神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はイギリス近代の宗教曲を収録したアルバムをご紹介します。
イギリス近代の作曲家と言って、だれを思い出すでしょうか?最も有名なのは、ブリテンかなと思います。しかしこのブログでは彼だけではなく、幾人かの作曲家を取り上げています。
そのうち、このアルバムで収録されている作曲家は、ヴォーン・ウィリアムズとフィンジです。ともに管弦楽作品をご紹介していますが、たいていクラシックの作曲家というのは、宗教曲も手掛けていることが多いのです。この二人もご多分に漏れず、ということになりましょう。
そして、初出のバックス。彼もイギリス近代の作曲家であり、最近では我が国での知名度も上がってきた作曲家です。
実は、これらの作曲家の共通点は、大学合唱団での知名度の高さ、なのです。つまり、今どきの学生が好んで聴いている作曲家たち、だといえます。そして、こういった作曲家をとりあげるか否かは、今やコンサートが開けるか否かまで、新型コロナウイルス蔓延によって追い込まれた、ともいえるでしょう。
というのは、こういった作曲家の作品は大抵、小編成であることが多いから、なのです。特にここに収録されている作品はすべて、アカペラです。つまりオーケストラなし。
それは何を意味するかと言えば、コンサートにおける合唱団の配置において、ソーシャル・ディスタンスが取れる、ということを意味します。飛沫感染の対策さえすれば、コンサートが開ける編成だ、ということです。
そのうえで、若い人が好む作曲家、作品を選択する・・・・・それは確実に、コンサートが今後開けるかどうかの分水嶺となるでしょう。
これらイギリスの作曲家のうち、特に特色があるのがフィンジとバックスだと言っていいでしょう。ヴォーン・ウィリアムズのト短調ミサは、時代的に後期ロマン派に近いがゆえに、和声が保守的な感じ。しかしフィンジとバックスは、まるでポップスのような印象すらある中で、神々しさもあるというもの。神の存在の近さを感じます。
本当は、歌詞までも分かるといいのですが、わかるのはミサだけです。後は全くわからないwwww
けれども、聴きますとどこかホッとする部分もあるのは事実で、癒し系と言われるのも納得だなあと思います。そんなものが選ばれるなんて!という批判をよく目にしますが、そういう時代である、ということが言えるかと思います。もちろんそこには問題点も多々包有されていますが、メリットを私たちが受け取っているケースもあり、そこは慎重に考えるのが妥当だと私は考えます。
ですので、これらの作品に対して批判的に見ることはしません。軽めかもしれませんが、そこにまた内面性もあるわけですし、複雑な様相をどう楽しむのかこそ、クラシック音楽を聴くまた楽しみでもある、と思うからです。
ヴォーン・ウィリアムズを振るのはウィルコックス。この人イギリス系の作曲家の作品を降らせるとぴか一ですね。作品の存在感が思いっきり増すんです。フィンジとバックスはクローベリーというイギリスの指揮者で、あまり私が知らない指揮者ですが、奇をてらわずに作品の精神を浮かび上がらせる解釈は私好み。そして合唱団はいずれもケンブリッジ・キングスカレッジ聖歌隊。この聖歌隊もイギリス人作品を歌わせるとぴか一です。実に鉄板の組み合わせ。
それで悪かろうはずないです、正直。ただ、作品たちが作品たちだけに、ものすごい緊張感だったりとか、酔いだとかは期待しないほうがいいです。じんわりと感動が押し寄せ、湧き上がってくるという感じ。作品が持つ静謐さを、たっぷりと味わうと、多分2時間くらいは聴くのを終われないと思います。その意味では、中毒性に十分ご注意を・・・・・
聴いている音源
レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ作曲
ミサ曲ト短調
フィンジとバックス
祝典讃歌『見よ、満ち足りた最後の生贄』作品26(ジェラルド・フィンジ作曲)
マーテル・オラ・フィリウム(アーノルト・バックス)
3つの賛歌第2番「神は召された」作品27-2(フィンジ)
I sing of a maiden that is makeless(バックス)
This Worldes Joie(バックス)
マニフィカート(フィンジ)
ジョン・イートン(トレブレ)
グラハム・グリーン(トレブレ)
ブルース・ブリス(トレブレ)
ナイジェル・ペーリン(アルト)
ロビン・ドヴェトン(テノール)
ジョン・ボーエン(テノール)
デイヴィッド・ファン・アッシュ(バス)
ロナルド・ロバートソン(バス)
サー・デイヴィッド・ウィルコックス指揮
ステファン・クローベリー指揮
ケンブリッジ・キングスカレッジ聖歌隊(オルガン:リチャード・ファーネス)
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。