かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜;シューマンのオーボエとピアノのための作品集

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回は二人のソリスト、ホリガーとブレンデルという目玉なアルバムをご紹介します。

そんな目玉なアルバムですが、収録されている作品が実に渋いものばかり。しかも、シューマンですし。その上、実はアルバムのタイトルとは裏腹に、収録曲は必ずしもオーボエとピアノのための作品ばかりではありません。けれどもそれは、シューマンという作曲家が生きた「時代」を如実に物語るものにもなっています。

まず1曲目が、3つのロマンス作品94。これはもともとオーボエとピアノのための作品で、1849年12月に妻クララへのクリスマスプレゼントとして作曲されたものです。しかも、このアルバムで演奏しているホリガーが「ロマン派全体を見渡しても最も重要なオーボエ作品」と語る作品です。

http://shop.zen-on.co.jp/p/549007

解説らしい解説はこの全音のものしかないのも寂しいですねえ。しかしさすがは全音。楽譜出版社ならではの心意気です。そんなホリガーが当時新進モーツァルトのピアノ協奏曲全集を収録するなどで脂がのっていたブレンデルと組んだこの演奏は、実に端正であり、実に美しく、実に善美に憧れる人間がそこいる、暖かい演奏です。

2曲めが夕べの歌 作品85-2。そもそも作品85とは、「小さな子供と大きな子供のための12の連弾曲集」のことで、もともとはピアノ連弾曲です。その一方をオーボエにしてしまおうという・・・・・もともとの作品を聴いたことがないんで、移調しているかどうかまではわからないんですが、こういった演奏は実に前期ロマン派的だと思います。なぜなら、前期ロマン派の時代はまだそこまで楽器が発達しておらず、ようやく市民にクラシック音楽が行き渡り始めた時代で、まだまだ古典派の編成が色濃く残っていた時代です。例えば、ピアノ協奏曲を演奏するのにオケがないからオケの代わりに弦楽四重奏で代えるなどがあたりまえにあった時代です。

となれば、ピアノが一つしかないのであれば、もう一方を他の楽器で代えるというのは、よくあることでした。このホリガーとブレンデルの演奏はそんな作曲当時の編成を彷彿とさせる演奏で、興味深いです。其上で演奏自体もオーボエの暖かいサウンドが素晴らしい!

3曲目がアダージョアレグロ 変イ長調作品70。実はこれももともとはオーボエではなくホルン。でも、これはわたしにとってはホルンで聴いた作品ではないんです。そもそもは多分、FBFの白川氏のクラリネットと奥様のピアノで聴いたのが初めてだと思います。ですのでこのホリガーとブレンデルの演奏は全く違和感がなく、むしろこのオーボエのほうが自然だと思うくらいです。もちろんいつかは原曲を聴いてみたいとは思っていますが。とにかく自然に感じるだけに生命力あふれる名演です。

4曲目が幻想小曲集 作品73。これはまさにクラリネットとピアノのための作品。しかしオーボエでもこれも違和感がありません。作品94や作品70同様、管楽器のための一連の作品なのですが、そもそもシューマンクラリネットだけと考えていなかったという証拠でもあるのではないかと思います。ホリガーのオーボエも本当に冴えており、暖かくまさにカンタービレしている演奏は、私達の魂を癒やしてくれます。

最後が、民謡風の5つの小品 作品102から、第2番〜第4番の3曲。もともとはチェロとピアノのための作品だそうで、これもチェロの代わりにオーボエになっているというわけです。

http://institut.minibird.jp/tomotaka_sato/?page_id=106

演奏も、どこがもともとチェロの作品だろうかというくらいオーボエで自然で、生き生きとしており、かつ透明感もあります。さすがは二人の名ソリストだなあと思います。

このアルバムを聴きますと、私達日本人の悪しきリスニングの点が浮かび上がってくるなあと思います。それは原典原理主義、です。もちろんそれが必ずしも悪いわけではありませんが、その割にはバロックのリコーダーのための作品をフルートで演奏することには何も批判精神がないんですよねえ・・・・・多分、権威主義から来るんだと思います。この演奏は二人の巨匠の演奏なのに、そんな権威主義とは無縁で、実に自然体です。え、この楽器の組み合わせで演奏してどこが行けないの?とどこ吹く風です。わたしもこんなふうになりたいなあ。そう、もともとのオーボエとピアノのための作品は、1曲目だけなんです。それ以外はすべてオーボエ以外の独奏楽器とピアノのための作品なんです。けれども演奏はどこを聴いても金太郎飴のようにオーボエであることが自然なんです。これはそもそもが、この二人が、シューマンが生きた時代とその精神が作品に反映されていることをしっかりと認識しているからなのだと思います。

その部分を、私達はどれだけしっかりと聴衆として受け取っているのかなって思います。その上でどれだけこの二人に共感しているのだろうか、と。私は聴いていて本当に楽しいですし、バロックのリコーダー作品はリコーダーでって思っているにもかかわらず、屈託なく楽しめる演奏なんです。こういう演奏こそ、プロの仕事ですね〜。さすがと思わされます。




聴いている音源
ロベルト・シューマン作曲
3つのロマンス〜オーボエとピアノのための 作品94
夕べの歌 作品85-2
アダージョアレグロ 変イ長調作品70
幻想小曲集 作品73
民謡風の5つの小品 作品102より
 第2番 ゆっくりと
 第3番 速くなく、たっぷりとした音で
 第4番 急ぎすぎずに
ハインツ・ホリガーオーボエオーボエ・ダモーレ〔幻想小曲集〕)
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村