かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:シューマン 1840年の歌曲集

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、シューマンが作曲した歌曲集のアルバムをご紹介します。

シューマンと言えば、交響曲ピアノ曲がすぐ想起されるかと思いますが、「歌」の作曲も数多く行った作曲家です。私のような元合唱屋ですと合唱曲の方が想起されます。

そのためか、歌曲も数多く作曲しています。そんな中で、結構有名な歌曲集が「リーダークライス」ではないでしょうか。実は2つあり、作品24と作品39です。ここには作品24が収録されています。

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そもそも、シューマンが生きた時代、文学と音楽が深く結びつくようになった時代です。その先鞭はベートーヴェンが付けましたが、盛んになったのは前期ロマン派からです。そんななかでシューマンの歌曲は生まれていくことになります。作品24もそんな時代を反映して、ハイネの詩に作曲されたというわけです。

そこには、自己のしたい表現をするという、ロマン派音楽運動の基本が貫かれています。2曲目の「ペルシャザル王」もそんな作品。旧約聖書の「ダニエル書」第5章に記載がある王で、その王の悲劇的な最期が表現されていますが、これはおそらく、旧約聖書を借りたシューマンなりの批判精神だったのだろうと思います。

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最後は4つある「ロマンスとバラード」、その4つすべてを収録。全ての曲が味わい深く、魂を揺さぶります。

こう書きますと、単なるシューマン歌曲入門編なの?と思う人も多いかと思います。そういう役割もあるとは思います。しかしそれなら、年代はもっとばらけていいと思うのですが、実はここに収録されている作品はすべて、1840年もしくは41年に作曲された作品なのです。「ロマンスとバラード第4集」以外はすべて1840年の作曲なのです。

ウィキでシューマンの生涯を見てみますと面白いことに、この1840年という年はシューマンの人生において様々な変化が訪れた年です。クララとの結婚、そしてシューマン自身が低く見ていた「歌」というものに対する卑下を捨て、その「歌」を次々に作曲したという転回の年なのです。

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実際、1840年シューマンの人生において「歌曲の年」と後世言われるようになります。おそらく、シューマンは歌を低く見るということが、本当に自分が目指す芸術なのか?と反芻したのではないでしょうか。クラシック音楽の歴史は、人間の「声」をいかに楽器で表現するかという歴史でもあります。ですから、簡単に人の「声」に頼るのはどうか?と思っていた節があります。しかし、クララとの出会い、そして結婚ということが、シューマンを動かした可能性は高いでしょう。なぜなら、クララはすでに歌曲を作曲していたからです。

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クララは夫ロベルトの影に隠れていますが当時優れたピアニストであり作曲家でした。もっとクララの作品は録音され、コンサートピースになってもいいと思うくらいです。シューマンは彼女の才能を含めたすべてに恋をして結婚したとすれば、当然クララに触発されたということがあっても不思議ではないわけです。

そのことを踏まえた結果なのか、歌うのは当代きってのコントラルト、ナタリー・シュトゥッツマン。人間の喜怒哀楽がしっかりと表現されていることが、私の魂を貫いていきます。シューマンの歌曲に秘められた「生命力」というものが引き出され、シュトゥッツマンが「イタコ」のような役割を以て、私の魂に至っているというような感じです。歌詞がすべてわかるわけではないんですが、それでも生命力が魂を貫いて行くのは変りません。

シューマンの人生を変えたともいうべき、1840年。その「転回の年」は「歌曲の年」として記念され、作曲された歌曲たちはいまだにその生命を放ってやまないのです。

 


聴いている音源
ロベルト・シューマン作曲
リーダークライス 作品24
ベルシャザル王 作品57
ロマンスとバラード第1集作品45
ロマンスとバラード第2集作品49
ロマンスとバラード第3集作品53
ロマンスとバラード第4集作品64
ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)
インゲル・ゼーデルグレン(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。