コンサート雑感、今回は令和2(2020)年3月14日に「聴きました」、東京交響楽団が行っているマチネコンサートを取り上げます。
なぜ「聴きました」になっているのかと言えば、じつはこのマチネ、当然ですが東響とミューザ川崎の共催公演なんです。つまりは、中止になってしまったもの、なわけです、新型コロナウイルス感染拡大防止のために。
で、本来はこの日は私は別の用事が入っており、とてもコンサートに行く時間などありません。しかも、じつは毎月第2土曜日はその用事にかこつけて、夜まで空けてもらい、mixiにて鑑賞会を主宰しています。その準備に追われているのが常です。
ところが、その毎月の用事も、同様にウイルス感染拡大防止のために借りている会場が閉まっているため開催不可となり、そのため夜の鑑賞会の準備にいそしんでいたところ、フェイスブックの「クラシックを聴こう!」コミュにて、主宰者の方がこれいい!と投稿されたのがきっかけです。
実は、私はその配信をリアルでは見ていません。この東響さんの配信、じつはタイムシフトという機能がついていまして、遅れても追っかけで見ることができるんです。私はそれで聴いたのです。ですから、「聴きに行った」のではなく「聴いた」というわけです。
そもそも、よほどのことがない限り、プロオケなど聴きに行きません。ですから東響さんも少なくともこの先数か月はご縁がない予定でした。ですが、無料配信となれば話は変わってきます。そんな太っ腹なら、一度聴いてみようじゃないの!と思い立ち、タイムシフトで聴き始めたら、これがまた素晴らしい演奏なのです!
プログラムはモーツァルト・マチネと題している通りオール・モーツァルト・プログラム。ですが驚きだったのは、1プロがフルート四重奏第3番だったことなんです。そのうえで、2プロがハフナー、メインがピアノ協奏曲第13番というラインナップなのも驚きでした。
普通だと、プロオケだろうがアマオケだろうが、交響曲がメインに来ます。けれども東響さんは堂々とピアコンをメインに持ってきたんです。これ、じつはモーツァルトの時代ならあまり前の構成なんです。まだまだ交響曲の地位は低く、ソリストの演奏をじっくり聴く協奏曲こそがメインだったのです。実際、モーツァルトのピアノ協奏曲はほぼすべてモーツァルトのピアノ演奏を楽しむ「予約演奏会」のために書かれたものです。
そのうえで、プロオケのコンサートで室内楽作品が演奏されるのも珍しいと思いました。これ、mixiの同時鑑賞会でやるプログラムですから・・・・・それを、リアルの、しかもプロオケがやってしまうなんて!
ですが、その演奏者たちの、なんと嬉しそうな表情!そしてカンタービレする演奏。これはホールで聴いたらもっと素晴らしかったろうなアって思います。アーカイヴを見てみると、定期演奏会の配信がハイレゾでe-onkyoから出ているようなので、現在買うか迷っているところです。
そんな素晴らしい演奏が、ハフナーでもその生命力を歌い上げ、さらに最後のピアコン第13番ではヒートアップ!金子氏のピアノもさえわたります!モーツァルトの時代のフォルテピアノを意識してか、全くピアノの音量を上げようとしない録音も高評価です。それでいてモダンピアノですからしっかりと存在感はあり、第13番の諧謔性や歌謡性も存分に歌い上げるその演奏、さすが東響さんだと思います。これぞプロオケ!そしてプロ!
こんな演奏を聴きますと、東響くらいは聴きに行ってもいいかもね~って思いますけれど、実家暮らしならともかく今は都下で暮らしていますから、かなーり遠いんです、川崎。定期会員になるわけにもいかず、さて、どうしたものかなって思います。その意味では、こういう非常時だけでなく、平時において、ネット配信の先鞭を東響さんがつけてほしいなって思います。PCとUSBでつながっているソニーのSRS-HG10なら、ホールの残響を素晴らしい解像度で再現してくれるはずなので、ベルリン・フィルのような「デジタルチケット」を売るなどのことをしてもいいと思います。本当に実力のあるオケであれば、ネットででも聴きたい!と思うクラシックファンは、私が自分の鑑賞会を主宰したり、同時鑑賞会に参加したりしている経験の限りでは、潜在的に数多くいるはずなのですから。是非とも大英断を期待したいところです!
聴いたコンサート
ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 モーツァルト・マチネ 第40回
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
フルート四重奏第3番ハ長調 K.285b
交響曲第35番ニ長調K.385「ハフナー」
ピアノ協奏曲第13番ハ長調K.415(387b)
金子三勇士(ピアノ)
原田慶太楼指揮
東京交響楽団
令和2(2020)年3月14日、神奈川川崎幸、ミューザ川崎シンフォニーホール
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