かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:小澤征爾と水戸室内管弦楽団による第九

今月のお買いもの、令和2(2020)年11月に購入したものをご紹介します。au music storeにて購入しました、小澤征爾指揮水戸室内管弦楽団によるベートーヴェン「第九」です。ハイレゾ96kHz/24bitです。

購入当時、プロジェクト終了が近くて、職場が一つのチームのように感じれらたことから、一足早く購入したように記憶しています。ただ、実はこの演奏、e-onkyoにもありまして、一応避けていたものでもありました。それはセッションとライヴが同居している録音だから、です。

それは録音当時、小澤の体調がすぐれなかったことが原因のようです。そもそもは、2017年10月13・15日に行われた、水戸室内管弦楽団の第100回記念定期演奏会を収録したものなのですが、この時まるで第九の初演のようなやり方になりました。第1楽章と第2楽章をラデク・パボラークが振り、小澤は第3楽章と第4楽章を振る、という形での演奏だったそうなのです。

www.hmv.co.jp

通常、こんなことはしません。よほどのことがないとこのようなことをするはずがないんですね。今回検索してみて、なるほど、と思いました。それで別途セッション録音をしたのか、と。

クラシックのアルバムだと結構この手はやりますが、最近は少なくなってきたように思います。実は昔なら、楽章内でつぎはぎをしていることなど当たり前でしたから。意外とそういうことを知らないで例えば「クレンペラーは民主的だ!カラヤンは・・・・・」とか言う評論も多いんです。いやいや待って、そもそも、昔はつぎはぎよ?それをなるべくコンサートに近づけたのはむしろカラヤンでしょ?って思うのですが・・・・・

この演奏では、実は明らかに第4楽章とそれ以外で違いが見受けられます。熱量の違いと言えば分かりやすいかも。あるいはオケの集中力の違いというか・・・・・

オーディオ的に言えば、第4楽章で明らかに録音音量が上がっているとわかる部分もあります。レーベルはデッカなんですが、いやあ、ある意味すごい録音ですよ、これ。小澤と水戸室(と略します)のコンビなので、特に変態演奏でもないんですが、記録媒体としてはかなり変態だと言っていいでしょう。

それでも、演奏は聴いているうちに引き込まれていきますから、さすが。そもそも水戸室はその設立から小澤征爾がかかわっており、そのためかオケと指揮者との信頼関係、あるいはリスペクトというものが半端ない部分があって、それは演奏にも表れています。第4楽章で熱量が最大となり、よく聴けば弦部でアインザッツがそろっていない部分が・・・・・それでも、この演奏はやはり一度聴いてしまうと引き込まれます。

合唱団もその前にサイトウ・キネンとの演奏で採用した東京オペラシンガーズで、これもまた熱量が高くて、その前のオケの失態を挽回して余りあります。こういう演奏をライヴで聴けた聴衆たちはラッキーだったと思います、ほんと。もちろん当初はいろいろ思うこともあったでしょうが、少なくとも私はこれをライヴで聴いた人たちは幸せだよなあと思います。少なくとも、演奏者たちの「熱量」を感じる演奏に出会えたのですから。

プロオケでアインザッツが合わなかったりとか、そうそうないことです。それが起こって、しかし熱量の高さにより、まるでないかの如くになっている演奏なんて、そうそう出会えません。もちろん、プロオケだって人間です。カラヤン指揮の第九で第3楽章のホルンがひっくり返っているものがあることは有名です。そんなことだって人間だからあるんです。そこをプロはどう立て直すのか・・・・・それを楽しむのも、ライヴの醍醐味です。

ライヴでは第1楽章と第2楽章を別の指揮者が振ったわけですが、それなら同じ指揮者で別途セッション録音をしても何ら問題ない、ということになろうかと思います。むしろ統一性という意味ではその方がいいでしょう。全体としては、その「統一できる喜び」にあふれている演奏だと言っていいでしょう。しかし、ライヴである第3楽章と第4楽章、特に第4楽章の熱量は、私たちにそもそも作品が持っている「連帯の喜び」を表現して余りあると思います。購入当初はなにこれ?と思った演奏ですが、今では好きなものの一つになっています。そもそも、この演奏に目が留まったのは何も小澤征爾と水戸室のコンビだからだけではありません。そもそも水戸室だったから、です。新型コロナウイルス感染拡大を受けて、第九はどのように演奏すべきなのかを、私自身探っていた時期でもありましたから・・・・・

仕事をしながら、プロジェクトはどのようにあるべきか、種子島で愚痴をこぼしながら、先輩や同僚、そして上司や後輩たちと議論をしていたことを思い出します。食堂しか集まれる場所はなく、しかも新型コロナウイルス感染拡大防止のため、大勢で話すこともできないという状況の中で、あーでもないこーでもない、それはこうしたほうがいいよ、など指摘しつつされつつ、という時期に、同時に第九はどのように演奏されるべきなのか?ということを、仕事に引き寄せて考えていた時期でした。東京から離れた南の島だからこそ、囚われなしに考えてみようと仕事をしながら考えていました。そんな時期に、auでも販売しているのを知ったのでした。だからこそ、この演奏を聴いてみよう、買ってみようという気になったのだと思います。

その意味では、あの2か月半は、私にとってはいろんな意味のある2か月半だった、と思います。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品1254「合唱」
三宅理恵(ソプラノ)
藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)
福井 敬(テノール
マルクス・アイヒェ(バリトン
東京オペラシンガーズ
小澤征爾指揮
水戸室内管弦楽団
(DECCA 4834431 96kHz/24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。