神奈川県立図書館所蔵CD、シューマンの室内楽全集を取り上げていますが、今回はその第5集を取り上げます。
この第5集では、シューマンの印象を少しだけ変えるような作品が収録されています。
まず第1曲目は「おとぎ話」。1853年の作曲ですが、以前このブログで取り上げたことがある作品です。
今日の一枚:メモリーズ 白川毅夫
http://yaplog.jp/yk6974/archive/116
白川毅夫氏と言えば、私が取り上げることが多いクラリネット奏者ですが、ということは、この作品はクラリネットが使われているということになるのですね。
とても温かい作品なのですが、実は1853年という時期は、自殺に至る最晩年なんですね。
http://gengaku.jpn.org/c/d/database11.cgi?keys31=SchumannRobertMarchenerzahlungenOp.1321853%5Bvn/vla/pf%5D
なのに、音楽はそれを微塵も感じさせない、子供向けとも言えるような作品です。
第2曲目は幻想小曲集 作品73です。この作品もクラリネットとピアノのための作品です。実は第1曲目と第2曲目はそれぞれヴァイオリンのヴァージョンも初めから用意されていました。
幻想小曲集作品73 (シューマン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E6%83%B3%E5%B0%8F%E6%9B%B2%E9%9B%86%E4%BD%9C%E5%93%8173_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3)
1849年の作曲ですが、この曲も比較的明るく、シューマンの病的な点はいったいどこへ行ったのか?と思わんばかりです。
第3曲目と第4曲目はヴィオラのための作品。第3曲目はおとぎの絵本作品113。一転暗めの、陰影が濃い音楽となります。哀愁が深いというか・・・・・
第4曲目のアダージョとアレグロ 変イ長調 作品70も同様に、哀愁漂う作品です。ヴィオラがその雰囲気を出すのに一役買っています。
この第5集の特徴としては、実はすべての作品がピアノと独奏楽器との作品であるという点です。言うなれば、「ソナタ」なんです。しかし、それをソナタと言わず、標題をつけているんですね。
勿論、第2曲目と第4曲目は形式の点でソナタとは言いがたいのですが、第1曲目と第3曲目は充分ソナタであると言えるでしょう。それぞれ4楽章ですし、ソナタ形式も持っていて、独奏楽器とピアノとのアンサンブルです。
ソナタ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF
でも、それぞれ「クラリネット・ソナタ」とも「ヴィオラ・ソナタ」とも発表されず、標題を持った作品として発表されたのです。それを如何私たち聴衆がとらえるのかが、この第5集の編集方針だと言えるでしょう。
この第5集に収められた作品群は、シューマンの様々な「顔」というものを私たちに提示しています。その「顔」から病状を考えるのもよし、音楽を哲学的にとらえるのもよし。いずれにしてもシューマンという作曲家は、音楽に様々な「もの」をしこませているように私には捉えれます。
演奏はとにかくあっさりなのに、なぜかとても感情というか、喜怒哀楽がころころと表に出てくるんですね。奇をてらったことを何もしていないのに、なぜか時として共に喜び、共に泣けるんです。共に笑い、共に怒る・・・・・
シューマンと私をつなげるかのような、でも音楽が持つ感情ははっきりと提示しているという、奇跡とも言うべき演奏だと思います。
いやいや、ごく普通の演奏でしょ?という人も様々に聴いている人の中にはいらっしゃるかもしれませんが、そんな普通の演奏なのに、感情が様々内包され、共有できるというのはやはり奇跡だと思います。
聴いている音源
ロベルト・シューマン作曲
おとぎ話 作品132
幻想小曲集 作品73
おとぎの絵本 作品113
アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70
ナッシュ・アンサンブル
ヨランタ・バルトシアク(ヴァイオリン)
ベアータ・シヴィンスカ(ピアノ)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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