かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:バッハ オルガン作品全集13

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、バッハのオルガン作品全集を取り上げていますが、今回はその第13集を取り上げます。収録されているのは、バッハのクラシック練習曲集第3集です。

え、クラヴィーア練習曲集に第3集ってあったんですかって言う人もいるかと思うんですが、確か以前、取り上げたことあったと思うんですが・・・・・

無理すれば入るかなあって思いますが、この全集では第13集と第14集の2つに分かれており、まずは第13集をご紹介したいと思います。

バッハのクラヴィーア練習曲集は全部で4つありますが、そのうち第1部と第2部、そして第4部がチェンバロのための作品です。で、唯一オルガンなのがこの第3部です。

作曲は結構長い期間行われたようですが一つにまとまったのは1739年だと言われています。ちょうど宗教改革200年。けれどもそれは作曲の動機ではなく一まとまりに出版するということだったようです。

1739年といえば、カンタータの創作も一息ついた時点で、むしろ息子たちとのアンサンブルのほうに傾注していった時期です。バッハ自信もオルガニストでありチェンバロ奏者でもあるわけで、そういった演奏活動の方に移行し始めたときに編集されたのが第3部でした。

もっと言えば、この全集ですら完全ではないといえるかと思います。なぜなら、バッハはこの第3部をあくまでもクラヴィーア練習曲集としているから、です。日本では近代の分化したことが金科玉条になってしまっていて、オルガンはオルガン、チェンバロチェンバロと分けてしまいがちなんですが、確かに違う楽器なんですがバッハの中ではおなじ鍵盤楽器なんです。

そもそも、クラヴィーアというのは鍵盤楽器全体のことを指します。だからこそ、まだ楽器が発展途中だったモーツァルトまではピアノ協奏曲とは呼ばれずクラヴィーア協奏曲と呼ばれたわけです。それはモーツァルトの頭の中では、演奏するのをピアノに限定していないことを意味します。当時のフォルテピアノでもチェンバロでもいいとすら思っていたのではないでしょうか。だからこそ私は古楽演奏のとき限定でクラヴィーア協奏曲と称したわけです。ちゃんと理由があります。

その作品を、オルガニストであるイゾワールが向き合いますと、実に繊細になるんですよね!そもそもこの第3部はオルガン用なので当然といえば当然かと言えるのですが、そもそもミサ曲として並んでいるのに、自在な表現により見事なまでに繊細な演奏になっています。

さらに言えるのが、フレージング。イゾワールのこの演奏が優れているのはしっかりとしたフレージングなんです。つい鍵盤楽器奏者って叩けば音が出るのでフレージング無視の場合も散見されるんですが、それだと決してカンタービレしないんですよね。けれどもイゾワールはオルガン奏者なので、しっかりとしたフレージングが特徴。これは鈴木雅明氏よりも私は優れていると思います。鈴木氏の演奏もすばらしいんですが、時としてチェンバロ弾きの癖でフレージングを無視するケースもあるんですよね。もちろんそれはそれで理由があって、素晴らしい演奏になるんですが・・・・・

イゾワールは徹底してカンタービレします。だからこそ、繊細さが作品の魂を呼び起こし、生命力あふれるものになっているんです。私達ってつい、オルガンっていう楽器の特性をわすれてしまいがちです。確かに鍵盤楽器なんですが、一方で管楽器でもあるんです。だからこそバッハはおなじ鍵盤楽器とした上で、オルガンだけ別立てしたということがわかります。

オルガンは管楽器でありながら、人間の息を必要としません。鍵盤を叩けば空気が送り込まれて音が出るので。なので鍵盤楽器です。しかし空気を送り込んで音を出すという意味では立派な管楽器です。そこでイゾワールはフレージングを大切にするという、管楽器の特性にフォーカスして解釈しているってわけです。そしてそれは、元々合唱屋だった私の魂としっかり共鳴します。

叩けば音が出るからこそ、どう叩くかが重要なのだ・・・・・イゾワールの真摯な宣言のようにすら、この演奏は聴こえます。




聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
クラヴィーア練習曲集第3部(オルガンのためのミサ)
プレリュード 変ホ長調BWV552
コラール「キリエ、とこしえの父なる神よ」BWV669
コラール「キリストよ、世の人すべての慰め」BWV670
コラール「キリエ、聖霊なる神よ」BWV671
コラール「キリエ、とこしえの父なる神よ」BWV672
コラール「キリストよ、世の人すべての慰め」BWV673
コラール「キリエ、聖霊なる神よ」BWV674
コラール「いと高きところでは神にのみ栄光あれ」BWV675
コラール「いと高きところでは神にのみ栄光あれ」BWV676
フゲッタ「いと高きところでは神にのみ栄光あれ」BWV677
コラール「これぞ聖なる十戒」BWV678
フゲッタ「これぞ聖なる十戒」BWV679
コラール「われら皆一なる神を信ず」BWV680
フゲッタ「われら皆一なる神を信ず」BWV681
コラール「天にましますわれらの父よ」BWV682
コラール「天にましますわれらの父よ」BWV683
コラール「われらの主キリスト、ヨルダンの川に来れり」BWV684
コラール「われらの主キリスト、ヨルダンの川に来れり」BWV685
コラール「深き淵より、われ汝に呼ばわる」BWV686
アンドレ・イゾワール(オルガン)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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