かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:シュニトケ 交響曲第2番「聖フローリアン」

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリをご紹介します。今回はシュニトケ交響曲第2番「聖フローリアン」を収録したアルバムをご紹介します。

以前、同じコーナーで小金井市立図書館のライブラリである、ヴァイオリン協奏曲のをとりあげているかと思いますが・・・・・

ykanchan.hatenablog.com

この「聖フローリアン」も同じように、よくよく耳を傾けていけば、その多様性に驚くばかりです。それよりも、この作品はシュニトケがその場所を訪れたことで誤解を受けるように思います。確かにシュニトケは聖フローリアン修道院を訪れており、おそらくその場所がブルックナーとゆかりがあるとは認識していたと思いますが、しかしこの作品をよく聴きますと、それは間違いであると気付かされます。何故ならこの交響曲には合唱がありますが、その合唱の歌詞はミサ通常文だからです。そのうえでこの作品は6つの楽章あるいは部分に分かれており、原則的にそれはミサ曲の6つの部分、キリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、ァニュス・デイとされているからです。

そして作曲は1979年。まだまだソ連ではキリスト教が弾圧され続けていた時代に、かれはカトリック信者だったということを思い起こす必要があります。そもそもブルックナーゆかりの「聖フローリアン修道院」は、ローマ帝国時代にドイツへと派遣された軍司令官でキリスト教徒だった、フロリアヌスを祀った修道院なのです。

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第1番と第2番とで違うだとか、第4番と第2番とは正反対だとか言われますが、それは作風の話で、私は通底するものは共通であると考えます。シュニトケにとって、聖フローリアンは自分自身であり、重ね合わせたとすれば、この交響曲がなぜミサ通常文を使い、そのうえでセリー主義のような不協和音を使っているのか、そのメッセージは明快であるという結論に達します。

そう、苦しみの代弁なのです。だからこそ、時折衝動的ともいえる音が鳴り響きますし、ミサ通常文を使っている割にはまるでレクイエムのような音楽にもなっている、というわけです。どうも後期ロマン派までしか聞かない人にはこの辺りが理解できないようです。それってそういう人にありがちな共産主義批判をしながら、やっていることはソビエト共産党とおなじってことなんですが・・・・・・

私には、この作品がシュニトケの苦しみの代弁のようにしか聴こえないのです。それは多分、私自身も今もなお、生きづらさを感じ苦しんでいるからだろうと思います。この新型コロナウイルス蔓延のこの時期に再度聴きなおし、本来のメッセージにたどり着けたのは幸せだろうと思います。

演奏は指揮がロジェストヴェンスキー。オケはいわゆるレニングラード・フィルで、このアルバムでは現代風にサンクトペテルブルクフィルハーモニー交響楽団と記載されています。雄弁なオケの一方、ソリストと合唱はそれほど歌い上げるという感じではなくむしろ語り掛けるという感じもいいです。そのうえで、合唱がソ連文化省室内合唱団というのが珍しい。その時期のシュニトケは、同国の作曲家たちからは疎んじられる存在だったわけです。ですがこの合唱はソ連文化省室内合唱団・・・・・1970年代から80年代にかけてのソ連を語るときには、要注意なのではないかと思う次第です。それはわたしたちが現在、それに取って代わる脅威をどのように見ているのかということに直結するように思うのです。

比較的抑制的な演奏なのに、ものすごいエネルギーを感じるのがこのアルバムです。それはおそらく、シュニトケ自身が作品にビルトインさせた「怨霊」ともいえるものなのではないでしょうか。おそらくこの作品を日本のオケが演奏することはないというか、できないと断言しますが、それはそのエネルギーを受け止める「精神」が備わっていないからだと断言します。しかしながら、この新型コロナウイルスとの戦いの後、どんな化学反応が起きるのかは、匙を投げずに注目し続けていきたいと思います。この演奏と作品は間違いなく、私にとっては「自分より偉大な力」の配慮だと思うからです。

 


聴いている音源
ルフレッド・シュニトケ作曲
交響曲第2番「聖フロリアン
エレーナ・ザラトワ(メゾ・ソプラノ)
エリク・クレマンガリェフ(カウンターテナー
ユーリ・ボグダノフ(テノール
ユーリ・ヴィシニャコフ(バス)
ソ連文化省室内合唱団(合唱指揮:ヴァレリー・ポリャンスキー)
ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮
サンクトペテルブルクフィルハーモニー交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。