かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:シューマン室内楽全集3

神奈川県立図書館所蔵CD、シューマン室内楽全集を取り上げていますが、今回は第3集を取り上げます。収録曲は、ピアノ三重奏曲第2番と第3番、そして幻想小曲集作品88です。

まず、ピアノ三重奏曲第2番は、1847年に完成され、1850年に初演されました。ロマンティックさは第1番よりも増し、ピアノの清らかな音と、弦の甘さが抜群のバランスで溶け合っています。

ピアノ三重奏曲第2番 (シューマン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E4%B8%89%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3)

ピアノ三重奏曲第3番は1851年と、第2番の3年後に完成していますが、実はどちらもシューマンの晩年に完成されたものであることに注目です。

以前、ヴァイオリン協奏曲を取り上げたことがあったかと思いますが・・・・・

今月のお買い物:シューマンメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/415

それに似た雰囲気を、この二つの作品は持っていますが、ドラスティックな点が含まれる点で、シューマンの心身の健康がいい状態の作品と言えるでしょう。円熟期というべき音楽が、ここには流れています。ゆったりと、しかしキビキビトシタ部分もあり、陰影と、哀愁とが交錯し、かつ明るい部分も存在する・・・・・

それを演奏家に表現してもらうために、シューマンは実はある特徴的なことをやっています。それは、従来指示というものをイタリア語で表記していたものを、ドイツ語で表記するという点です。

これ以前にそんなことをしたのは、ベートーヴェンくらいですが、しかもピアノ・ソナタでほんの少しです。シューマンはそれを比較的広範囲のジャンルで行っています。特に、交響曲は賢著でしょう。

シューマンが生きた時代は、ドイツナショナリズムが勃興した時代です。それは実はモーツァルトの時代から始まっているわけですが、それが顕著になった時代こそ、シューマンの時代であると言えるでしょう。しかし、それはイタリア語の否定ではないわけです。実際、イタリア語表記を使ってもいます。では、なぜでしょう?

新しい音楽・・・・・それは、従来の音楽を否定することではなく、とらわれないということであるからだと思います。形式にとらわれず、以前の形式重視も含め、様々なものを試してみる・・・・・それが、シューマンが標榜した「新しい音楽」であろうからです。それを、シューマンはあらゆる部分で背中で示した、と言えるだろうと思います。

最後の幻想小曲集作品88はドイツ語表記にこだわっていません。しかし、前2曲の作品はドイツ語表記にこだわっています。その点に、シューマンが目指したものが、おぼろげながら見えてくるように思います。

シューマン民族主義を肯定しながら、それにこだわることを「否定」したのです。それこそ、フランス革命がドイツ芸術に与えた一つだったのではないかと、私は考えます。だからこそ、シューマンは高らかにそれを「新しい音楽」という表現でうたいあげた・・・・・・

ロマンティシズムの美しさと、危険性を、もしかするとシューマンは十分すぎるほど知っていたのかもしれません。評論家としての才能も豊かだった人だからこそ、認知の点で優れていたであろうと思われるからです。

それがブラームスに受けつがれ、その後の様々なジャンルに影響を与えていった・・・・・そんなように思っています。フランス六人組が始めた「新古典主義音楽」も、その延長線上だと思っています。ドイツ観念主義であればわかるんですが、それがフランスにも影響を与える・・・・・

ヨーロッパ文化の神髄を、ここに見ることが出来るように思うのは私だけなんでしょうか。

シューマンを聴きますと、それだけに余計、ドイツ音楽一辺倒だった自分が、恥ずかしく思うのです・・・・・

さて、演奏はさらにロマンティックで、でもとても清潔感あふれるものになっています。シューマンを表面的に病的ととらえるのではなく、様々な側面、シチュエーションがあることを十分押さえながら、時には歌い。時には笑い、時には憂い、時には悲しんで、人の表情と言うものを表現するかのごとく、縦横無尽にアンサンブルが展開されていきます。

それはまさしく、自分の心と対話するかのような、素晴らしい時間を聴く者に与えてくれます。

こういった演奏に出会えるのは、クラシックを聴く「喜び」を感じる瞬間です。




聴いている音源
ロベルト・シューマン作曲
ピアノ三重奏曲第2番ヘ長調作品80
ピアノ三重奏曲第3番ト短調作品110
幻想小曲集作品88
イスラエル・ピアノ・トリオ

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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