かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:シューマン ピアノ作品全集5

今月のお買いもの、6月に購入しましたシューマンのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回はその第5集を取り上げます。なお、このシリーズが終わるまでは、「今月のお買いもの」のコーナーを原則木曜日と土曜日に取り上げます。

まず第1曲目が「幻想曲」作品17です。

シューマン : 幻想曲
Schumann, Robert : Phantasie C-Dur Op.17
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/344/

いやあ、ベートーヴェンという名前が出ていますけれども、恐らく聴きますと、「どこが?」と思うに違いありません。シューマン的でもないと私は思います。むしろ、年代的には後の、ドビュッシーに近い雰囲気です。

特に、第1楽章を聴けば、どこからどう見ても、ドビュッシーという印象が強いんですが・・・・・

シューマンが決してベートーヴェンを否定していたとは思えませんが、ベートーヴェンの後の時代を創るものとして、ベートーヴェンの「パイオニア精神」を継ぐ者としての自負に溢れていると言えましょう。

参考までに、その時にリスト自身が作曲した「ベートーヴェンカンタータ」をこのブログではご紹介しています。

マイ・コレクション:リストのベートーヴェンカンタータ
http://yaplog.jp/yk6974/archive/906

2曲目が「幻想小曲集」作品12です。様々な小品が一堂に会した作品で、シューマン独自のロマンティシズムが楽しめる作品です。

幻想小曲集作品12 (シューマン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E6%83%B3%E5%B0%8F%E6%9B%B2%E9%9B%86%E4%BD%9C%E5%93%8112_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3)

文学とリンクしている点でも特徴のある作品ですが、それをあえて一つ一つを小品として作曲し、一つにまとめるというのも特徴だと思います。まるでシューベルトの歌曲集をピアノでやったらどうなるか?という感じでしょうか。

その意味でも、この作品もシューマンの革新性を表わすものと私は思います。

3曲目はブックレットではWoOがふられていませんが、WoO28です。これは作品12から除外されたもので、リズムがおかしくも渋い佳作です。

4曲目がパガニーニの奇想曲による練習曲作品3です。本当にパガニーニからインスピレーションを受けているなあと思います。音楽としては多少異なるはずなのに、相も変わらずシューマンパガニーニからインスピレーションを受けていくつか作曲していますが、この作品もその一つです。

しかし、練習曲にパガニーニですか・・・・・そりゃあ、指をダメにもするんでは?と私などは思ってしまいますが、ここにシューマンの心理というか、性格が表れているなと思います。

成立は1832年と、かなりの若書きですが、すでにシューマンの「心の病」の萌芽がこの作品からは見え隠れします。シューマンの完璧主義と言いますか、過剰適応と言いますか。そういった部分が、この作品からは見えるのです。

勿論、シューマン自身がヴィルトォーソの作品を書かなかったのかと言えばそれは違いますが、パガニーニのような超人的な超絶技巧ではありません。なのにシューマンは一生懸命パガニーニの真似をしています。でも、その後作曲した数々の作品は、決してパガニーニ風とは言えません。

シューマンの理想はピアノにおけるパガニーニとなることだったのでしょうが、それが無理であることを、指を壊すことで知ることとなります。その点に、シューマンの「病理」が見えるのです。

それはおそらく、第1曲目のベートーヴェンを範とするという点にも、臨床心理的に繋がっていくような気がしてなりません。そしてそれは、現代日本人に対し、何らかのメッセージを確実に持っていると、私は確信しています。日本人が日本人らしさを失わないための、重要なメッセージである、と。

そして恐らく、この第5集の編集方針こそ、「シューマンの精神性」という点であろうと、私は分析するのです。

デムスのピアノは、ここでは途中チェンバロのような響きすらあり、硬軟織り交ぜて、縦横無尽人であり、天衣無縫です。豪放磊落という表現も出来ましょうか。抜けるような青空と、知的で理性的な響きとが同居する、美しい風景がそこにはあります。シューマンの精神性が詰まっている作品群を、肩に力が入ることなく、自由自在に弾いている点が、私たち聴き手に「シューマンの音楽とは何ぞや」と語りかけますし、それに私たちは応えるのもよし、応えなくてもよし。受け取ることで、何かを得ることが出来るように思います。




聴いているCD
ロベルト・シューマン作曲
幻想曲作品17
幻想小曲集作品12
無題WoO28(作品12から除外されたもの)
パガニーニの奇想曲による練習曲作品3
イェルグ・デムス(ピアノ)
(Arioso ARI107-5)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村