かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:オーケストラ・アマービレ第5回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は平成26年8月3日に聴きに行きました、オーケストラ・アマービレの第5回定期演奏会を取り上げます。

この団体は、ツィッターで知りました。行くきっかけになったのは、その曲目にありました。

プログラムに挙げられていたのは、以下の通りです。

�@オネゲル 夏の牧歌
�Aベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58
�Bベートーヴェン 交響曲第4番変ロ長調作品60

皆さんお気づきでしょうか?ベートーヴェンの作品が並び、しかもその共通項が「第4番」であることを。まさしく、それに惹かれて聴きに行きました。しかも、入場無料。

ただより高いものはないとは、昔から言いますが、果たして、演奏はどうだろうかと、昔の私ならば二の足を踏んでいたところなのですが・・・・・

指揮者は、高井優希。この名前を見て、これはかなりいい演奏をするかもと思ったのです。高井氏は幾つかのアマチュアオーケストラを振っておられますが、そのうちのある団体を振ったのを聴いた時、その統率力に深く感銘したのです。その経験があって、今回足を運ぼうと思い立ちました。

オーケストラ・アマービレは、一橋大学管弦楽団のOB・OGが中心となって設立されたアマチュア・オーケストラです。それ故、若い人ばかりの団体です。ただそれ故、冒険をすることに迷いがありません。

今回の演奏会、実は先日とりあげたAGORA同様、18世紀シフトだったのです。感のいい方は「え?」と驚かれることでしょう。そうです、第1曲目はオネゲルです。それも18世紀シフトで演奏してしまおうと言うのです。

オケのプロフィールを見てみる限り、19世紀〜20世紀の音楽を取り上げていないわけではなく、決して珍しい曲目ではないのですが、それを18世紀シフトで演奏することに、何のためらいがないと言うことに、驚きと嬉しさを感じました。

実際、オネゲルの作品の演奏では、アンサンブルが全く崩れることがなく、しっかりと私たちに作品の魅力を届けてくださいました。この場を借りて御礼申し上げます。

さて、そのオネゲルの作品ですが、1920年の作曲ですから、20世紀の音楽と言うことになります。オケのシフトとしては19世紀を経ていますから、より現代に近いはずですが、それをアマービレは18世紀シフトでよどみなく演奏をした点は、素晴らしかったです。

夏の牧歌
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E3%81%AE%E7%89%A7%E6%AD%8C

三部からなるこの作品は、最後不思議な終わり方をしますが、それもきちんと「終わって」くれたので、とてもわかりやすかったです。私は初めて聴く作品でしたが、オネゲルはとても親しみを持てる作曲家だなあと思います。以前、神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーで交響曲を取り上げていますが、その時からオネゲルはとても親しみを持てる作曲家だと思っています。新古典主義音楽のパイオニアは、私たちに彼の「新しい音楽」のエッセンスをこの作品で表明しているかのようですが、今回の演奏会でもそれが聴き手に届けられているのが好印象でした。

神奈川県立図書館所蔵CD:オネゲル 交響曲全集1
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1031

不思議な陰影の中に、音楽が浮遊し、しかしそれがしっかりとした存在感を持つ・・・・・その上で、形式的にはフランスの伝統に即す。それがとてもわかりやすい演奏であったのは、まさしくアンサンブルがしっかりしていたことによるものだと思います。

ベートーヴェンの二つの「第4番」ですが、まずピアノ協奏曲から参りましょう。特に印象的だったのは、ピアニストでした。アマチュア・オーケストラの演奏会では、まだ駆け出しの言わば「青い」ソリストが共演することが多く、全体のバランスがどうしても気持ちだけで前に行っているような、とても悪いものになってしまうことが多いのですが、この演奏会では、まずピアニストの技量が高かったのです。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は、通常の協奏曲と異なり、ピアノ独奏から始まります。

ピアノ協奏曲第4番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC4%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

ですから、ここでこけるようだと、演奏そのものが台無しになる可能性があり、ピアニストとしては緊張する作品であろうと思いますが、今回、ソリストはものの見事に、自信をもって堂々と弾き始めました。とても荘厳に、そしてロマンティックに。

オケはそれに呼応するように、統率のとれたアンサンブルと、しっかりとしたアインザッツで応え、全体はまるで国宝の彫刻のような、音はアマオケ故の痩せた部分がありましたが、見事な演奏がそこに存在していました。

ピアニストは、岩崎洵奈さん。若いピアニストですが、少なくとも私の聴いた印象では、「若いが熟し始めている」と言えるかと思います。呼吸をとても大事にしますし、指揮者をよく見ていますし。オケが走りそうになるのを指揮者よりも先に彼女が演奏でたしなめる場面すらありました。おお、オケと「協奏」しているなあと。

これぞ協奏曲を聴く醍醐味というものを、存分に味わせていただきました。全体的に美しく力強く、ffとppの差も比較的はっきりとしていたのも好印象です。

何と、ここでアンコール2連発。一つ目はガーシュインのI Got Rhythm。よく知られている作品ですが、のびのびとした演奏は、古典派から現代作品まで彼女が全くいとわず演奏できることをアッピールするものとして、素晴らしかったです。2つ目はドビュッシーの小組曲より。指揮者の高井氏との連弾は、息がぴったりで、さすが第1回定期演奏会のコンビ(高井氏はモーツァルトを弾きながら指揮)だなあと思います。

最後の「ベト4」。第1楽章の弾き始めはちょっとだけ乱れてしまいましたが、18世紀シフトで「ちょっとだけ」で済んだのは奇跡だと思います。それだけ、練習を積み重ねてきたのだなとすぐわかる修正ぶりで、素晴らしかったのですが、私が感銘を受けたのは、それだけにとどまりませんでした。

第1楽章は前奏があって、主題呈示部が始まりますが、以前、このブログでベト4の音源を私がどう評していたかと言うと、端正なものであるという事ばかりでした。そして、いつかはクライバーのような演奏も聴いてみたいと。

その、クライバーのような演奏が、今回だったのです。第1主題が展開されたその刹那、テンポがクライバーばりだったので、もうそれだけで涙が出そうになりました。

しかも、高音は強く、低音は弱くという古典派の法則(これはピアノ協奏曲第4番でも同じでしたが)が比較的徹底されていたことも、素晴らしい点です。これだけで、二つの大有名作品(「英雄」と「運命」)に挟まれているこの作品が、それに負けない輝きを放つのに十分でした。きびきびとしたその演奏は、作品の命をしっかりと私たちに届けてくださいました。

そして、アンサンブルも乱れは少なく、アインザッツもしっかりとしていて、力強く美しい。泣きそうになったのではなく、第1楽章主題再現部あたりでは、泣いていました・・・・・

これだけの演奏を、無料で行うというオケの心意気に、すっかり「惚れて」しまいました・・・・・

年に一度しかなされない、オーケストラ・アマービレの定期演奏会。できるだけ行きたいなあと思った次第です。それ以外でも都内で演奏会を行っているとのことなので、できる限り足をはこびたいと思います。

こういう団体に出会えることほど、幸せなことはありませんから。




聴いてきた演奏会
オーケストラ・アマービレ第5回定期演奏会
アルテュールオネゲル作曲
夏の牧歌
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58
ジョージ・ガーシュイン作曲
I Got Rhythm
クロード・ドビュッシー作曲
組曲より
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第4番変ロ長調作品60
岩崎洵奈(ピアノ)
高井優希指揮
オーケストラ・アマービレ

平成26年8月3日、東京三鷹三鷹市芸術文化センター風のホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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