神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はフォーレのレクイエムをピアノ独奏用に編曲したものをご紹介します。
なぜか、合唱を伴う作品はピアノ独奏用に編曲されることが多いのですが、このフォーレのレクイエムもそんな作品の一つだったのか!と思い借りたことが思い出されます。
この編曲は、演奏しているナウモフによるものです。全体としてはいい雰囲気に仕上がっているのではないかとは思うのですが・・・・・
たった一つだけ、物足りないのが、リベラ・メ、です。これ、原曲をよく聴きますと、通奏低音はまるで心臓の音を表現しているかのように、ドンドン、ドッドンドンという感じでリズムを刻んでいます。それがすっかりどこか行ってしまっているんですよねえ。
演奏自体は申し分ないものだと思いますけれど、この編曲はねえ・・・・・聴いていてちょっと絶句でした。そこ、フォーレの内面性でもあるはずなのになあ、と。
ピアニストに声楽経験がないのかもしれません。これ、歌った経験があると、無視できないリズムなんです。なぜなら、このリズムに声楽が乗っているからです。ソリストのバスも、そして合唱団も、です。ある視点では人の慟哭、そしてある視点では人の心臓の音、であるだろうと私は思っていますが、おそらくこれは当たらずも遠からずだと思っています。
そんな大切な部分を、まるでごまかすかのようにしてしまう・・・・・多分、声楽までひっくるめて、ピアノ一台で何とかしようということなのでしょうね。その意欲は素晴らしいと思いますが、この編曲は必ずしも私が評価するものではありません。
今までいくつかの宗教合唱曲の編曲を聞いてきましたが、これほどがっかりするものはなかったように思います。ほぼ常に前向きの評価をする私が多少辛口なのですから、その無茶ぶりを想像していただけると嬉しいです。
ほんとに、リベラ・メ以外はいいんですけれど・・・・・それに、ほかのフォーレのピアノ曲の演奏も実に誠実でいいですしね。それだけに、リベラ・メの編曲は非常に残念です。
聴いている音源
ガブリエル・フォーレ作曲
レクイエム 作品48(ピアノ独奏版、編曲:エミール・ナウモフ)
4つの夜想曲
第1番変ホ長調作品33
第6番変ニ長調作品63
第7番嬰ハ短調作品74
第13番ロ短調作品119
三つの歌曲(ピアノ独奏版、編曲:エミール・ナウモフ)
「月の光」作品46-2
「秋」作品18-3
「ゆりかご」作品23-1
エミール・ナウモフ(ピアノ)
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