かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:シュニトケ 合唱のための協奏曲

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はシュニトケの「合唱のための協奏曲」を取り上げます。

シュニトケは以前取り上げていますが、旧ソ連の作曲家です。

ルフレート・シュニトケ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%83%88%E3%82%B1

なのにドイツ語的なのはなぜ?って、ウィキ読んでくださいね〜。書かれてある通り、ドイツ系ユダヤ人だからです。

ですからウィキには記述ないですが、恐らく強烈な迫害、或は差別を受けています。旧ソ連ユダヤ人を迫害していたことは、あまり知られていません。

つまり、第2次世界大戦で戦ったソ連、ドイツともに、ユダヤ人を迫害すると言う点では一致しているんです。この作品はその点を知っていないと、なぜシュニトケが実に考えさせられる強烈な内容の詩を採用したのかが、見えてこないのでつまらなくなるのです。

嬉しいのは、借りた時に歌詞もついていたことです。解説についているって程度で実はとても読みにくいのですが、あるとないとではまったく違います。できれば、ロシア語と対訳になっているとさらによかったですが、大体の内容は把握できるので、ないよりはずっといいです。

そしてこの作品、実は作曲は最近で、1985年。このアルバムの演奏者達に捧げられています。ですから、この演奏はシュニトケから「メッセージを預かった」存在だとも言えるでしょう。

歌詞は中世アルメニアの詩人、ナレカツィ。その詩は非常に気高く、そして深く、現代人に対して突き刺さります。それだけではなく、そもそもがロシア正教の合唱の伝統を十分意識し、作曲されているのも特徴なのです。ですから、時としてブルックナー、或はプーランクのような和声も散見されます。その和声の中に、20世紀音楽もしっかりと混ざり、複雑な中に一つの明快なメッセージを強く持った作品です。

伝統と人間性。それがまるで万華鏡のように音楽として鳴り響くのです。生命力をもった、人間味あふれる作品だと言えるでしょう。

そんな作品を、「メッセージを託された」献呈された指揮者、ポリャンスキーと、合唱団であるソビエト国立室内合唱団(現ロシア国立シンフォニー・カペラ)。透明感と透徹、そして優れた表現力で、作品に生命を与え、自分たちのメッセージとして歌っています。ですから、幾度か聴くうちに深い感動がじわりとやってきます。苦しみ、悲しみ、哀しみ、希望、絶望・・・・・様々なものが入交り、複雑さを見せつつも、協奏曲と言っても一つの精神性、或は魂の風景というものが現出されていきます。

それは、バロックにおける合奏協奏曲と一緒の様式なのですが、まさにその合奏協奏曲の様式を借りて、ロシアの伝統と、そこに息づく生命を表現する作品であることを、しっかりと歌い上げています。協奏曲といっても一つの抒情詩のようなものでもあり、そこにシュニトケの「ドイツ系ロシア人」という出自が絡んでくるのですが、それを声高には叫ばず、しかしじっくりと哀惜を聴かせてくれます。

これぞ、力のある合唱団の仕事だと思います。ことさらに違ったことをしなくても、じんわりと滲み出るもので、人を感動で泣かす・・・・・素晴らしいことです。社会主義の中でこのような作品が生まれたことを鑑みますと、自由な、そして強烈に右に寄っているはずの日本は何やってんだって思います。




聴いている音源
ルフレット・シュニトケ作曲
合唱のための協奏曲
エレーナ・ドフ=ドドンスカーヤ(ソプラノ)
ワレリー・ポリャンスキー指揮
ソビエト国立室内合唱団(当時、現:ロシア国立シンフォニー・カペラ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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