東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はスウェーデンの作曲家アルヴェーンが作曲した男声合唱曲集のアルバムをご紹介します。
アルヴェーンは、このブログでも幾度か出てきた作曲家ですが、この人、基本的に管弦楽作品で有名な人です。しかし、この人の最大の功績は、祖国スウェーデンのウプサラ大学男声合唱団、オルフェイ・ドレンガルを世界レベルの合唱団へと育て上げたことなんです。
ウィキで、お!この人合唱曲結構作ってるのね、って思い、図書館を幾度か逍遥したのち、見つけたのがこのアルヴェーンのアルバムです。こういうものは国内盤ではあまりなくて、この音源も元はキングレコードが国内盤編集をした、BISのものです。
歌詞は当然スウェーデン語。歌詞を書き写す暇がなくて音楽データのみなのは、今となってはつくづく残念です。いっそ、ハイレゾで出ていて歌詞対訳まであるんだったらこのファイルを削除してそっちを生かしたいくらいです。
調性感からそれほど外れず、けれどもしっかりとした世界が描かれているのは素晴らしく、そのうえでシンプルなのは学生合唱団にぴったりだと思います。まあ、だからアルヴェーンの合唱曲はあまり知られていないって点もあるのかもしれませんが・・・・・
でもそれって、じつは日本のクラシック・ファンが都合よくつまみ食いしているにすぎないんです。実際はこういう作品はまさに後期ロマン派を受け継いだ作品です。例えばブラームス、たとえばブルックナーです。二人とも交響曲で有名な作曲家ですが、交響曲以上に残したのは合唱曲でした(ブラームスはさらに珠玉の室内楽があるわけです)。
アルヴェーンがウプサラ大学男声合唱団オルフェイ・ドレンガルの指揮者に就任したとき、学生のために作曲をと考えたとき、ブルックナーやブラームスが念頭になかったとは私は考えません。和声、構造、どこから見てもブラームスやブルックナーの影響大です。
そんな作品を演奏するのは実は!そのオルフェイ・ドレンガルなのです。ppからffまでののびやかで柔軟な表現。それが生み出す生命力。そして美しさ。どれをとっても、素晴らしい合唱です。これだけの合唱をするには息のコントロールなど、本当に難しいんです。だってオルフェイ・ドレンガルって、プロではなくて学生合唱団、つまりアマチュアですよ?それがまるでドイツの放送合唱団と見まごうばかりの演奏をしてるんです。奇跡?いいえ、現実です。そしてそれが、アルヴェーンが残したものなんですね。いまでは学生だけではなく、55歳までの社会人も参加している、ウプサラを代表する合唱団になっています。
指揮するはさすがにご本人ではなく、ロベルト・スンド。この人もずっとオルフェイ・ドレンガルを指揮してきた人のようで、合唱団とアルヴェーンだけではなくシューベルトなども録音し、高い評価を得ています。実際、その評価は正しいだろうと思います。いやあ、スウェーデンってなんでこんなにうまい合唱団多いんだ?って思いますよ。以前このブログでもスウェーデン放送合唱団を取り上げていますし、エリック・エリクソン合唱団もスウェーデンです。ドイツの放送合唱団だけを聴いていてはいけないなと、ひしひしと感じる素晴らしい芸術です。
聴いている音源
私の愛する者~アルヴェーン 男声合唱曲集
ヒューゴ・アルヴェーン作曲
①フレドマンの手紙 No.14
②海の夜明け
③蝶
④グスタヴ・フレーディングの葬式
⑤子守歌
⑥ロスラーゲンの春
⑦スウェーデンの旗
⑧私の愛する者
⑨セレナード(リンダギュル)
⑩夜
⑪夕べ
⑫ゆりかごの歌
⑬わが心を汝がみ手に
⑭静かな時に
⑮夏の香り
⑯おまえは静かな安らぎ
⑰わたしはおまえにあこがれる
⑱森は眠る
⑲月の光に(アウグスト・セデルマン作曲/アルヴェーン編曲)
⑳試練
㉑喜びの花
㉒ヴェルムランドの歌
㉓オクスベリ行進曲
㉔娘の歌
㉕おろか者
㉖牧童の歌
㉗アンデシュは活発な若者だった
㉘乙女は輪に加わる
㉙私達の牧場に
㉚ムード
クレス=ホーカン・アーンショー(テノール、⑤⑨⑩⑬~⑱⑳㉓)
フォルケ・アーリン(ピアノ、⑬~⑱)
ロベルト・スンド指揮
オルフェイ・ドレンガル男声合唱団
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