神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ボッケリーニのチェロ協奏曲全集を取り上げておりますが、今回はその第2回目です。
第2集には、第12番、第6番、第8番、第10番の4曲が収録されていますが、この内第12番は20世紀に発見されたにも関わらず、何と偽作かと噂されている代物です。
確かに、第12番は堂々としており、軽快さというよりも壮麗さが目立つ作品です。ただ、軽快さは第3楽章に現われており、他の3曲とまるっきり異なると言うほどではありません。
確かに、ボッケリーニの真作とされているものは、往々にして軽快かつ上品で、それでいて喜びに満ちているものが多いように見受けられます。しかも、ソナタ形式にはこだわっていない。ソナタ形式だからと言って偽作とは言えないのですが、偽作となっているものが多いようには見えます。
それにしても、そもそもこの時代の協奏曲は、交響曲よりもメインであるため、コンサートの最後に持ってくることが多かったジャンルですが、ボッケリーニの場合、サロンという場も多かったことから、ソナタ形式などに必ずしもこだわらず、チェリストの技量を魅せる内容になっているわけです。
それと、ボッケリーニが仕えたのが、スペイン宮廷であったと言う点も、作品に反映されていると考えていいでしょう。無敵艦隊が負けるまでは最強の国家だったわけですが、その後ヨーロッパの中心はフランスやイタリア、ドイツといった国に移って行くわけで、スペインは文化的に辺境となっていきます。そういった歴史的背景が、これらの真作には反映されていると考えていいでしょう。
だからこそ、古風でもあり、しかし、古典派の音楽でもある訳で、そうなると聴いている私たちは気持ちよく喜びを感じていられるのですが、演奏者は結構大変だろうと思います。常に2つ先くらいの音符を思い浮かべながら、あまりくり返しの無い音楽をつむぎだしていかねばならないからです。
演奏を聴いている限りは、そんな大変さなどみじんも感じられず、音楽が喜びをもって鳴り響き続けます。古典派の時代の作品という事でリフレインで弱く演奏されるのは徹底されていますし、みごとに古典派の美意識を意識しながら、ボッケリーニという稀代の作曲家の作品を、存分に表現しています。
何ともないかもしれませんが、その何ともない作品を、飽きを感じさせず演奏するのは素晴らしいことだと思います。これだけでも、演奏しているアカデミア・イ・フィラルモニチ・ヴェローナが、決して名も知れない団体というわけではなく、むしろ徹底的に様式美や教則などを踏まえた、常識と力のある団体なのだなと思います。
バロック的なサロン音楽としての役割を持ちつつ、古典派の旋律、和声を備えた、新旧二つの時代の果実が詰まった作品を存分にリスペクトしきった、名演かと思います。
聴いているCD
ルイジ・ボッケリーニ作曲
チェロ協奏曲第12番変ホ長調
チェロ協奏曲第8番ニ長調G478
チェロ協奏曲第6番イ長調G475
チェロ協奏曲第10番ニ長調G483
エンリコ・ブロンツィ指揮、チェロ
アカデミア・イ・フィラルモニチ・ヴェローナ
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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