かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:團伊玖磨 交響曲第6番

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリをご紹介します。今回は團伊玖磨交響曲第6番を収録したアルバムを取り上げます。

三人の会で有名な團伊玖磨。あるいは、オペラ「夕鶴」で知っているという人も多いかと思います。確かこのブログでは稲見里恵女史が主演したオペラ「夕鶴」と、歌曲集「マレー乙女の歌へる」をとりあげたことがあったかと思います。

そのため、私の中では特段拒否することもない作曲家なのですが、国内の評価は決して高いものではありません。團氏が名家の出身ということもあるのかもしれませんが、そんなことはむしろ民主主義国であるからこそ関係ないはずです。実際、團氏は同じく名家出身のリベラル芥川也寸志氏と共に「三人の会」を組織していますし。

「三人の会」はその構成メンバーからして、当時は意欲的な活動だったと私は想像しています。なぜなら、そのメンバーは團伊玖磨芥川也寸志黛敏郎の三人ですから。うち黛氏はかなーり右の人。團伊玖磨が中道、そして芥川がやや左。政治思想では対立してしまいかねない三人が、クラシックという芸術で一つの団体を構成して、創作発表をする場を作る・・・・・戦後日本の理想像としていたのではないでしょうか。

そんな團氏が、自民党系の青年会議所の一つである、広島青年会議所の平和問題委員会より依頼を受けて作曲したのが、ここに収録されている交響曲第6番「HIROSHIMA」です。

ja.wikipedia.org

欧州の作曲家のような、悲劇的な部分はあまりなくて、むしろ作品は元になった詩の内容から、広島という都市が戦後復興してきたことの賛美になっています。しかし、原爆だとか戦争というものがそこに無いのかと言えばそんなことはなく、とても日本的な旋律、そして篠笛など和楽器も編成の中に入っているにもかかわらず、じつは交響曲としてはフランス式を取ります。この作品、じつは3楽章であるということが、いろんなレビューを見ても触れられていないのは実に残念です。

3楽章ということは、その根底メッセージは「自由」である、ということなのです。これを受け取れない、ある意味政治的プロパガンダを狙ったレビューが多くネット上には存在することを意味します。三楽章形式なのですから、團伊玖磨がそこに込めたメッセージは自由だった、ということになります。そしてそれは、平和へとつながる・・・・・自由な時代の、広島の復興。それがメインテーマであると言っていいでしょう。

そこに、自民党系というところからの依頼というテーマにそくすように日本的なものも入れていく・・・・・・絶妙のバランスです。ですがそれゆえにメッセージとしては多少ぼやけてもいますが、真に芸術を愛し、クラシック音楽の歴史を知っている人であれば、理解するのにさほど時間はかかりません。泣くほど感動はしませんが、じんわりとしたものが自分の中に湧き上がってくるように思います。

そして、そんな作品を指揮するのが、じつは作曲者自身、なのです。では、オケは日本なのかと思いきや・・・・・ウィーン交響楽団、なのですよねえ。保守系のオケだって日本にはありますし、プロがやらなければアマチュアがやってもいいともいますが、コンサートピースに乗りませんね。そんな作品を、オーストリアという左翼が強い国のオケでやってしまったんですよ。これ、快挙と言っていいのではないでしょうか(正直、これを誇りを思えない保守の方は正直保守じゃないんじゃないかとすら思っています)。

しかも、じつはこれ、調べてみると團伊玖磨交響曲全集からのものなんですね。借りたときには気が付かなかったです。で、しかも旧デッカ、です。もうすこし保守界隈で話題にしてあげてもいいんじゃない?と思います。なんか左翼叩きにご執心で、こういった保守系の優れた作品をとりあげることがおざなりになっているのは非常に残念で、どんな気持ちで團氏はウィーン響を振っていたのかなあと思います。私が持っている中ではチャイコフスキーのピアノ協奏曲の演奏オケであるウィーン響が、実に明確にそして豊潤に日本の旋律を演奏するのを聴きますと、やはり自分は日本人である、と確信します。ああ、こういうサウンドを想像して團氏は書いていたんだなとすら思います。

そろそろ、左右の対立など不毛なことはやめて、真に芸術に向き合い、いいものは左右共に顕彰していく時期になっているように思うのはわたしだけなのでしょうか。そもそも、保守が團伊玖磨交響曲全集が出ていることを誇りに思わず、またそのオケが日本のプロオケでないことを恥じないなど、保守なの?と思うのですが・・・・・それならまだ、左翼のほうがましなのですがね。

なお、横笛とある赤尾三千子は、篠笛など和楽器の横笛の第一人者。初演の広島響とでも共演しているソリスト。なので編成にある篠笛や能管は、彼女一人で持ち替えでやっていると思います。

 


聴いている音源
團伊玖磨作曲
交響曲第6番《Hiroshima》
エドマンド・プランデン(詩)
アナ・プサール(ソプラノ)
尾三千子(横笛)
團伊玖磨指揮
ウィーン交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。