かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:クララ・シューマン ピアノ曲集

今月のお買いもの、平成27年3月に購入したものをご紹介しています。今回はディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ナクソスクララ・シューマンピアノ曲集をご紹介します。

このブログでは、クララの作品を取り上げるのは2度目になります。その一度目も、実はナクソスのアルバムでした。

神奈川県立図書館所蔵CD:クララ・シューマンピアノ作品集
http://yaplog.jp/yk6974/archive/781

この時から、私の中には、ピアノ独奏曲が聴きたいという想いが湧き上がっていました。ロベルトやメンデルスゾーンブラームスが尊敬し、仲間として称揚した女性の、まさしく一番得意なピアノ独奏曲を聴きたいと思うのは、瀬川氏の演奏家へ行く私にとって、元合唱団員とは言え、ごく自然なことでした。

5作品収められていますが、どれもロベルトと比べてもそん色ないなんて失礼なくらいで、立派な作品が並んでいます。前期ロマン派としては当然すぎる作品ばかりです。

いや、だからクララは埋没してしまったのですよという声がきこえてきそうですが、確かに、ロベルトのような癖はないんです。だからこそ、作品は全て美しいですし、ピアニストが普通に弾けば、トルソのようなその美は、燦然と輝きはじめるのです。

そういう作品を、我が国は遠ざけてきました。あまりにも聴衆の視点に立ちすぎてきたというのは言えるかと思います。それは、私達聴衆がだめだと言うのではなく、本来クラシック音楽は様々な素養が必要になるはずなのに、それを前面に出してこなかったためだと思います。ロベルトなら、癖があるため、クラシック音楽は芸術として深いのだとという説明が、わかりやすくなるからです。、

ただ、それは大きな裾野があってのことなのであるということを、目隠ししてはいないでしょうか。では、なぜショパンのほうがピアノを弾く人たち、あるいはそのファンなど聴衆に人気なのでしょうか。それは、芸術の高みに登っているにも関わらず、音楽は美しく、旋律的にわかりやすいからではないでしょうか。もし、ロベルトをそれだけ称揚するのであれば、ショスタコーヴィチも同様に称揚する必要がある訳ですが、それは途端にないということは、ないでしょうか。

クララの優れた才能と出会ったからこそ、ロベルトは癖のある作品へと移行したとも言えます。それはある意味、ロベルトの「敗北宣言」でもあります。しかし、それは音楽からの「撤退宣言」では決してなかったわけで、それは多くのロベルトの作品が証明しています。

あいつにはかなわないや・・・・・そんなこと、意外と私たちの周りには転がっていないでしょうか。例えば、高校野球にたずさわってきて、しかしレギュラーを取れなかった高校球児だとか。その経験から、想像できることはたくさんあるでしょう。ロベルトがクララに対して持っていた尊敬はまさしく、それと同様のものであったと言えましょう。

例えば、ピアノソナタ ト短調では、暗めの旋律に、諧謔的なリズムが付くことで、主題は深みと幻想の世界を有し、決して気品だけは終わりません。善美への憧れがそこには存在し、暗い中に一筋の光がさっと差し込むような音楽が、そこにはしっかりと存在します。特に第2楽章に置いては、その「暗いなかの一筋の光」が、絶妙に表現されていると言えます。

ピアノの岩井美子女史は、本当に奇をてらわず音楽を普通に鳴らし続けます。もし奇をてらうと言うとすれば小節の最後をリタルダンドさせることだと言えますが、前期ロマン派の作品を演奏するにおいて、それは特段不思議なことでも、いけないことでもないと思います。古典派の作品、例えばモーツァルトピアノソナタであれば、それはどうよということは私であれば言うかと思いますが、私であるからこそ、前期ロマン派であれば、この演奏はアリだろうと思います。

それは前期ロマン派の音楽の「新しさ」です。その新しさは現代では当たり前すぎて、特段珍しいものではないからこそ、あまりにも普通に聴こえてしまいますが、だからこそ、それだけ普通なのに、そこに世界がしっかりと存在し、作品すべてが実に存在感があるということを、ごく普通の演奏をして語らしめているのが素晴らしいのです。

それは演奏者の質の高さであり、また作品そのものの質の高さだと言えます。私たちにとって簡単に聴こえる作品であればあるほど、実は演奏はとても難しいというのが普通です。少しでも間違えばそれは目立つからです。そのリスクを背負って、みごとに作品が持つ「美」をかたらしめるこの演奏は、誠に奇跡であると思います。




聴いているCD
クララ・シューマン作曲
3つのロマンス作品3
ピアノ・ソナタ ト短調
音楽の夜会 作品8
ロベルト・シューマンの主題による変奏曲 作品20
ロマンス イ短調
岩井美子(ピアノ)
(Naxos 8.553501)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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