かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:アパッショナート管弦楽団第20回記念演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は平成31年2月24日に聴きに行きました、アパッショナート管弦楽団の第20回記念演奏会を取り上げます。

このオケは初めて聴きに行きました。あまり最近は余程のことがないと初めてというオケはないんですが、これはそのプログラムに惹かれて、でした。じつはそれが、昨年府中市交響楽団さんが演奏した、スメタナの連作交響詩「わが祖国」全曲だったから、です。

昨年2018年は、チェコ独立100年でした。そのため、チェコの作曲家がいろんなところで取り上げられた年でも有りました。そんななか、2つのオケがスメタナの「わが祖国」をとりあげた、ということになります。

正確には、このアパッショナート管弦楽団さんは101年で、ということになりますが、チェコの民族運動とも関連するこの作品を日本のオケが演奏するというのはあまりないことも有り、アマチュアオケがとりあげることもまた、珍しい作品だと言えるでしょう。

わが祖国 (スメタナ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8F%E3%81%8C%E7%A5%96%E5%9B%BD_(%E3%82%B9%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%8A)

なぜなら、この作品は「プラハの春音楽祭」のオープニングを飾る作品で、以前は毎年チェコ・フィルが、そして現在では招待されたオケと指揮者によって、音楽祭の開催を告げる作品となっているからです。演奏時間はほぼベートーヴェンの第九とおなじ74分程度かかる作品で、当日もじつは途中休憩も挟んでほぼ2時間かかっています。

アパッショナート管弦楽団さんは、ほぼ10年前に結成されたアマチュア・オケで、団名にある通り「情熱的」に演奏することを目的としている団体です。

http://orchestra.musicinfo.co.jp/~apakan/

今回の演奏は、その名に恥じない、素晴らしい演奏でした!まず顕著にその情熱を感じたのが、テンポ感でした。とてもよくノレるんですね。第1曲目のヴィシェラフトからもう気合入りまくり。

そして、唸らされたのが、第2曲「ヴルタヴァ(モルダウ)」。たいてい、この曲は風景を表したものと解釈してゆったりと振ってしまい、リズム感が薄くなるものが多いのですが、このオケ、ゆったり目なのに、リズム感満載なんです!いやあ、これにはもう脱帽でした。

多分、私とおなじ解釈をしているなと思いました。それは、このヴルタヴァという曲は、チェコを代表する大河ヴルタヴァ川を借景に、チェコの歴史を俯瞰する作品だと私は考えているからです。

モルダウといいますと、通常は情景音楽とされます。ですので、先日も述べましたがフルトヴェングラーもゆったりとしたテンポで振っていますし、それがスタンダードです。

しかしながら、このスメターチェクの指揮はそれよりはるかにと言っては大げさですが、かなり速いです。ところが、それがまったく違和感ありません。その理由は、恐らく中間部にある踊りのリズムにあるのではないかと私は思います。ゆったりと入ってしまうと、そのリズムが崩れてしまいます。

本来、モルダウは単なる情景音楽ではありません。「わが祖国」全体に貫かれているのは、祖国チェコへの賞賛と愛です。ですから、情景音楽とだけ捉えるのは私は間違いだと思っています。

ただ、そうなってしまうのには理由があります。「わが祖国」は6曲の交響詩から構成されています。それはチェコの歴史を題材にしたものと、チェコの自然や風景を題材にしたものと交互に構成されています。そのうち、「モルダウ」はチェコの風景や自然を題材にしています。

しかしながら、モルダウだけは異色を放っているのです。モルダウは構成的には自然や風景になぞらえていますが、実はモルダウ川を描きながらそれをチェコの歴史と将来を歌い上げるものになっているからです。

それを理解するためには、当時チェコという国家が置かれた状況を理解する必要があると思います。当時、チェコオーストリア=ハンガリー帝国の領土でした。しかしその前はスウェーデン支配下と、約900年間に渡って他国の領土となっていました。詳しくは、ウィキペディアボヘミア」の項を参照していただきたく存じます。

ボヘミアウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%98%E3%83%9F%E3%82%A2

そういった状況で、19世紀に民族独立運動が勃興し、それは何度も弾圧を受けてきました。実際、スメタナも一時期スウェーデンへ逃れていた時期があります。そんな時代背景がこの曲には反映されているのです。

それを理解しますと、逆にモルダウがなぜテンポがいいのか、よくわかります。川を表現しているのではなく、川があるチェコという存在を表現しているからである、ということなのです。」

マイ・コレクション:スメタナ 連作交響詩「わが祖国」
https://yaplog.jp/yk6974/archive/214

まるで河の流れが心臓の心拍のように、しっかりとリズムを刻んでいるんです。これには説得力が有りました。どこを切っても説得力がある、自分たちの「詩」を奏でているんです。それでいてしっかりと作品に対するリスペクトがある・・・・・演奏としては、多少アマチュアらしい音も散見されるのに、全く気になりません。

こういう演奏を待っていました。もちろん、これはじつは私が必ずしも好きなテンポではないんです。けれども、とても満足する、感動する演奏でした。このような演奏に出会うことこそ、ライヴを聴きに行く醍醐味なのです。

続く「シャールカ」も、金管の鳴らし方が短めで、お、面白いなって思ったのですが、これは多分理由があるはずだと思い、帰ってからウィキを参照してみるとなるほど、酒宴の場だからこそ、だったんだなと納得できましたし、本当に素晴らしい解釈と表現力だと思います。この作品をこのように自分たちの視点を大切にして演奏する団体があったかと、ここまでてもう涙モノです。

休憩後の後半三曲も、どんどんヒートアップ。そしてアインザッツはどんどん強くなる!え、ここはプラハの「芸術家の家」ですか?って思ったくらいです。ロケーションはかつて中大混成がメサイアでも使った、文京シビック。けれども、当日はまるで「芸術家の家」のような雰囲気が有りました。

最後の「ブラニーク」はまさに熱い!強烈なリズムとアインザッツが場を支配し、私達を包み込み、共感していきます。チェコが危機にひんしたときに救いに来るフス教徒とその勝利を描く曲ですが、スメタナの指示通りアタッカ。じつはヴィシェラフトとヴルタヴァも切れ目無しで、スメタナの想いと団員たちの想いとが交錯し、アウフヘーベンした素晴らしい解釈で、だからこそ演奏も実に自分たちのスタイルを貫いているなと思いました。最後の最後まで唸りっぱなしの感動しっぱなし。

こんなオケがアマチュアにあるなんて、本当に素晴らしい!しかも、ここも常設なんですよ。こんなオケが演奏するのを本当に待っていました。はじめから自分たちの歌を歌い、しっかりと表現できるなんて!いやあ、次も聴きに行きたいと思わせる団体です。こういう団体が多くて、私自身も合唱を再開させた段階で、いくつ行けるだろうかともう嬉しい悲鳴を上げていますが^^;

指揮者とコンミスが素晴らしいのかなって思います。ただそのふたりだけではなく、全員が共感してのことなんだろうと思います。その一人ひとりの「情熱」が一つにまとまったら、どれだけ素晴らしい演奏になるのか。今度このオケを聴きに行くときにも本当に楽しみです。




聴いてきたコンサート
アパッショナート管弦楽団第20回記念演奏会
ベドルジフ・スメタナ作曲
連作交響詩「わが祖国」全曲
ヴィシェラフト
ヴルタヴァ
シャールカ
ボヘミアの森と草原より
ターボル
ラニーク
河上 隆介指揮
アパッショナート管弦楽団

平成31(2019)年2月24日、東京文京、文京シビックホール大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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