神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ダニエル・バレンボイムが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集、今回はその第7集を取り上げます。
第7集には第21番「ワルトシュタイン」から第24番までが収録されています。ここでは珍しく4曲収録。いや第6集もそうだったでしょという方もいらっしゃると思いますが、あれは第19番と20番を一つとしている感じがありました。ここでは全く4曲を取り上げているという感じです。
この先の収録の関係でしょうけれども。第24番なんて10分ほどですしねー。とはいえ、ここに収録された4曲とも、バレンボイムは情熱的に弾いています。時に嵐のように、時に饒舌に歌い上げ、見事なピアニズムで聴き手を魅了します。
いずれにしても、フレージングは大切にしているのが魅力的で、だからこそ速いパッセージでも強迫的には聴こえない点が素晴らしい!
構造というよりも構成がしっかり頭に入っているからこそのピアニズムのように私には感じられます。暗譜なのかどうかまでは動画ではないのでわかりませんけれど、いずれにしても構造のポイントはしっかりとつかんでいるからこその演奏であるように思えます。そうじゃないとフレージングを大切にして弾くのは難しいと思います。
確かに全体像をつかんでいるピアニストはあまたいますし、特にこのようにアルバムを出せるだけの実績のあるピアニストだったら全体像をつかんでいないピアニストなどいないと私は思いますが、ではそれが的確あるいは正確であるかと言えば、そうでもないと思います。バレンボイムはその点が的確だと思っており、だからこそ、リズムに任せるだけではない、歌うピアニズムが実現できているのだと思慮されるところです。
その的確な全体像の把握による歌うピアニズムは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタが持つ「ロマンティシズム」を自然と浮かび上がらせます。こうなると、来日公演くらいは行っておいてもよかったかなあという気はしていますが、まあしょうがないです。仕事などいろいろあって、それは難しかったですから。
その代わり、この演奏もそうですがPCにおいてMusic Csnter for PCをWASAPI排他モードでDSEE HXを動作させて聴けば、ピアノを叩く音や、ホールの空気感もくっきりと浮かび上がります。CDでもここまでのデータが入っているということになります。もちろんハイレゾそのものではないですが、少なくとも192kHz/24bitにアップスケーリングしてみればそれなりのデータが入っていることに気が付かされます。元の録音がとてもいいことを示しており、CDでもまだまだいける部分があることを示しています。
最低でも24ビットが普通に再生できている環境がその後構築できていれば、すっとハイレゾへと移っていくのでしょうが・・・・・この辺りは、日本のオーディオメーカーの戦略間違いだったように思うのです。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ・ソナタ第21番ハ長調作品53「ワルトシュタイン」
ピアノ・ソナタ第22番ヘ長調作品54
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。