かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:シューマン ピアノ作品全集10

今月のお買いもの、平成26年6月に購入しました、シューマンのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回はその第10集を取り上げます。

まず第1曲目は、フモレスケ作品20です。フモレスケって何?って思うかもしれませんが、ユーモレスクのことです。

それって、ドヴォルザークじゃないの?しかもヴァイオリンだし。っておっしゃる、ア・ナ・タ。勿論、有名なのはドヴォルザークです。しかしそのドヴォルザークのは原曲がピアノだって、ご存知でしたか?

ユーモレスク (ドヴォルザーク)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%AF_(%E3%83%89%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%82%AF)

ヴァイオリンのものは、ヴァイオリニストとしても有名なクライスラーの編曲です。クライスラーベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のカデンツァを作曲したことでも知られる、実は作曲家としても有名な人なので、実に素晴らしい編曲をしているのですが・・・・・

その印象で、シューマンのフモレスケを聴きますと、ちょっと足をすくわれるというか、物足りないかもしれません。

フモレスケ (シューマン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A2%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%B1_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3)

シューマン : フモレスケ 変ロ長調
Schumann, Robert : Humoreske B-Dur Op.20
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/347/

ドヴォルザークのウィキの記述のように、実はドヴォルザークのも曲集であり、その中の1曲が突出して有名であるだけであり、実はシューマンのフモレスケと構造が似ていることに気が付かれましたでしょうか。

実は、ドヴォルザークも多くのピアノ作品を残しており、その中でも有名なのがやはりフモレスケなのです。シューマンのは若いころの作品ですが、ドヴォルザークはかなり年行ってからからの作品と、そのあたりは違いがありますが、フモレスケという言葉をピアノで表現したという点において、いささかも異なる点はありませんし、その上でどちらも8曲であるというのは、明らかにドヴォルザークシューマンの作品を意識しているということに他ならないのです。

シューマンという人が、ピアノの世界において後世の作曲家に影響を持っていたことが、こういった例からもうかがえるのです。むしろ、日本でドヴォルザークのユモレスクが有名なのは、シューマンへとたどり着くためとも言えるのかもしれません。ただ、ドヴォルザークのピアノ作品も忘れてはいけないと思うんですが・・・・・それはまた、機会がありましたら言及しましょう。

次は、ウィーンの謝肉祭の道化作品26です。

ウィーンの謝肉祭の道化
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%AC%9D%E8%82%89%E7%A5%AD%E3%81%AE%E9%81%93%E5%8C%96

第1曲目のフモレスケと同じ時期に作曲された作品ですが、単に謝肉祭を描写したというよりは、シューマンの「視点」を通した謝肉祭の描写というほうがいいのかもしれません。どこかに一歩引いている部分があり、知的な興奮を表現したものと言えるかと思います。しかし、決して熱いものがないわけではなく、祭りに飲み込まれず、「情熱と冷静の間」で作品を構築していると言えます。だからこそ、ピアニストには冷静さが必要な作品と言えましょう。

第3曲目は、トッカータ作品7。ウィキの記述を読むと、最近発見された作品なのかと勘違いしてしまいそうですが、それは「初稿」が最近ということであり、現在の形は以前から有名ピアニストによって演奏されてきました。

トッカータ (シューマン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%BF_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3)

例えば、ホロヴィッツなどが演奏していますが、そういった大御所も演奏するだけの作品ということになります。いや、そういった大御所でなければ演奏できないというか・・・・・

検索してみますと、ブログで書いてくださっている方がいらっしゃるので、興味があれば「トッカータ シューマン」で検索してみるといいと思いますが、とにかく超絶技巧なのです。若き日のシューマンは、ヴァイオリニストのパガニーニに影響を受け、それをピアノで実現しようとしました。その上で、シューマンは伝統も重んじた人です。新しい様式や構造を試しつつ、伝統への立脚も忘れないシューマンだからこそ、「トッカータ」という、バッハもオルガンで取り上げているジャンルをピアノで表現したと言えましょう。

最後は、子供のアルバム作品68の追加分が収録されています。追加分はWoO16とWoO30の二つに分かれていますが、重複するものは抜かしています。その上で、作品68と重なるものは入れており、聴き比べが出来るようになっています。一緒と言えばそうですが、テンポが変ると印象も変わります。「演奏者」デムスならではの視点です。

総じて、この第10集はその意味では、フモレスケが作曲された1830年代の作品を取り上げながら、シューマンの作品が持つ技巧に立脚する点だとか、その上で伝統を忘れない部分などを編集方針としているように思います。WoO30などをよく分析すると、モーツァルトからの引用や、使いまわしなどバロック音楽が見え隠れしているなど、シューマンの表面的な「新しさ」ばかりが特徴ではなく、むしろ伝統に立脚した故の新しさであるということが癒えるのかもしれません。多分それは、ブラームスに受けつがれ、19世紀から20世紀にかけて、新古典主義音楽などの新しい様式の勃興に、確実に受け継がれているように思います。

デムスはそれを理解したうえでの演奏であろうと思います。それが分かるのが、WoO30の編集方針であるわけです。その上で、超絶技巧はしっかりと華麗に演奏し、そのほかでは端正ながらも明るささえあります。シューマンが病的って・・・・・いったいどこが?

そう思わすだけの説得力が、奇をてらわない演奏から滲み出てくるのです。これこそプロだなあと思います。




聴いているCD
ロベルト・シューマン作曲
フモレスケ作品20
ウィーンの謝肉祭の道化作品26
トッカータ作品7
子供のためのアルバム作品68追加分(WoO16およびWoO30)
イェルグ・デムス(ピアノ)
(ARIOSO Ari107-10)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈り
いたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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