かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:バレンボイムが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集5

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズで取り上げているダニエル・バレンボイムが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集、今回はその第5集を取り上げます。

この第5集には、第14番「月光」、第15番「田園」、そして第16番の3曲が収録されています。3曲ずつなのはおそらくベルリン国立歌劇場でのライヴ録音だからではないかと思います。今年バレンボイムが来日し、ベートーヴェンのピアノ・ソナタを演奏しましたがその時も3曲ずつだと聞きおよんでいます(プログラムと違う曲を3曲弾いてしまったというハプニング付という・・・)。

第14番「月光」は、オペラ劇場という「広さ」を使って、壮大さを演出し、時に激しさはクライマックスへ。そのあとの2曲はむしろ美しく喜びに満ちた静かな曲。とはいえ、快活さに満ち溢れ、まさに喜びを表現した演奏となっているのが魅力的です。

よく、バレンボイムは構造がよくわかっていると言われますが、わかっていないピアニストなど居るのかという気がしています。わかっているうえで、バレンボイムはフレージングなど歌うことをもっと大切にしている気がします。そのために自らの技巧を使えるだけ使う。それがバレンボイムの演奏スタイルだなあと思います。そしてそれは、見事にタクトを振ってもブレないため、バレンボイムの信念であろうと私は結論付けています。そのあたりは、まだ生きている人なのでインタビューできる機会があればぜひとも訊いてみたいところです。

いや、いるんだよわかっていないのも、と言うかもしれません。おそらく居ることでしょう。しかしそういう人がベートーヴェンのピアノ・ソナタを収録出来たり、さらには演奏してなおかつ全曲チャレンジまでできる人はほんの一握りであり、メディアで聴くという行為において、構造がわかっていないピアニストなどいないだろうと思います。そこまでクラシック音楽の「メディア」に携わる人たちが節抜けではないと確信しています。アマチュアが記念に録音を残すのと訳が違います。一応経済活動なので、利潤を得なければならないからです。そのためには肥えた聴衆に売れないといけないわけです。それなりのピアニストでないと利益を得るのは無理というものです。

そんな利潤を得ることのできるピアニストの一人がバレンボイムだと言えるでしょう。型というか、自らの「スタイル」あるいは「信念」がないとクラシック音楽でベストセラーとなり長く売れ続けることはむずかしいのが現実です。カラヤンが批判されますがカラヤンも信念をもって自らのスタイルがあったからこそ売れたのです。それがたとえ外形的なものであったとしても(しかし、私自身はカラヤンにそれほど外形的なものを感じません)。それがクラシック音楽の現実であり、そして私が喜びに感じる点です。世俗では必ずしも信念があるとかそれがスタイルだとかで売れるわけではないはずですよね?だからこそ、信念を持っている人がきちんと評価されるクラシック音楽に魅力を感じて、聴くわけです。

そんなバレンボイムベートーヴェンを弾くからこそ、まさに「大仏開眼」のように演奏がなるのであろうと、私は思います。つまりは、バレンボイムのこの演奏はまさに「開眼会」である、と言えるように私は思えるのです。音楽に魂を入れる・・・・・それは、大仏に最後目を書き入れる「開眼会」そのものですから。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2「月光」(幻想風ソナタ
ピアノ・ソナタ第15番ニ長調作品28「田園」
ピアノ・ソナタ第16番ト長調作品31-1
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)

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