かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:芥川也寸志 エローラ交響曲他

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回は芥川也寸志エローラ交響曲他を集録したアルバムを御紹介します。もともとは、ナクソスの「日本作曲家撰集」の内の一つです。

まあ、ナクソスのそのシリーズに芥川が収録されるのは当然ではある訳なんですが、いまどきの若い人だと、芥川也寸志って誰?教科書で芥川龍之介は読んだけど?って人が大勢いるのではないかって思いますが、その龍之介の息子が也寸志なんです。

芥川也寸志
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%A5%E5%B7%9D%E4%B9%9F%E5%AF%B8%E5%BF%97

私は知ったのは、NHKの「音楽の広場」でした。時として指揮もする也寸志氏は颯爽としていたのが印象に残っています。作品も快活なものが多いのは、也寸志氏の性格が音楽に反映されているからなのかもしれません。

このアルバムには、也寸志氏の代表作とも言えるものが並んでいるのですが、その中でも異色なのが、エローラ交響曲です。

エローラ交響曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%A9%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2

なぜ芥川がエロティシズム?って思いますが、ウィキの生い立ちを見れば一目瞭然で、そりゃあ、父が偉大な文豪であれば、屈折するからエロティシズムには興味を持つでしょ?って思います。AVがなかった時代に青春時代を送った(まあ、ロマンポルノはあったでしょうが)芥川とすれば、性の問題に興味を持つのは、臨床心理学の側面から言えばごく自然かなって思います。

快活さだって、ある意味モーツァルトの平明さ(屈折の裏返し)と相通じる面があるわけですし、正に、現代日本だからこそ、もっと聴かれていい作品ばかりがここには並んでいると思いますが・・・・・

さて、そのエローラ交響曲は、スクリャービンのような神秘主義ではなく、もっとどこか引いている感じなのです。単にエロティシズムとだけ捉えるのではなく、性が人間の活動の一つだと位置付けたうえで、それが織りなす万華鏡を、寺院からインスピレーションを受けて作品となったものではないかという気が私はしています。この作品の解説はとても難しいと思いますが、オケと指揮者はよく譜面を読み込んで、そこに生命を宿させているなと思います。

また、有名な「交響三章」は実は東京音楽学校在学中の作品で、多分に新古典主義音楽の影響下にある作品だと言えます。

交響三章 (芥川也寸志)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E4%B8%89%E7%AB%A0_(%E8%8A%A5%E5%B7%9D%E4%B9%9F%E5%AF%B8%E5%BF%97)

こういった作品を聴きますと、芥川の誇りや自尊心がいずこにあったのかが、ぼんやりと見えてきます。ソ連に行ったから左翼だとか言うのは早計です。しっかりと軸を持った、むしろ保守的な作曲家というスタンスを貫き通しつつ、ソ連の音楽も評価したという、正にリベラルな人だったと言えるでしょう。1曲目の「オーケストラのためのラプソディ」も生き生きとした作品ですが、この3曲の中では最も新しい作品で1977年のもの。ちょうど「音楽の広場」が始まったあたり。躍動する音楽は、どこかでノリノリになっている自分を見出します。

このアルバムも指揮は湯浅卓雄。じつはナクソスでは常連ですが、日本のリアルな音楽シーンではあまり名前が載らないのですよね。でも、このアルバムではエローラ交響曲では普段はダイナミックレンジを比較的広くとるため場合によってはダイナミックさが少ないことも多い演奏が、ダイナミックレンジギリギリくらいまで収録されており、作品がもつ野性的な生命力が存分に表現されています。オケはニュージーランド響。日本にもこれだけの作曲家がいたのか!という喜びが演奏からひしひしと伝わってくるんです。これは日本人としてはとても嬉しいことだなあって思います。日本人自身もなかなか自国の作曲家を評価しない傾向にあることを鑑みれば、この共感の嵐は本当にうれしいです。

是非とも湯浅氏には、日本人作曲家の作品を海外で取り上げ続けてほしいなと思うのと当時に、日本の音楽界も、もっと日本人作曲家をコンサートピースとして取り上げて欲しいって思います。知らないだけなんです、聴衆が。ナクソスが売れる時代ですから、思い切って日本人作曲家を聴く夕べとか、テーマを決めたコンサートもいいかと思います。初めは実入りが少ないかもしれませんが、ナクソス好きな人ならば必ず聴きに来るはずです。今は本当にいい時代になったと思いますよ。事務局。がんばれ!




聴いている音源
芥川也寸志作曲
オーケストラのためのラプソディ(1971)
エローラ交響曲(1958)
交響三章(1948)
湯浅卓雄指揮
ニュージーランド交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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