かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:スク 交響曲ホ長調他

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はスクの交響曲ホ長調他を取り上げます。ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団他の演奏です。たしか元音源はデノンだったと思います。

スクという作曲家はあまり聴いたことがない方も多いかもしれませんが、ヨセフ・スクと書けば、あれ、それって、ヴァイオリニストのスークですか?という人は多いでしょう。実は、そのヴァイオリニストのスークと同姓同名の作曲家が、そのスークの祖父である、今回取り上げますヨセフ・スクなのです。

ヨセフ・スク (作曲家)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%82%BB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AF_(%E4%BD%9C%E6%9B%B2%E5%AE%B6)

ドヴォルザークの直系の弟子とも言える人なので、作品としてはドヴォルザークの色が濃いこともあります。今回取り上げます交響曲と幻想曲も、師であるドヴォルザークの色が濃い作品です。

特に、1曲目の交響曲ホ長調は、リズムや和音にドヴォルザークの影響を色濃く感じる部分が多く、一見すればドヴォルザークの作品なのか?と思ってしまうくらいですが、スクの作品です。一方、幻想曲はもう少し師の影響は薄くなりますが、やはりドヴォルザークの影響は強いと言えるでしょう。

だからと言って、つまらないのかと言えば、そんなことはないんです。ドヴォルザークの色が濃いのに、何故か聴き飽きないですし、また決してドヴォルザークだとも思わないのです。そのあたりに、この初期作品にはスクが独自色を出そうとしている部分が多いように思われます。特に幻想曲の悲劇的な部分には・・・・・

交響曲は1897年〜99年にかけて作曲されましたし、幻想曲は1902年〜3年と、作曲の初期の作品ですが、二つで色が若干異なるのが面白いところです。おそらく、それはスクの生涯と密接にかかわっているように思われます。交響曲ホ長調は、ドヴォルザークの娘オルチカと結婚した時期に作曲されたものですし、幻想曲は逆に、愛妻オルチカが死ぬ予感を感じながら作曲されたというものだからです。実際に、オルチカは幻想曲初演の翌年、1905年にこの世を去ります。

人は、苦しみを経験すると霊的に深くなるように思いますが、まさにスクにとってはその霊性の差が、作品の差に表れているのでしょう。だからと言って私は交響曲がだめで幻想曲がいいと言っているのではなくて、交響曲には若き溌剌とした、師への素直なリスペクトが感じられて素晴らしいですし、幻想曲にはその師へのリスペクトの上に、自分自身の不安と向き合うスクの姿が重なるのでそれが素晴らしいと言いたいのです。

しかも、幻想曲は協奏曲のカテゴリに入れられることもありますが、それは全体として伝統的な協奏曲の様式が連結されているとも言えるからです。しかもそれは循環形式を伴っており、リストなどの影響も受けている作品だと言えます。実に作曲家として様々な研究の上で作られた作品だと言え、決して師ドヴォルザークの二番煎じになるまいという姿が見て取れるのが、微笑ましいのです。

そういった祖父の姿を自身に投影しているのでしょうか、幻想曲のソリストである、孫のスークは、生き生きと作品を歌い上げています。ノイマンドヴォルザークを振らせればぴか一ですが、スクでも全く問題ないですし、それはまた一方でそれだけ作品にまだドヴォルザークの影響が強いことを示してもいます。ノイマンは決して気をてらってもいませんので・・・・・

チェコ・フィルも、本当の祖国の作曲家の作品は得意なのだなあと思います。気を張っているのではなくて、自然体の演奏なのにこちらには生き生きとしたものとして聴こえてきます。自然と体が動いているのでしょうね。フリアントなども多用している作品ですので、それは当然とも言えますが、此方もただ聴いているだけなのに、なぜか体が動いてきます。

こういった生命力あふれる演奏を聴けるのは幸せですが、チェコの作曲家はドヴォルザークだけじゃないぞ、ということをしっかりと教えてくれる演奏でもあります。勿論、このブログではすでにチェコの作曲家はドヴォルザークスメタナだけではないことを何度もエントリでご紹介していますが、今度はスクを取り上げることができたことは、幸せなことだと思います。




聴いている音源
ヨゼフ・スク作曲
交響曲ホ長調作品14
ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲ト短調作品24
ヨゼフ・スーク(ヴァイオリン)
ヴァーツラフ・ノイマン指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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