かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ヴィヴァルディのオーボエ協奏曲集


神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はヴィヴァルディのオーボエ協奏曲集を取り上げます。これも演奏はイ・ムジチなのです。

イ・ムジチと言えばバロックですけれども、ある程度クラシック音楽を聴いてくると、実はイ・ムジチがバロックの作品を演奏すると言うことは現代とバロックの融合なのだと言うことが分かってきます。

例えば、フルートをどの楽器に相当させるのかとなると、困難が生じる筈ですが、その時代ではリコーダーだったはずのものを、フルートでやってしまおうと言うわけですから、半ば編曲に近いことをやっているわけです。

モダンで演奏するということは実は、必ずしも作曲当時に想定された和声とは異なる可能性を秘めた冒険である、と言う事です。しかも、このアルバムはオーボエ協奏曲集なので、バロックらしい作品をモダンで演奏するという、実にチャレンジングなことを実はやっているわけです。

でも、精神としてはバロックを意識したアンサンブル集団の曠野とも言えるのがイ・ムジチであることもまた、事実です。まだまだ後期ロマン派の影響が強く、古楽演奏がようやくヨーロッパに置いて市民権を得ようとする時代に、あえてモダンで小編成のアンサンブルで演奏しようというのが、そもそもなのですから。

録音は1975年〜81年にかけてですから、モダン演奏が古楽の影響を受け始めた時代であるわけです。そんな中で、モダンの演奏様式を強く意識しながら、バロック的な編成を意識しているのがイ・ムジチだと言えるでしょう。

ヴィヴァルディのオーボエ協奏曲は、ピエタの学生たちよりも、その教師たちによって演奏された可能性が高いとされていますが、それはヴィヴァルディが生きた時代であればごく自然なことです。ソリストが都合により集まって楽団を作っていたのがバロック時代のオケです。それは現代に置いては室内オケ、或は室内アンサンブル程度の規模でしかないわけです。でもそれをあえて大規模オケと張り合えるだけの性能を持つモダン楽器でやろうというのが、イ・ムジチというアンサンブル集団であるわけです。

ですからその演奏は、バロック的でありながらも、極めて現代的で洗練されたものでもあるわけで、例えばこのアルバムの演奏でも顕著ですが、ppとffの差がはっきりとつけられているというのがそれで、ヴィヴァルディの作品はそのような現代的な、それは古典派的とも言っていいと思いますが、演奏様式に表れています。

その上で、作品自体もすべて3楽章形式。ですから、始めてクラシック音楽を聴いた人が、ベートーヴェンなどと間違えてしまうというのは、聴き慣れた人たちからすれば笑い話でも、実はあながち笑えないと言うか、納得でもある訳なんです。モダンのイ・ムジチが演奏しても違和感がない、作品が持つ先進性と普遍性が、モダンであるからこそくっきりと浮かび上がる訳なんですね。

さらに、モダンであるからこそ、艶も付けやすいですし、表現の幅も広がる訳で、当時の楽器では考えられないほどの世界の広がりを持っているのです。モダンで演奏すると音のピッチが聴き慣れたものであるだけに凄さが分からなくなりますが、古楽演奏を聴いたうえでモダンでバロックを聴きますと、実にヴィヴァルディという作曲家が優れた人だったのかが浮き彫りになります。ロマン派のような派手さはないですが、良く聴けば聴く程、ヴィヴァルディの先進性が浮かび上がり、それこそイ・ムジチが目指しているものだと言っても過言ではないと思います。

バロックの作品は是非とも、モダンと古楽両方で演奏を持っていたいものです。その上でも、このように図書館で持っていることはとてもありがたいことです。リッピングしてPCで聴くということが可能になります。是非とも図書館にはこういった優れたライブラリを維持していただくとともに、利用する私たちも大切に利用する必要があるでしょう。

その意味では、先日九州大学図書館で起こった出来事は、非常に残念で、遺憾と言わざるを得ません。




聴いている音源
アントニオ・ヴィヴァルディ作曲
オーボエ協奏曲ハ長調RV452
オーボエ協奏曲ニ短調RV454
オーボエバスーンのための協奏曲ト長調RV545
オーボエ協奏曲ハ長調RV446
オーボエ協奏曲イ短調RV463
オーボエ協奏曲ハ長調RV447
イ・ムジチ合奏団
ハインツ・ホリガーオーボエ
クラウス・トゥーネマン(バスーン

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村