東京の図書館から、7回シリーズで取り上げている府中市立図書館のライブラリである、ロストロポーヴィチ指揮ロンドン・フィルによるチャイコフスキーの交響曲全集、今回はその第4集を取り上げます。
第4集は交響曲第4番、そして幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」が収録されています。この二つを並べてきたかー、という感じがします。
交響曲第4番はチャイコフスキーがロシア的というよりはむしろ普遍的な人間の内面性を描こうとしている作品だと言えます。「フランチェスカ・ダ・リミニ」もダンテの「神曲」からインスピレーションを得た、人間の叫びとでもいえる作品です。ですから、実は似たものを並べていると言えますし、それはチャイコフスキーの音楽の特性を見せている、ともいえるでしょう。
チャイコフスキー自身も当時様々な恋愛をしており、おそらく今風に言えば「バイセクシャル」だったと言えるでしょう。そんな自身の経験がこの二つの作品を似たものにしたのかもしれません。ロストロポーヴィチはそのあたりを堂々とオケを鳴らせており、テンポ的には多少ゆったり目で本来ならあまり私としては好きではないテンポであるにもかかわらず、全く気にならないものとなっており、むしろ好きな部類です。
こういった「説得力」こそプロオケの魅力だと思います。今でさえ、LGBTであり続けるということは「運命にあらがう」ことを使命づけられると言えます。ましてやチャイコフスキーが生きた時代をや、です。実はクラシックの世界でも、古くからLGBTの存在が確認されており、当然ロストロポーヴィチも知っているはずですし、ロンドン・フィルの団員達も公然の秘密として知っていたはずです。第4番の内面性や、「フランチェスカ・ダ・リミニ」で取り上げられている秘密の愛などは、共感するものも数多くあったことでしょう。
そういった「共感」が分厚い音として積みあがったのがこの演奏だとすると、情熱的でかつそれが全く嫌味がなくストレートな感情の発露にもなっているのもうなづけます。それが演奏を聴いている私に、恋愛という狭い領域だけではなく、運命に対してどう対処するのかという、現在の自分の状況をどう考えるかという普遍的なものへと変わっているのです。
現在難病にかかっている自分が、今後どう生きていくのか・・・・・こういう演奏を聴きますと、前向きに考えることができるのがうれしいです。
聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第4番ヘ短調作品36
幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」
ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
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