東京の図書館から、6回シリーズで府中市立図書館のライブラリである、朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏によるベートーヴェンの交響曲全集を取り上げます。
府中市立図書館はとにかく全集ものは豊富に取り揃えていますが、この朝比奈隆と大阪フィルーハーモニー交響楽団の演奏はベートーヴェンの全集だけでも2種類あり、さらにブラームス(これもいずれ取り上げます)もあるという充実ぶり。いやあ、我が国のクラシック・ファンはやっぱり朝比奈さん好きなのね、と思います。
朝比奈さんも好きなんでしょうが、そのテンポが好き、なんでしょうね、多分。それをうかがわせる演奏がいきなり第1集にあるなんて、もう濃ゆいとしか言いようがありません。
第1集には交響曲第1番と第4番が収録されています。番号順でないのがこの全集の特徴なのですが、では二つあるうちなぜこの全集を選んだのかと言えば、それは実は第九にあります。すでに持っているものなので・・・・・
そうなると、すでに持っている第九が収録されている全集が全部そろうので、この全集を選んだ、ということになります。もう一方は確か抜けているものがあるので選択をしなかったと思います。二つ持っていてもデータになるので別に問題はないんですが、もうラトルの時の苦労はこりごりです。それでも聴きたい!というのなら、止めませんから府中市立図書館で都下4市の市民の方であればぜひとも府中市立図書館で借りて聴いてみてください。
さて、いきなり朝比奈節全開!朝比奈氏と言えば、ゆったりとしたテンポが「朝比奈節」と言われるほど特徴なのですが、この第1番と第4番でも健在。むしろ「熟成」されているとすらいえるのではないでしょうか。特に朝比奈節を感じるのが第4番。40分ほどかかるその演奏は、私のようにクライバーやラトルが好きだと眠くなるくらいに遅い演奏です。とはいえ、大阪フィルハーモニー交響楽団(以下大フィルと称します)を存分に鳴らし、時としては残響を造らずバサッと音を切ったりもしています。それが結構心地よく、クライバーあたりと比べれば6分以上は遅い演奏も、しっかり聴かせるのですから、そりゃあファンはつくわな、と思います。
すでに朝比奈氏は故人なのですが、いまだにファンが多いのもそれが理由かもしれません。意外と朝比奈氏は録音となるといろいろ「仕掛」をする人で、時にはいわゆる「朝比奈節」を捨て去りすらします。この第1番と第4番の演奏では、朝比奈節はそのままで、随所に飽きさせない「仕掛」を作り、速いテンポになれた私でもしっかりと聴かせるのですから、はやり巨匠というべき人であったと言えるでしょう。
朝比奈氏のその「朝比奈節」と言われるテンポは、いうなれば19世紀~20世紀にかけての「大指揮者」たちの系譜を受け継ぐものです。特にこの録音の第4番の「遅さ」は、近年の快速演奏に異を唱えるものでもあると言えるでしょう。勿論、私としてはこの演奏よりはクライバーやラトルの方が好きです。なのですが、聴かせるんですよ、この演奏。説得力あるんです。プロ中のプロだと言っていい指揮者です。いや、昔は阪急の運転士だったんですけどね、朝比奈さん・・・・・
それは朝比奈氏が指揮者を目指した、戦中戦後の時期というものが背景にあると言えるでしょう。大指揮者たちが存命し活躍している時代です。指揮の手本はそういった「大指揮者」たちだったわけですから。20世紀の終わりに、快速演奏も出ている時代に、愚直にゆったりとしたテンポを取り続ける・・・・・それが朝比奈氏の「信念」ともいうべき音楽性だったわけです。その磨き続けた一つの到達点がこのアルバムだとすれば、それには聴きどころもあるというものです。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第1番ハ長調作品21
交響曲第4番変ロ長調作品60
朝比奈隆指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団
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