かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:シューマン ピアノ作品全集9

今月のお買いもの、平成26年6月に購入した、シューマンのピアノ作品全集をシリーズでご紹介していますが、今回はその第9集を取り上げます。

実はこの第9集、かなり曲者です・・・・・

第1曲目の「森の情景」作品82は、1848年〜49年にかけて、ラウベの詩集『狩の日誌』に触発されて作曲したものです。

森の情景
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E3%81%AE%E6%83%85%E6%99%AF

シューマンらしい霊感とすがすがしさがある作品で、旋律もそれほど変なものではありません。メロディアスであり、美しい感情の発露といった作品です。

次の曲は、事実上シューマンの最後の作品となった「主題と変奏」です。

主題と変奏 (シューマン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E9%A1%8C%E3%81%A8%E5%A4%89%E5%A5%8F_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3)

ブックレットには、「最後の思索に基づく亡霊変奏曲」という曲名で掲載されており、亡霊は「天使」とも訳されます。厳密に言えば、この二つは異なるものですが、シューマンが死のとこで天使なのか亡霊なのかわからないような存在から主題を呈示され、それに基いた変奏曲であることが、逸話からうかがえる作品です。

シューマンが幻覚などを見ているという状態から察すれば、もはやしっかりとした認知が出来なくなってきていると想像できます。メンデルスゾーンなどの亡霊とも、天使とも言われ、そのあたりは様々言われていますが、そのどちらだと限定しないほうがいいと思います。幻覚を見るほどの状態であれば、それを区別できるなんてできないこともあるからです。

でも、音楽自体はとてもしっかりとしたもので、テンポはゆったりとしていますが、それでも幻想的でかつ透明感もある作品で、明るさすら持っています。デムスの演奏はとても重々しく、まるで死の床でやっとこさ書いている情景を描いているかのようです。

その次がピアノ・ソナタ第3番です。1836年の作曲となっており、着手は第2番よりも遅かったものの完成は第3番のほうが早くなっています。

シューマン : ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調
Schumann, Robert : Grande sonate pour le pianoforte Nr. 3 f-Moll Op.14
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/355/

勿論、この第9集では4楽章で演奏されていますが・・・・・

問題は、その次の2曲なのです。第4曲目が、「鬼ごっこ」。実は同名の作品はすでに「子供の情景」でご紹介しています。実際、ネットで検索してみると作品15の「鬼ごっこ」がヒットします。ヤフー知恵袋でもそのような解釈です。

ところが、作品15とこの作品とは、全く異なる音楽なのです。ですから、別物と判断すべきものです。

で、調べてみると、WoO30であるらしいということが分かったのでした。

子供のためのアルバム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A0

先日もこの作品を取り上げているかと思いますが、その時に追加の作品があると触れたかと思います。その作品に相当するのがこの「鬼ごっこ」であると推測しています。

飛び跳ねるその様子のみを取り出したかのような音楽は、音の跳躍の練習をシューマンが意図しているかのようです。

最後の5曲目が、「神と共に」。全く検索に引っかかりません・・・・・

可能性としては、子供のためのアルバムの曲名がないものと判断できますが、楽譜を見ていないためそれは断定できません。

デムスが演奏した楽譜がどんなものであるかが分かれば、ある程度絞ることは出来ますが、それすらわからないのでは、どうにもなりません・・・・・しかし、シューマンのピアノ作品としては、神々しさもあるこの作品は、その題名にぴったりであるとは言えましょう。

こんな時は英文でもいいので、解説があると便利なのですが・・・・・

しかし、神と共にという割には、途中ジャズっぽい部分もある作品です。まるでベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番の第2楽章を彷彿とさせます。

この題名をデムスが付けたのか、それとも元々シューマンがそう付けていたのかはわかりません。もしシューマンだったとすれば、その「神」とはいったい何を指すのか。キリスト教の「神」なのか。それとも当時神格化されつつあった楽聖ベートーヴェンのことなのか・・・・・

私達に考えさせますね。演奏も、様々私達に想起させるものであり、第1曲目では溌剌とした部分が全く気をてらわずに提示されているかと思えば、後半は様々な感情が入り混じり、それが音楽を通して私たちをつつみこみ、受け手である私たちに様々なことを想起させるに十分な陰影を持っている作品群を、これも奇をてらわずに真っ直ぐに取り組んでいる姿は、じんわりとした感動で包みこむことでしょう。




聴いているCD
ロベルト・シューマン作曲
森の情景作品82
最後の思索に基づく亡霊変奏曲 作品番号なし
ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調作品14
ごっこ
神と共に
イェルグ・デムス(ピアノ)
(Arioso ARI107-9)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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