かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:観客のいない音楽会 Live from MUZA !ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集 第155回

今月のお買いもの、令和2(2020)年3月に購入したものをご紹介しています。今回もe-onkyoネットストアにて購入しました、東京交響楽団の第155回名曲全集の公演を収録したアルバムをご紹介します。

収録されたのは、3月8日。つまり、新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になり、演奏会などが次々と中止あるいは延期になった時期です。このアルバムもそもそもは東響の第155回名曲全集としてコンサートのみで演奏される予定でした。

それがコンサートができなくなり、窮余の策として行ったのが「無観客配信」でした。その配信の中で、その配信音源をハイレゾで売り出す、とあったので購入したのがこの音源です。

そもそもは、タイムシフトで聴いたこのモーツァルト・マチネがきっかけです。

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この時に、定期演奏会がと述べているのが、このアルバムのことなのです。正確には定期演奏会ではなくて名曲全集ですけれども。

この第155回は、とても魅力的な、東響さんらしいラインナップが並んでいます。オール・フランス・プログラム。

ドビュッシー 牧神の午後の前奏曲
ラヴェル ピアノ協奏曲
サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」

え、なんで東響さんらしいって?日本のプロオケって、大体ドイツものになってしまうんですよ。で、こんなフランスもののプログラムってたいていアマチュア・オケのプログラムなんです。しかしそれを、プロオケがやってしまうんです。アマオケを聴きに行っていた皆様、これがプロオケだったらなあって思ったこと、ありません?

それを、東響さんが実現してくれたんです。「オルガン付き」のオルガニストは、その前の月に聴きに行ったダスビの定期でオルガンを弾いた大木麻里女史。ですがこのアルバムで本当に素晴らしいソリストは、DLするとデータで一番先頭に出る、黒沼香恋女史です。2017年のミューザ・ソリスト・オーディションの合格者です。

そんな若手じゃあ期待できないよね、という向きもあるかと思いますが、ぜひ一度聞いてごらんくだされ。そのワクワクする生きの良さに、ほれぼれすると思うんですよ、ええ。わたしが持っている某有名ソリストのものと比べても全くそん色ないっどころか、多分超えています。それだけの演奏を、日本のオケがするんですよ?このままつぶしていいんですかマヂで・・・・・

前半のアンコールで予定していたであろう、ドビュッシーの「ベルガマスク組曲」からの「月の光」。ベタですが、しかし幻想的かつ感情がこもるその演奏は実にいい感じで酔える素晴らしいもの。オケのみの「牧神」もその不思議性が存分に味わえますし、どこをとっても素晴らしい!

となると、「オルガン付き」はとても期待を寄せるじゃああーりませんか!期待にたがわずいい演奏・・・・・ではあるんです。しかし、オルガンがいまいちだなあと、図書館で借りてリッピングしてあるCD音質のものに比べると、オルガンの解放感と、ちょっと長くて不要に長いように思われる第4部のゲネラル・パウゼがどこか鼻につくんです。

決して下手ではありませんし、日本のオケの演奏では最高峰ではないかと思われます。しかし、どこか解釈が単調であるように感じられたんです。確かにサン=サーンスなので複雑性はないかもしれませんが、もう少しどこか多重連立方程式を解くような部分であるような気がするんですよねえ。

ただ、録音は本当に素晴らしいもの!素晴らしすぎて、聴いた合唱団時代の友人は「悲しみが聴こえる」と表現したんです。ホールの残響とそのサウンドが本当に素晴らしいのですが。それは空席だからだ、というんですね。本当は聴衆を迎えて演奏したかったはずだ、と。私はその響きよりも、たとえば「オルガン付き」でのオルガンなど、微妙な「解釈」に出ていたような気がするんですね。ネット配信に鳴れていないというか・・・・・そのあたりは、アマチュアながらカラーフィルハーモニックさんのほうが若いだけ慣れていたような気がします。

おなじ東響さんでも、モーツァルト・マチネはほんとに素晴らしかったわけなのですから。あの演奏会では、試みとしてニコニコ動画とコラボレーションし、聴衆の反応がリアルタイムでわかるようになっていましたが、そんな工夫もあるとよかったのかもしれません。今後、ネット配信をする場合、どんなコンテンツにするのかも、重要なのではないかと思います。会場に観客がいなくても、いかにしてオケのモチベーションを維持するのか。これはとても重要だと思いますし、また「生音がききたい!レスポンスしたい!」と思っている聴衆たちとどのようにつながるかという点でも、大切だと思います。

そんなハンデがある中での、熱のこもったオケの演奏は称賛に値すると思います。この録音がアフターコロナが訪れたとき、真に評価される演奏のように思われます。

 


聴いているハイレゾ
ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集 第155回
クロード・ドビュッシー作曲
牧神の午後の前奏曲
モーリス・ラヴェル作曲
ピアノ協奏曲ト長調
カミーユ・サン=サーンス作曲
交響曲第3番ハ短調作品78「オルガン付き」
黒沼香恋(ピアノ)
大木麻里(パイプオルガン)
大友直人指揮
東京交響楽団
(Exton octv00108 96kHz/24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。