かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:バーンスタイン 自作自演集2

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。シリーズでご紹介しているバーンスタインの自作自演集の2枚目です。

この2枚目こそ、正真正銘のバーンスタイン自作自演集となります。オン・ザ・タウン、ファンシー・フリー、そして映画「波止場」。どれもミュージカルや映画好きな人にとっては垂涎の作品ばかりですが、日本のクラシック・ファンだと知名度はいまいちです。だって、「映画っていう大衆文化の話でしょ?」ってなっちゃうからなんですよ。

1枚目の時も言及しましたが、20世紀はメディアの時代です。特に楽劇を成立させたワーグナーの影響は絶大で、誰もワーグナーから離れることは難しかったのです。映画こそ、ワーグナーが成立させた楽劇の影響を受けたものはないからです。

だからこそ、20世紀の著名な作曲家たちはこぞって映画音楽を作曲しました。大体、バーンスタインショスタコを左翼だと言ってその映画音楽をくそみそに言う人に限って、伊福部昭の「自衛隊のテーマ」は無批判で礼賛ですもんね。でもあのテーマは、伊福部が巧妙に隠した反戦音楽ですが・・・・・

まあ、バーンスタインの本国アメリカも同じようなもんですけどね。実は1曲目「オン・ザ・タウン」と2曲目「ファンシー・フリー」は同じ作品なんです。ジャンルが違うだけです。

オン・ザ・タウン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3

ファンシー・フリー(英語表記)Fancy Free
https://kotobank.jp/word/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC-122492

正直、バレエ音楽の「ファンシー・フリー」はかなり意味深な用語です。本来、フリーという言葉が後ろで使わている場合、「束縛されない」というような意味を持ちます。ですからこの意味は「おかしくない」「面白いことに束縛されない」という意味を持ちます。

だからこそ、ミュージカルになったとき、最後のシーンは戦場へと向かうシーンだったわけで、それは作曲された1944年という時期は第2次世界大戦だったということを考え合わせれば、わかると思うんです。ところが、これが映画になると明るい部分だけになってしまい、本来バーンスタインが言いたかったことは否定されているように思います。まあ、だから映画ではほとんど他者の作品に置き換えられたんだと思いますが・・・・・そしてその映画は大ヒット!当時のバーンスタインの落胆ぶりが目に見えるようです。

しかし、バーンスタインはあきらめず、映画「波止場」の音楽を書くわけです。

波止場 (映画)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A2%E6%AD%A2%E5%A0%B4_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

この作品は、バーンスタインの精神とマッチした映画だったと思います。これは労働者が戦う姿ですが、戦うということは殴り合うことなのかということを問いかける映画でもあります。最後テリーの反撃に労働者はどのように反応してテリーを応援したのか。殴り合うことを否定し、自分たちの仕事を黙々とするということで抵抗するわけなんですね。これを、現在の労働用語では「順法闘争」と言います。まさに、この映画は「順法闘争」も戦いの一つだと問いかけるものでもあるわけなんですね。

まあ、それゆえにクラシック・ファンの間では不人気な作品でもありますが、しかし振ってるバーンスタインとオケのニューヨーク・フィルハーモニックはノリノリ!どの作品でも気品を持ちつつノリノリで、魂の鼓動が感じられます。やはり作曲者が振っているという点もあるのだろうと思います。そして多分、バーンスタインニューヨーク・フィルとの関係性でしょう。辛苦を共にしてきたオケと指揮者。だからこそわかるものがあるといえるでしょう。オケも情熱的です。バーンスタインという才能をしっかりと受け入れ、評価している姿が、演奏からはひしひしと伝わってきます。

もちろん、バーンスタインのこういった作品に影響を与えたのはアメリカの才能だけではなく、ショスタコーヴィチの存在も大きかったと思います。第2次大戦ではアメリカとソ連は連合国として共に戦っているため、ソ連の音楽もまた大量にアメリカへ入ってきた時代でした。自分と同じような優れた才能が社会主義の国にもいる・・・・・・バーンスタインにどれほどの勇気を与えたことでしょう。

これらの作品には、そういった国境を越えた才能どうしの共感すら、背景にあるような気がします。そしてニューヨーク・フィルハーモニックの団員たちはそれを知っている・・・・・ゆえの情熱的な演奏なんだろうと思います。




聴いている音源
レナード・バーンスタイン作曲
ミュージカル「オン・ザ・タウン」より3つのダンス・エピソード
1.大好きな人
2.孤独な町、パ・パ・ドゥ
3.タイムズスクウェア、1944年

バレエ音楽「ファンシー・フリー」
1.3人の水兵の入場
2.バーの場
3.二人の少女の入場
4.パ・ドゥ・ドゥ
5.コンペの場
6.ダンス変奏1
7.ダンス変奏2
8.ダンス変奏3
9.フィナーレ

映画「波止場」からの交響組曲
1.アンダンテ
2.アダージョ
3.アンダンテ・ラルガメンテ
4.熱心な前進
5.アレグロ・ノン・トロッポ
6.ア・テンポ

レナード・バーンスタイン指揮
ニューヨーク・フィルハーモニック

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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