが弱くなるかも?と考えた演奏をしていた、というのが真相ではと思っています。まあ、一か所で複数のホールを持っている場所なんて日本にはそうあるわけではないので、国際フォーラムしか場所がないと言えますが、この辺りはもう少し工夫が必要かもしれません。例えば近場のホールで融通しあうとか。実際ラ・フォル・ジュルネの場合、近隣のビルでもコンサートが開かれていたりもします(そこは無料ですが)。フェスタ・サマーミューザの場合、ミューザ川崎だけでなく昭和音大でもコンサートがひらかれていたりもします。そんな工夫がラ・フォル・ジュルネでも必要かもしれないなあと思いました。

例えばです、場所を東京国際フォーラムから三鷹市芸術文化センターへ移し、近隣のホールでも演奏会を行う、という方法でもいいような気がします。近隣のホールは、杉並公会堂に小金井宮地楽器ホール、府中の森芸術劇場パルテノン多摩と結構あります。そういった方法もあるのでは?とは思います。ただ、この音楽祭、三菱地所が絡んでいるのでそう簡単ではないでしょうが・・・・・あくまでも一つの提案です。

さて、6日の演奏はどうなるのか。同じホールAで今度は「第九」。音楽祭の「おおとり」でもあります。第九は大編制ですし、今回のようなデメリットが解消されるのか、期待を以て迎えたいと思います。

 


聴いて来たコンサート
ラ・フォル・ジュルネTOKYO2023 114 名手たちによる彩りのコンチェルト
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノと管弦楽のためのロンド変ロ長調WoO6
ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲ハ長調作品56
谷口智聡(ピアノ、「ロンド」)
辻彩奈(ヴァイオリン)
伊東裕(チェロ)
レミ・ジュニエ(ピアノ、三重協奏曲)
松本宗利音指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

令和5(2023)年5月4日、東京千代田、東京国際フォーラム ホールA「マリア・マグダレーナ」

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。