かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:マルタン 管弦楽作品集

東京の図書館から、今回から小金井市立図書館に加えて、府中市立図書館のライブラリもご紹介していきます。

まずは、府中市立図書館についてご紹介しましょう。先日まで行われていたラグビーワールドカップのキャンプ地にもなった府中市。プロラグビーチームを2チーム抱えるこの町は、そもそもその2チームが成立する基礎となった二つの企業が街を潤してきた歴史を持ちます。それが東芝サントリーです。

さらには、そもそもが調布に近いということもあり、航空自衛隊の基地もあるという、財政的には恵まれた自治体です。そのうえで、府中という地名が示す通り、かつては武蔵野国国衙が置かれた町であり、奈良時代以来の歴史を持つ街でもあります。毎年5月に行われる「くらがり祭」は大国魂神社の歴史ある祭りです。

そんな歴史を持つ府中市の市立図書館ですが、実にライブラリが豊かなのです。ほぼ神奈川県立図書館並みと言っていいでしょう。分館も多く利便性もいい反面、貸出期間が短いことが一つの難点だといえます。

library.city.fuchu.tokyo.jp

それにしても、神奈川あたりの方だと、奇異に感じられると思います。なぜ小金井に「加えて」府中なのか?と。大学図書館ならいざ知らずって思うかと。実は、東京は都下においては相互利用と言って、周辺自治体の図書館が使えるケースが多いのです。小金井市民であれば、その周辺自治体の図書館も相手方自治体図書館で登録して貸し出しカードを作ればだれでも借りることができます。

その「相互利用」において、借りてきているってわけなのです。ただ、当然ですが市民以外なので制限はあります。それでも、1か月で15枚を借りることができます(5週ある月の場合)。本当に小金井と府中の両図書館で借りてしまえば、神奈川県立図書館以上のものが借りられてしまいます・・・・・

その第1弾として借りてきたのが、今回ご紹介するマルタン管弦楽作品を収録したアルバムです。マルタンは20世紀のスイスおよびオランダで活躍した作曲家です。ウィキでは基本調性音楽だと書かれていますが・・・・・

ja.wikipedia.org

実際には、かなーり12音階しています。とはいえ確かに無調というわけではなく、むしろ実に「20世紀音楽」しているなあって思います。

12音階っぽい作品が第1曲の「7つの管楽器、ティンパニ、打楽器と弦楽のための協奏曲」。バッハを精神的支柱にしていたマルタンらしくバロック的な作品を作曲しているわけなんですね。とはいえ、その音楽はまさしく20世紀音楽。

次の「弦楽オーケストラのためのエチュード」も各曲がつながりっていて一体性を持っていますが20世紀音楽ですし。唯一調性感が明確に感じられるのが最後の「小協奏曲」ではないかって思います。面白いのは、2曲目までが第2次大戦後の作品であり、最後の小協奏曲のみ第2次大戦中の作品である、ということなのです。その3曲目が最も明るい作品でもあるのが印象的です。

もちろん、ほかの戦後の作品も聴いてみない限りには何とも言えませんが、戦中はスイスにいたというのが大きいのかもって思います。戦後オランダに住むようになって、戦争の惨禍を目の当たりにした・・・・・そういう可能性もあるかもって思います。それでも、気品を失わない2曲は、実に魅力的な作品です。

それは、演奏者のせいかもしれません。指揮はアンセルメ、オケはスイス・ロマンド管ですから・・・・・当然と言えるかもですが。このコンビでどれだけの名盤を生み出してきたかって話ですから。ただ、いいのはこのコンビであるってだけではなく、ソニーハイレゾ対応スピーカーSRS-HG10で聴きますと、レコーディング・エンジニアが「色を付けた」部分は明確にわかりますので聴きずらいこともあるアンセルメが活躍した1960年代の録音なのですが、その「色付け」が一切排されているのがわかります。おお!これはいいなあって思います。

色が排されているってことは、基本ライヴそのままを、当時の録音技術で収録しているってことです。ですから、アンセルメがオケを使ってどのようなメッセージを伝えようとしているかが、一目瞭然なんですね。解像度の高いクリアな音質(3曲目はモノラルなのに!)で、気品と同時になんとなくある暖かさ・・・・・時には愉悦、時には絶叫、時には諦観、時には悲しみ・・・・・様々な感情が演奏には込められていることはよくわかる演奏なんです。これがアンセルメが名指揮者と言われるゆえんでしょう。旋律感たっぷりな演奏ならだれでも感動するでしょうが、決して酔えるとはいいがたい20世紀音楽において雄弁に物語る演奏をするっていうのは、もう才能でしかないです。

こういった20世紀音楽の演奏においてこそ、名指揮者は判断されるべきだって思います。その意味ではも、カラヤン批判はどこか的外れな気が私はずっとしているのです。それはまたどこかでエントリを上げることができたらなって思います。

 


聴いている音源
フランク・マルタン作曲
7つの管楽器、ティンパニ、打楽器と弦楽のための協奏曲(1949)
弦楽オーケストラのためのエチュード(1955~56)
小協奏曲(1944)※モノラル
エルネスト・アンセルメ指揮
スイス・ロマンド管弦楽団

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