かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ノイマンとチェコ・フィルによるスメタナ「わが祖国」

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、実は今回が最終回。ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるスメタナの「わが祖国」を取り上げます。

スメタナの「わが祖国」は、私が好きな曲の一つでもあります。中学校の時に合唱曲で「モルダウ」を歌い、そしてその原曲である交響詩を聴き、そして高校生になって自分で連作交響詩として全体を聴いたときから、ずっと好きな曲です。その時の演奏はヴァーツラフ・スメターチェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

同じオケで、違う指揮者。しかも、タクトを振るはヴァーツラフ・ノイマンという巨匠。どんな演奏になるのか、ワクワクして借りたのがこれです。最後こそ、当初からの「有名曲は図書館で」を貫きたかったのもありました。

全体的にはどっしりとした印象がありますが、第2曲「モルダウ」は過度にロマンティックに浸らずに、スメターチェクのようにきびきびとチェコの歴史を踏まえた解釈とテンポになっているのも魅力的。その意味では、決してハイレゾではないにも関わらず、昨年購入したビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルの演奏よりはいいと感じます。しかもです、ハイレゾではなくても、ソニーのMusic Center for PCでDSEE HXを動作させれば、ハイレゾ相当に。ホールの残響の「艶」すら、しっかりと感じることができます。

このノイマンといい、スメターチェクといい、そしてビェロフラーヴェクといい、オケはチェコ・フィル。どれもチェコ・フィルの美しい弦が素晴らしいのですが、特に二人の「ヴァーツラフ」が振る演奏は、その演奏に生命が宿るという点で抜きんでています。これならとりあえずはハイレゾはなくてもよかったくらいです。

それでも、モルダウに限って言えば、やはり一番はスメターチェク指揮のものですが、その次に上げるとすれば確実にこのノイマン指揮をあげるでしょう。特に最後の2曲、ターボルとブラニークの情熱的な演奏は下手すればスメターチェク以上!その意味ではやはりこのアルバムは「わが祖国」という作品としてとらえる必要があると思います。ノイマンもその姿勢で振っているわけですから。

実は、今年はフェスタ・サマーミューザでも「わが祖国」が取り上げられるという快挙。しかも、7月31日という「節目」で、です。これは音楽祭のメッセージとして大きいのではないでしょうか。詳しくはレビューを載せる予定ですのでそちらに譲るとして、「わが祖国」を音楽祭の「節目」でプログラムとして使うというのは、「わが祖国」という作品の性質を考えたとき、今年のミューザの開催期間がほぼオリンピックと同じということを踏まえると、スポーツだけが優遇されるべきではないという隠されたメッセージを感じます。

ja.wikipedia.org

今回の東京オリンピックの開会式を見ても、この「わが祖国」に果たして匹敵するものだったかどうか、はなはだ疑問が残るものであったと私は思います。勿論多様性を入れたことは大切なことで、それはオリンピアの精神を反映するものとして大切なものなのですが、はたして現代日本とその社会というものを本当に反映した「交響詩」だったかは、私には疑問が残るものでした。

いっそ、ひとつのストーリーを一つの楽曲として演奏してしまう・・・・・そんな仕掛があってもよかったのでは?と思います。オリンピック讃歌を演奏したのは東京都交響楽団。実はそれは一つの明確なメッセージで、1964年と2020年、そして実際に行われた今年2021年をつなぐという意味が込められています。なぜならば、東京都交響楽団は1964年の東京オリンピックを記念して設立されたオーケストラであるからです。

www.tmso.or.jp

もし、チェコでオリンピックが開催されたとして、はたしてどんな開会式になるんだろうと気がします。いずれにしても、この「わが祖国」は念頭に置かれるであろうと思います。こういう曲が日本にはないんですね。それを嘆く右派の人々を私は知りません。左派にすべての責任を押し付け、右派は自分たちの果たすべき役割から逃げているようにしか見えません。その批判精神が、私には「わが祖国」を聴けば聴くほど、プログラムに入ったということを考えると、存在するであろうということを思わずにはいられません。

そんな演奏を、神奈川県立図書館で最後に借りた資料から感じられたのは、素晴らしい収穫であったと思います。これからも優れた資料を収集し、県民に開かれた図書館として存在し続けてほしいと思います。

 


聴いている音源
べドジヒ・スメタナ作曲
連作交響詩「わが祖国」全曲
ヴァーツラフ・ノイマン指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。