かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ベルク追悼コンサート

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、1936年5月1日に開催された、アルバン・ベルクを追悼するコンサートを収録したアルバムをご紹介します。

アルバン・ベルクというと、むしろその名を冠したカルテット、アルバン・ベルク四重奏団を想起する人も多いかと思います。ではその作曲家自身はどれだけ認知されているのかと言えば、それほどでもと言わざるを得ないのではないかと思います。

我が国ではオペラ「ヴォツェック」や「ルル」で有名ではあると思うのですが・・・・・

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実は結構いろんなジャンルを作曲している人でもあります。特に12音階や無調を使った作品で優れたものを世に送り出したことのようが、功績としては大きいのではないかと私は考えています。

ベルクは交友も広い人でした。シェーンベルクにヴェーべルン、アルマ・マーラーなどなど・・・・・当時のヨーロッパ知識人たちを横断するような人であったことも、また確かだと思います。

それゆえなのか、ナチスからは目を付けられることになりました。ベルクはユダヤ人ではなかったにも関わらず、音楽が無調もしくは12音階だというだけでその音楽が退廃音楽指定されてしまいます。これはほぼ間違いなくナチスがベルクの持つ「力」を恐れたが故だろうと想像しています。ユダヤだろうがそうでなかろうが、芸術の仲間として付き合う姿勢に力を感じ、恐れたのだと思います。

実際、その証拠がこの録音だと言えます。まず、1曲目を指揮するのがウェーベルンヴェーベルン)。かれはベルクと交友のあったユダヤ人でした。そして「抒情組曲」を演奏するのはガリミール弦楽四重奏団。これはユダヤ人であるフェリックス・ガリミールが設立したカルテットで、実際ガリミール自身もウィーン・フィルに入団後迫害を受けて退団しており、それがちょうどこのコンサートの年でした。

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自分たちユダヤ人に対する友好を、終生誓った人だったという、ベルクの人徳により集まって開催されたのが、このコンサートだと言えましょう。オーケストラはBBC響。ですのでおそらくBBCによって放送されたものがディスクになったもの、と考えていいでしょう。この元音源はおそらくPHILIPSだと思うのですが、一方でTESTMENTからも出ています。ということはマスターテープがあるということを示していますので。

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当日のコンサート・ピースが2曲だけだったのか、それ以上あったのかまでは私も把握できていません。しかしこの2曲というのはとても意味のあるものです。ヴァイオリン協奏曲はベルク自身が悲報を受けて作曲したものでした。

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そして抒情組曲は、弦楽四重奏にとって12音階を使うという、とても知的冒険に満ちた素晴らしい作品であった、ということです。

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そしてこの二つの作品が並ぶことにより、ベルクの豊かな才能、そしてそれを表面的な評価だけで葬り去ろうとしたナチスへの批判も見て取れます。

二つとも聴いていますと、どこかに「悲しみ」を感じるんです。今風で言えば「ベルク・ロス」。その悲しみが、自然と演奏のどこかに顔を出す・・・・・1936年の録音ですから当然モノラルなんですが、それでも演奏者の深い「悲しみ」をどこかに感じる演奏なのです。

こういった演奏を聴きますと、12音階というものも必然の音楽手法だったのだと腑に落ちます。現代の演奏家たちにも投げかけるものは多大なものがあるのではないかと思います。今聴いても全く色あせない、素晴らしい演奏だと言えるでしょう。

 


聴いている音源
アルバン・ベルク作曲
ヴァイオリン協奏曲
抒情組曲弦楽四重奏のための
ルイス・クラスナー(ヴァイオリン)
アントン・ウェーベルン指揮
BBC交響楽団
ガリミール弦楽四重奏団
 フェリックス・ガリミール(第1ヴァイオリン)
 アドリアンヌ・ガリミール(第2ヴァイオリン)
 ルネ・ガリミール(ヴィオラ
 マルグリート・ガリミール(チェロ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。