かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:フェスタサマーミューザKAWASAKI2021 東京シティフィルハーモニック管弦楽団を聴いて

コンサート雑感、今回は令和3(2021)年7月31日に聴きに行きました、フェスタサマーミューザKAWASAKI2021における東京シティフィルハーモニック管弦楽団の演奏についてのレビューです。

フェスタサマーミューザKAWASAKIは、毎年7月末から8月初めにかけて、ミューザ川崎シンフォニーホールを中心として川崎市内で開催される音楽祭です。昨年はベートーヴェン・イヤーでベートーヴェン交響曲を中心に行われましたが、第九だけは演奏できないという情況は残念だったと思います(BCJを使うという選択肢もあったはずです)。

しかし、コンサートではいち早く配信を始めたのも東響さんのフランチャイズであるミューザならではでした。今年も配信がある中で、私はむしろリアルで聴きに行くことを選択しました。開始時刻はゆっくりでいいのですが、そのあと仕事が入った場合、配信だとむしろ出勤前の準備でいろいろ忙しくなる可能性があったためです。そこまでゆっくりしすぎてしまうので・・・・・

ということで、わざわざ出かけたのでした。勿論感染症対策はしっかりやって、です。それを私たちもやって初めてこの状況でコンサートは成立するわけですから。

さて、今回聴きに行ったのは、音楽祭の前半最後となる、東京シティフィルハーモニック管弦楽団の演奏。実は昨年、そこには群馬交響楽団が入っており、第九が演奏される予定でした。フェスタサマーミューザにおいて、この前半折り返しとなる7月31日には重要なプログラムが組まれることが多いのですが、昨年は差し替えとなってしまったこの節目、今年はスメタナの連作交響詩「わが祖国」がプログラムされました。だからこそ聴きに行ったのです。

べドジヒ・スメタナが作曲した連作交響詩「わが祖国」は、最近演奏機会が増えてきた作品だと思います。第2曲ヴルタヴァ(モルダウ)は、中学校で合唱曲として、そしてその関連で音楽鑑賞の時間で取り上げられることが多い曲ですが、それしかしらないという人も多く見受けられます。実際府中市交響楽団さんの定期演奏会を聴きに行った時も、客席からそんな声が聞こえていました。ですが、好きな人は好きなんですね。特に「プラハの春音楽祭」を結構昔から見ている人などは・・・・・そしてその一人が、今回指揮をした高関健氏でもありました。おお!同志よ!仲間よ!と思いました。

チェコという国の近代は、他国の支配に甘んじる時代でした。古くはハプスブルグ家により、そして20世紀後半はソ連に。いずれも独立こそしていても、自分たちの言語が使えないなど、多少フラストレーションがたまる部分が多かった時代です。そんなことが、現代日本と重なる部分があることが、多くのクラシックファンに認識されてきたのはいいことだと思います。ただ、決して極右ではなかったですけどスメタナは・・・・・

このオリンピック期間中に、この曲を演奏するということは、多分にメッセージ性の強いプログラムだと思います。フェスタサマーミューザはあくまでも音楽祭なので、クラシック音楽を楽しむことが主眼ですが、それでも、「自分たちは自立しているのに、コンサートができなかった」という想いは、プロアマ問わず、どのオーケストラも持っていることでしょう。しかしオリンピック選手だけは、ほとんどの大会が中止にならずにここまで来たわけです。それに対する不公平感はもっているだろうと思います。

そんな思いがぶつけられた演奏だったように思います。どっしりとしつつもいいテンポで流れ、全体的に歌わせるタクト。第2曲ヴルタヴァは私が好きなテンポよりは遅かったのですが、それでもヴルタヴァ川を描写しつつチェコの歴史をおりまぜたという部分をしっかりと押さえており、むしろ説得力ある演奏にうなりました。さすがこれがプロだなあ、と。それは高関氏がもつ情熱もあるでしょうし、曲に込めた団員たちの想いというのもあったことでしょう。

特にティンパニが「ぶったたいて」くれたのも好印象。全体が持つ「意思」というものを明確にしている部分があり、さすがです。日本のプロオケもここまで来たか!と思いました。しかも東京シティフィルなんて最後発に近いオケなのに、です。いつ「プラハの春音楽祭」のオープニングコンサートに呼ばれてもおかしくないだけの実力を持っていると思います。そう、それは日本のオケが現地で「わが祖国」を全曲演奏するということ、です。

オリンピックの影に隠れてしまっていて、日本のオケの世界レベルでの実力があまり語られることが無くなってしまっているなと私は危惧しています。そんな中での、フェスタサマーミューザにおける東京シティフィルによる「わが祖国」。決して声高に叫ぶわけではありませんが、情熱的な演奏は一生懸命なのはアスリートだけじゃないし、感動を与えるのもアスリートだけではない!という意思表示であるように思います。

特に後半3曲の熱の入りようは素晴らしく、ターボルとブラニークは圧巻!ただ、ひとつ難点を言えば、プロオケの割にはppがしっかりできていないな、という点でした。これはフランチャイズではないので仕方ない部分もあるかもしれません。ミューザ川崎シンフォニーホールは、舞台であまり音が響いてきません。それはしっかりと音が客席最上階まで届いていることを示しているんですが、私もかわさき合唱祭りで歌った時に困惑したのを今でも覚えています。そのため、安全を考えて音を大き目で行ったのでしょう。その点は次に生かしてほしいところですが、つい思いが先走って・・・・・というのもあったことでしょう。その点も含めて、全体的には情熱的な素晴らしい演奏で、最後残響も味わったうえで万雷の拍手になったのは当然でした。

できれば、来年も配信でもいいので、聴ければなあと思います。私の初フェスタサマーミューザは、本当に素晴らしい経験ができて幸せです。

 


聴きに行ったコンサート
フェスタサマーミューザKAWASAKI2021 東京シティフィルハーモニック管弦楽団
べドジヒ・スメタナ作曲
連作交響詩「わが祖国」全曲
高関健指揮
東京シティフィルハーモニック管弦楽団

令和3(2021)年7月31日、神奈川川崎幸、ミューザ川崎シンフォニーホール

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