かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:山田和樹が振るマーラーの「復活」

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、山田和樹指揮日本フィルハーモニー交響楽団他の演奏によるマーラー交響曲第2番「復活」を収録したアルバムをとりあげます。2枚組ですが、今回は「復活」という曲の内容を鑑み、一つとして扱います。

この演奏、私はとても素晴らしく、特に合唱団は秀逸だと思っているのですが、世の評価はいまいちのようです。それは今の日本を象徴しているとも言えるのかもしれないなと思っています。

それは、この演奏の代わりに評価されているのは、なんと言っても小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラのものです。確かにオーケストラはいいんですが、クライマックスの合唱が少しおざなりなんですよねえ。アマチュアが実力不足だから、ではありません。正月にアマチュアを使ったから、だと言える演奏だと私は判断していて、あまり評価はしていない演奏です。

一方で、この山田和樹が指揮するものはオーケストラと合唱共に生き生きとしていて、「復活」という作品が持つストーリーも明確で、全体的にはとても素晴らしい演奏になっているのですが・・・・・

おそらく、評価が低い理由は以下の通りでしょう。

①指揮者が若い
山田和樹はようやく売り出してきたと言える指揮者です。それと巨匠小澤と比べればねえ・・・・・って声が聴こえてきそうです。ですがそれは両方を聴いた結果ですか?いまや日本人の若い指揮者でいくらでも生きのいい人がいることが、このコロナ禍ではっきりしました。そろそろ小澤も若い人に譲ってもいい時期だと思います。小澤の役割りは終わったと思っています。

②合唱団なんて関係ない
「復活」という作品が、そもそも詩にインスパイアされた作品です。そのため合唱部分も結構ヴォリュームがあります。しかも、後期ロマン派の交響曲は第4楽章(最終楽章)にこそ言いたいことを持ってくるというのが基本。であれば、合唱が入っている最終楽章の第5楽章こそ、マーラーが「復活」という作品で言いたいことであったはずなのですが、オーケストラ偏重でそれを無視するとおっしゃるのですか?

③レーベルが聞いたことがない
おそらく、元レーベルは「Exton」だと思いますが、これはオクタヴィアレコードと言って、日本のクラシックの演奏を収録することで有名なレーベル。しかもその演奏レベルは決して低くないことで静かな人気を持つレーベルです。知らないだけでぶった切るのですか?

これらはすべて、実は日本の没落と深くかかわっている思想です。勿論、小澤がダメと言いたいわけではありません。2002年の「第九」は素晴らしい演奏ですし、そして最近でも水戸室との第九も素晴らしい演奏でした。だからとって小澤以外は指揮者じゃない!って「小澤の」ファンが言うのならともかく、一クラシックファンがあまりにも神格化して評価してしまうのはどうなのかなって思うところなのです。

日本の没落は、ほぼこの「神格化」から始まっています。原発の安全性、保守政治の安定性、そして終身雇用・・・・・それぞれを「神格化」してしまったことが、すべての始まりであるように思うのは私だけなのでしょうか?これを語りますと長くなりますので、あえて割愛しますが。

日本にははっきり言えば「歌劇場」がないんです。もちろん新国立劇場がありますが、ではそこでたたき上げられた指揮者は今いますか?いないですよね。しかしその代わり、アマチュア合唱団などで指導している指揮者が大勢いるんです。その人たちのタクトは実に生命力あるものであることが多いのをご存じですか?それは我が国に置いて「歌劇場でのたたき上げ」と同じ役割を果たしています。

しかし、その合唱活動を阻害してきたのは、大資本などに象徴される旧勢力でした。それに乗ってきて大きな果実を受けってきた労働貴族たちです。さらに言えば、その人たちを批判せずに、左翼を叩いて来た保守勢力です。この演奏をあまり評価しないというのは、その状態そのものだなあって思います。

山田和樹が指揮するものはどれも生命力に優れた、魂に響く演奏ばかりです。このマーラーの「復活」もしかり。ロケーションは私が持っている尾高忠明指揮東京フィルと同じ東急Bunkamuraオーチャードホール。ホールを存分に「楽器」として使い、オーケストラを壮麗に鳴らしているのも好印象です。そのうえで鳴り続ける、合唱による「復活」のメッセージ・・・・・その熱量も素晴らしく、魂が揺さぶられます。

特に合唱団は、山田和樹が携わる団体。プロの東京混声合唱団と、アマチュアの武蔵野合唱団。どちらも高い表現力は、「歌」があるこの交響曲にしっかりとしたメッセージがあることを、私たちに印象付け、そして魂を貫いていく・・・・・これぞ、マーラーが「復活」という作品で描いて見せようとした「宇宙」ではないかと思います。そんな演奏が、日本の団体、ソリストだけで味わえる・・・・・なんと幸せなことでしょうか。

toukon1956.com

musashino-chorus.com

いずれ、山田和樹は我が国を代表する大指揮者になると私は確信しています。それは彼が今日本で歩んでいる道筋は、ヨーロッパでは歌劇場たたき上げと同じ道筋だからです。この演奏が「小澤を凌駕した!」と将来必ず言われるようになることでしょう。最後に付言しておきますが、小澤と違い、この演奏は2月。アマチュア合唱団の指導に携わっている山田和樹ならではの配慮と、それによるハイパフォーマンスだと思います。

 


聴いている音源
グスタフ・マーラー作曲
交響曲第2番ハ短調「復活」
林正子(ソプラノ)
清水華澄(アルト)
東京混声合唱
武蔵野合唱団
山田和樹指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。