かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

音楽雑記帳:役割を終えた「レコード芸術」、新たな方向は?

音楽雑記帳、今回は音楽之友社から出版されている雑誌「レコード芸術」を取り上げます。

4月3日、音楽之友社から、「レコード芸術」誌休刊の報告がなされました。理由は、以下のように言及されています。

「近年の当該雑誌を取り巻く大きな状況変化、用紙など原材料費の高騰等の要因により、誠に残念ではございますが2023年7月号(6月20日発売)をもちまして休刊にいたすこととなりました。」

www.ongakunotomo.co.jp

こんなところにも戦争の影が・・・・・と考えてしまいますが、私としてはむしろよくここまで残ってきたなという気がしています。私も学生時代などはお金がなくてよく立ち読みしていましたし、CDの帯に「『レコード芸術』誌推奨」とあるのは購入の判断の一つとなっていました(ただ、それだけで購入することはなかったんですが)。

そういう意味では、隔世の感があるなあと思います。私自身、数年前まではCDをよく購入していましたし、そのため銀座山野楽器には毎月通っているユーザーでした。その意味では、「レコード芸術」誌は一つのマイルストーンといっても過言ではありません。

ですが、私自身、住居の棚がいっぱいになり、これ以上は増やせないという状況に陥ったとき、DLという選択を取らざるを得ませんでしたが、しかし世界ではもうすっかりDLの流れだったのです。世界からは遅まきながらもハイレゾへとかじを切り、そのための投資も行い、デッキの取捨選択もして、今や音楽を聴くのはほとんどPCで、という時代になりました。先日父とオーディオを処分したいんだと言って、廃棄に向けて取りに行こうか?との提案を受けたところです(今のところは自分で処分する方針ですが)。

さらに新型コロナウイルス感染拡大を受けて、店頭ではなくDLあるいはストリーミングで定額、という人も増えてきました。ハイレゾ音源も増えました。新譜でCDだけではなくハイレゾということも多くなりました。新譜という話を聞いて検索してみるとCDと一緒にハイレゾが出て居たりするのも普通になりました。

そんな時代に、いつまでもCDという「物質」にこだわっているのは、当然ですが購読者が離れていくということになります。ハイレゾを購入する人は私もですが真っ先にネットで検索をかけてしまいます。そしてそこにある評論家の言を参考に購入することのほうが圧倒的に増えました。私自身も、Facebookで知って検索をかけて、e-onkyoで購入ということが普通になりました。その分、電車に乗って買いに行くということは減り、「鉄」としては寂しい部分もありますが。

ですが時代は確実にCDに関しては「買いに行く」のではなく、また通販で購入でもなく、DLとストリーミング、そして定額サービスというものが主流になりました。現金で購入しにくくなったというのはそれはまた検証をする必要があると思っていますが、しかし音質と手間という「費用対効果」をかんがえると、DLやストリーミングが広がるというのは、時代的にやむを得ないと思います。特に若い人が高齢者よりもオーディオにお金をかけられるのか?と言えばそうではない状況があります。ある程度稼げている人はすでに家族を持ち、教育費などに費用が掛かっていますし、あまり稼げていない人は独身が多く、音楽にお金がかけられるとは言え高額とはいきません。そんな中でわざわざ場所を取るようなCDを購入する人は少ないでしょう。同じ値段でハイレゾが買えますし、またストリーミングも申し込めますから。

それが音楽之友社がいう「当該雑誌を取り巻く大きな状況変化」だと言えましょう。JRや航空各社もチケットレスが広がっているのには、コストと取り巻く環境の変化が大きなウェイトを占めています。コンサートでも電子チケット「teket」が広がっています。しかも、少子高齢化でCDになじみのあった世代は減っていきます。そうなれば、紙媒体の購読が減っていくのは自明の理でしょう。

ここで気になるのは、廃刊ではなく「休刊」としている、ということです。もし原材料費が落ち着けば、再開するということなのか?と思ってしまいますが、私自身は事実上の廃刊、と思っています。それは上記音楽之友社のサイトでは以下のように言及されているからです。

「なお、『レコード芸術』として70余年にわたり培ってきた財産をどのようにして活用していくべきか、音楽之友社として鋭意研究してゆく所存です。」

休刊であれば、こんな文言は要りません。ただ単に「原材料費が高騰しているため、しばらく休刊とします」だけで済みます。しかしこの文言がついたということは、様子を見るけれどもまず復刊はない、と考えていいでしょう。つまり別の方法を考える、ということになりそうです。では、どんな方法が考えられるのでしょうか?

私は内部の人間ではないので、あくまでも想像と提案に終始しますが、一つには日経のように定期購読としてネット配信にしてしまう、という方法です。つまり「レコード芸術」誌自体は残るけれども、これからはネット配信のみとする、という方法です。ただ、確かにコストは圧縮できますが実際には紙媒体を作るのと多少下がる程度ですし、近年のハイレゾ移行に対応できるかと言えば弱いと思います。

なので私は、恐らくハイレゾやCDのポータルサイトとし、音源の売り上げをキックバックしてもらう、という方向に行くのでは?と思っています。e-onkyoがそうだとは言いませんが、しかしe-onkyoで様々なレーベルがなぜ買えるのかを考えた時、レコード会社からのキックバックなしに成立しないからです。しかも店員は要りませんし今までよりも編集部員を減らすこともでき、費用対効果が絶大です。その分を、音楽之友社で開催している様々な音楽イベントへと投入できることになります。他の紙媒体でどうしても紙でないと難しいものを残していくことにもつながります。JR東海東海道新幹線によってローカル線を維持しているのと同じです。

ポータルサイトとしつつ、各評論家に評論してもらう。ともすれば読者に視聴してもらう。場合によってはe-onkyoとの合併すらありえましょう。すでにe-onkyoでは様々な評論家が評論を書いていますし、私自身その評論を見て購入したものもあります。なのでそれと同じ方向へ行くのでは?という気がします。山野楽器もHMVハイレゾポータルサイトはありません。むしろ評論誌を持っていた音楽之友社のほうがポータルサイトを運営してビジネスにしやすいのではないか?と思います。

将来は「音楽の友」すらポータルサイトになるのでは?と思いますしむしろ私はそれを提案したいと思います。ストリーミングも増えてきている昨今、ではクラシックを聴くのに便利なサービスはどれなのかを知ることにもつながりますし、また音楽家の立場に立ってサービスを考えられるのも音楽之友社だと考えます。演奏家と評論家、そしてレコード会社をネットワークできる力を持っているメディアは音楽之友社だと言っても過言ではありません。

レコード芸術」誌が休刊以降どのようになっていくのか。そして音楽之友社が出版している各誌がネットの時代にどのように変化していくのか。これを機会に注目だと思います。果たしてレコード雑誌界の「JR東海」になり得るのか?注視していきたいと思います。

 


地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。