かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:ヴォーン=ウィリアムズの管弦楽作品集

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はヴォーン=ウィリアムズの管弦楽作品集を取りげます。

最近日本でも認知度が上がっているヴォーン=ウィリアムズですが、そもそもはシンフォニストで、このブログでも幾度か交響曲を取り上げているかと思います。

けれども、ヴォーン=ウィリアムズといえば、管弦楽作品で知ったという人も多いのではないでしょうか。例えば、このアルバムでは4曲目に入っている、「グリーン・スリーブスによる幻想曲」です。

このアルバムでは、そういった管弦楽作品が取り上げたれています。美しいとか外面的なことで好まれるヴォーン=ウィリアムスですが、実は構造的にはとても保守的な人で、かつ時代にも影響されている人だということが、ここに集収録されている管弦楽作品を聴きますとよくわかります。

その典型が、「富める人とラザロ」の五つの意版、でしょう。この曲だけでエントリを上げているブログも多いので、ぜひとも検索してそれらも読んで欲しいなって思いますが、ただ、この作品は本当にその背景が複雑です。それでも端的に言えば、19世紀〜20世紀にかけての社会の影響を受けていると言えるかと思います。

クラシックの歴史においてその時期は民謡収集の時代です。そのうえで新古典主義音楽の勃興。その2つの影響を強く受けているのがこの「「富める人とラザロ」の五つの意版」なのです。

「富める人とラザロ」はキリスト教徒の方ならお馴染みの逸話で、富める人が天国に行ったら優遇されなかったというものです。これを持って富が悪いものなのか!違うだろ!というように私達日本人は捉えて批判しがちなんですが、そうではなくて、富の独占をいましているってことなんです。それは自己中心的ではないですか、と。

もちろん、資本主義において富めるものと貧しいものが出るのは当然ですが、その差を人として放っておいていいのかということを問うている逸話なんです。それが資本主義など無縁の時代であれば、共同体を守るためには必要な逸話だったわけです。だからこそその逸話を歌った民謡がイギリス各地に残された。その代表的な5つを使って一つのコラージュにしたのがこの「「富める人とラザロ」の五つの意版」なのです。

美しい旋律の影に、意外と見落とされる「語法」というものが、ヴォーン=ウィリアムズにはあるなと私は思っています。その典型がこの「「富める人とラザロ」の五つの意版」です。聴いたあと、そういえば私は富を独占していないかなあと、共同体感覚を思い起こさせる・・・・・それがヴォーン=ウィリアムズの狙いだとすれば、この作品はすばらしいと思います。人は批判にそれほど強い生き物ではないからです。じんわりと感動することでしか気づかない部分だってあります(それは時としては危険でもありますが)。

実はヴォーン=ウィリアムズにも批判精神があるんだなと思わせるのが「「富める人とラザロ」の五つの意版」だとすれば、それ以外はすおなな作品が並んでいると思います。1曲めの「トマス・タリスの主題による幻想曲」はドビュッシーがフランス・バロックに範をとった流れをイギリス人らしく踏襲したものだと言えますし、3曲めの「ひばりは昇る」は創作旋律ですがイギリス民謡的になっている点でブラームスハンガリー舞曲の影響が見て取れます。

こういったいろんな影響をイギリス人として咀嚼した作品がずらりと並んでいるのがこのアルバムの特徴であり、それはひいてはヴォーン=ウィリアムズの作品の一つの特徴だと言えるでしょう。影響は受けるが真似はしない・・・・・そんなジョンブル魂をどこかに感じます。

演奏するはワーズワース指揮ニュー・クィーンズ・ホール管弦楽団。決して有名なオケとは言えませんがしかしひたすら美しく演奏してもなんら嫌味がないのがいいですね。時としてそれは外面的とか批判を受けそうな演奏ですが、私はヴォーン=ウィリアムズの作品はひたすら美しく演奏していいと思います。その美しさにこそ隠されたメッセージがあると私は思うからです。美しく演奏すればその様式も浮かび上がるのがヴォーン=ウィリアムズ作品の不思議な魅力です。ぼやかさずかつどこまで美しく演奏できるかが大事だと思いますがそこが絶品!各パートが浮かび上がりつつ全体としての美しさがあるので、ヴォーン=ウィリアムズのメッセージが届きやすいのではないかと思います。

まさしく私が指摘する「美しい旋律の影に、意外と見落とされる「語法」」がしっかりと演奏で表現されていると思います。




聴いている音源
レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ作曲
トマス・タリスの主題による幻想曲
ノーフォーク・ラプソディ第1番
ひばりは昇る
グリーン・スリーヴズによる幻想曲
「富める人とラザロ」の五つの意版
沼沢地方にて〜交響的印象
バリー・ワーズワース指揮
ニュー・クィーンズ・ホール管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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