神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズで取り上げています、アシュケナージが弾くバッハのパルティータ、今回はその第2集をとりあげます。
第2集は後半として、第4番から第6番までが収録されています。主調としては長調が二つですが、実際には途中短調への転調も数多くあり、単なる舞曲からは外れてきている点も散見されます。
その意味では、アシュケナージの「舞曲集だけどクラヴィーア曲」という解釈そして視点は実に正しいと思います。切り替えが明快で、主張もはっきりしているのも魅力的。
そのうえで、タッチが繊細で表情豊か。キツイ打点もないのにどこか存在感があり、太い幹を感じられるのです。これは本当に素晴らしい!
個性とは何ぞや?という問いに対する答えは、簡単な様で実に難しいものですが、少なくとも聴き手としては、その人らしい「歌」を歌っているかだと、私は思っています。その点でアシュケナージには十分個性があり、まさにパフォーマー(表現者)だと言っていいでしょう。
このパルティータなら、近年ならチェンバロで演奏することのほうがスタンダードでしょうが、それをあえてピアノでやる、というのもすでに個性です。もちろん、チェンバロでの演奏も聴きたい私ですけれど。やはり、作品が生まれたときはチェンバロを念頭に作曲したわけなので。しかしそれをあえてピアノで表現してみるというチャレンジ精神が素晴らしいのです。
そしてそのチャレンジの結果は上々だと言えるでしょう。アシュケナージの演奏を聞いていますと、バッハの「組曲」とは、ピアノ伴奏にて踊るのではなく、ピアノを演奏することで表現者が演奏という作業を通して「魂を躍らせる」意味なのではないのか?と思ったりしてしまうのです。こういう演奏こそ、プロの仕事だなあと思います。
さて、アシュケナージが本当に指揮でもこのようなアプローチを本当にしなかったのか・・・・・今後、私も十分に耳を傾けていきたいと思います。すでに引退したアシュケナージ。もう新しい録音が出ることはありません。ですが過去の録音でかれは存分に表現をしているはずなのです。そのメッセージを受け取るも受け取らないも、私たちにかかっていると言えるでしょう。
聴いている音源
6つのパルティ―タ(CD2)
第4番ニ長調BWV828
第5番ト長調BWV829
第6番ホ短調BWV830
ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
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