かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:シューマン ピアノ作品全集13

今月のお買いもの、シューマンのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回はその第13集を採り上げます。

全集の最後となる第13集の第1曲目は、栄えある作品番号1の、アベッグ変奏曲です。

シューマン : アベッグ変奏曲
Schumann, Robert : Theme sur le nom d'Abegg Varie Op.1
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/327/

音楽的にはショパンをすこしおとなしめにしたような音楽ですが、アベッグのスペルを音階に当てはめ、それを主旋律にするという手法はとても斬新なものです。

今でこそ、そんなことは多くの作曲家が行なっていることを私達は知っていますが、シューマンはそのパイオニアだったという事になります。つまり、後期ロマン派におけるブラームス弦楽六重奏曲第2番や、ショスタコーヴィチ交響曲などの手法の原点が、このアベッグ変奏曲であると言えるわけなのです。

しかも、それを伝統の変奏曲でやるという・・・・・意識高すぎです。

それでも、作品1であるせいか、そんなに多くを詰め込めていない点は、物足りなさを感じますが統一感はしっかりとありますので、若きシューマンとしては上出来であったことでしょう。

次の作品は、喋々作品2です。

シューマン : パピヨン
Schumann, Robert : Papillons Op.2
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/328/

パピヨンとそのまま訳されることが多い作品ですが、要するに喋々です。ただ、パピヨンとする理由は、この作品が文学作品にインスピレーションを得たという点が大きく、日本語でそのまま「喋々」と訳してしまうと、なぜか昆虫そのものを思いうかべることになってしまい、シューマンが表現したかったであろう「舞踏会の空気」というものと一致しなくなる恐れがあるからでしょう。

つまり、この作品において喋々とは、舞踏会で踊っている紳士淑女であり、また登場人物の女性でもあるということを意味するものであり、それこそ、シューマンが描きたかったものであると言えるでしょう。だから喋々としてしまうよりは、パピヨンとなっているのだと思いますが、私は敢えて漢字で表記しました。歌謡曲の歌詞にもあるではないですか、「蝶のように」とか。それは大抵、女性を表わすことが多く、しかも恋の歌であることが多いわけです。

であれば、漢字で表記しても、なんら問題はないという事になろうかと思います。え、それはまた昭和なって?おわるうございましたあ!

さて、第3曲目はピアノ・ソナタ第2番です。

シューマン : ピアノ・ソナタ 第2番 ト短調
Schumann, Robert : Sonate für das pianoforte Nr.2 g-Moll Op.22
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/356/

とても詩的で、美しい作品です。若きシューマンが本当に美的感覚に優れていた人であったということを、しっかりと教えてくれる作品です。

最後の2つは、それぞれさしかえられたもので、第4曲目は直前に演奏されているピアノ・ソナタ第2番の最終楽章として作曲されたものですし、第5曲目はクララ・ヴィークの主題による10の即興曲の別ヴァージョンです。

シューマン : プレスト・パッショナート
Schumann, Robert : Presto passionato (Op.22)
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/326/

シューマン : クララ・ヴィークの主題による10の即興曲
Schumann, Robert : 10 Impromptus über ein Thema von Clara Wieck Op.5
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/1795/

どちらも素晴らしい作品で、第4曲目などは何でさしかえられたのかな〜と首をかしげてしまうくらいです。ただ、5曲目は多少冗長かな〜という点はあります。それでも、フーガを供えて居たり、風格は充分です。

どれもシューマンの病的なものが現出されているものはなく、明るく美しい作品ばかりです。

最後の第13集のテーマは、おそらく若きシューマンの美の発露、と言ったところでしょうか。そして最後であるからこそ、デムスをして「みなさん、シューマンって病的ってイメージありますけど、それって本当に正しい理解なのですか?」という、私達に対する問いかけであるように思うのです。

デムスはこの第13集でもそうですが、全体を通じて奇をてらったことはせず、淡々と楽譜に向かい、音をつむぎだしています。その結果は、今まで述べてきたとおり、シューマンの芸術が持つ、様々な側面を私達に見せてくれました。時として病的であり、時として最高の美を追いかける詩人であるシューマンという作曲家の、様々な面を私達に見せてくれました。

ただ、面白いのは、必ずしも作曲順や作品番号順で演奏されていないこの全集の内、唯一作曲順で演奏しているのが、ピアノ・ソナタなのです。作曲順は第1番、第3番、第2番ですが、この全集において唯一順番を呈示したのが、ピアノ・ソナタでした。これは何を意味するのでしょう?

あくまでも私見ですが、シューマンはいきなりシューマンの美を形成したわけではないという事なのだと思います。特に、シューマン以前の鍵盤楽器の大家である、ベートーヴェンからの影響を忘れてはならないよというメッセージにように取れるのです。

勿論、シューマンベートーヴェンとでは、ピアノ・ソナタの数は違いすぎます。しかし、シューマンにも変奏曲が多いという事実を目の当たりにする時、それはベートーヴェンからシューマンが受け継いだものと考えてもいいように思うのです。

それはおそらく、そもそもシューマンがバッハを敬愛していたという点もあるのだと思います。ベートーヴェンはほぼダイレクトに大バッハの息子達からモーツァルト同様薫陶を受けている作曲家ですが、シューマンもその系譜に連なる作曲家なのであるという事を、忘れてはならないよという、メッセージなのだと思います。

初め面喰った全集ですが、最後まで聴きますと、この全集をチョイスしてよかったな〜と思います。紙パッケージで取り出しにくいのが難点なのですが・・・・・

それ以外では、何ら問題ない、私を幸せにしてくれる全集であると言えるでしょう。みなさまも、そんな全集に出会えますよう。




聴いているCD
ロベルト・シューマン作曲
アベッグ変奏曲作品1
パピヨン作品2
ピアノ・ソナタ第2番ト短調作品2
プレストト短調WQoO5-2
クララ・ヴィークの主題による10の即興曲作品5第1稿
イェルグ・デムス(ピアノ)
(ARIOSO Ari107-13)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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