かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ルクーのソナタとシューベルトのアルペジョーネ・ソナタ

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回は珍しい作曲家のソナタと有名作曲家の珍しいソナタというカップリングのアルバムをご紹介します。

珍しい作曲家とは、ルクー。そして有名作曲家というのはシューベルトです。その二人の作品を並べているこのアルバムですが、ヘビロテしても本当に聴いていて感情が高まってくるのがわかります。

ルクーは、19世紀ロマン派の時代に活躍した作曲家ですが、衛生状態がまだよくない時代ゆえに、腸チフスで若くして夭折した作曲家です。情熱的な作品を残したと言いますが、まさにここに収録されているチェロ・ソナタはルクーの精神が反映されている作品だといえるでしょう。

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いや、ほんと聴いていて、惜しい才能を亡くしたものだと思います。曲の冒頭など、もしかすると20世紀?と思わんばかりの和声を展開しつつも、ロマン派の香りたっぷりの旋律で魅了します。それもそのはず、1893年の作品です。イザイのために作品を書くくらいですから、さすが情熱的だと思いますが、もっと多くの作品が聴きたかったと思わせる内容です。

そして、シューベルト。彼も健康を害して亡くなったことは知られていますが、今回取り上げるアルペジョーネ・ソナタもそんな時期の1824年の作品です。え、まだベートーヴェン存命なんじゃないの?というア・ナ・タ。そうです、まだベートーヴェンは生きています。まだまだ創作意欲旺盛な時期に、シューベルトはロマン派の作品を紡いでいました。

シューベルトがこのアルペジョーネ・ソナタを作曲した時代、楽器は大きく発展しようとしていました。意外に思うかもしれませんが、音楽史的には古典派からロマン派というのは、楽器の発達史上転換点です。チェンバロからフォルテ・ピアノが生まれ、やがてモダンピアノへと発達していきますし、ホルンもナチュラルホルンにバルブが付くなど、楽器は様変わりしていく時代に当たります。

そんな時代に生まれた楽器が、アルペジョーネです。チェロに似た楽器で、同じく弓で弾きますので、チェリストが演奏することも多いようですが、実はこの楽器、現代に受け継がれていません。こういう新しくできたんだけどその後すたれたという楽器は古典派~前期ロマン派にかけては結構あり、アルペジョーネもそのひとつです。そのため今では、復元楽器をチェリストが弾くというケースが多いようですが、この録音ではどうなっているのかはわかりません。ただ、これはあくまでも私の推測ですが、下記ウィキの記述からすれば、復元楽器をチェリストが弾いているという可能性が最も高いと思います。というのも、このアルバムではチェリストとピアニストしかソリストがクレジットされていないからです。

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ですから、おそらく、チェリストが復元楽器を演奏しているのだろうと推測するわけなんです。そのチェリストはマリオ・ブルネロ。チェロだろうがアルペジョーネだろうが、本当に内に秘めた情熱という、二人の作曲家に共通するような内面性を抉り出し、歌い上げるので、私の涙腺が公開寸前。そこまで歌うのやめて!と思うくらいですが、これでもか!と悲しくそして情熱的に歌い上げています。ピアニストもそれをしっかり受けて歌いまくり、すみません、泣いてもいいですか?

二人とも、変わりゆく世の中でまだまだ活躍したかったはずなのに・・・・・という、二人のソリストの二人の作曲家への共感のようなものが、演奏からはあふれ出ています。それを汲み取る私自身も、どこか共感しているように思える演奏です。今日は泣かせてください・・・・・

 


聴いている音源
ギョーム・ルクー作曲
チェロ・ソナタヘ長調
フランツ・シューベルト作曲
アルペジョーネ・ソナタ イ短調D.821
マリオ・ブルネロ(チェロ)
アンドレア・ルケシーニ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。