かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ワーグナーの管弦楽作品集

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はワーグナー管弦楽作品集を取り上げたアルバムをご紹介します。

といっても、その半分のボリュームは交響曲ハ長調でして、これは以前若杉指揮東京都交響楽団のものを取り上げています。これも県立図書館で借りてきたものでした。

それ以外にもあってもいいかなと思ったのが半分、残り半分は、聞きなれない序曲が収録されていることでした。それが歌劇「恋愛禁制」序曲と歌劇「妖精」序曲の二つです。

そして最後が、有名な楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死。しかもそのトリスタンは、指揮がスクロヴァチェフスキ。ほう、こんなのも振るんだと思い、借りることにしたものです。

実はトリスタン以外は、ワーグナー若かりし頃の作品ばかりなんです。トリスタンなどがワーグナーだと思っていると、なぜ息子の和声が多少健全なのかがわからなくなります。息子は父親の若かりし頃をむしろ参考にしていることが聴きますとよくわかるラインナップになっています。

交響曲 (ワーグナー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2_(%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%BC)

恋愛禁制
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%8B%E6%84%9B%E7%A6%81%E5%88%B6

妖精 (ワーグナー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%96%E7%B2%BE_(%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%BC)

トリスタンとイゾルデ (楽劇)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%82%A4%E3%82%BE%E3%83%AB%E3%83%87_(%E6%A5%BD%E5%8A%87)

確かにトリスタンはヨーロッパの多くの作曲家に影響を与えた作品ですが、一方でワーグナーの若かりし頃の作品はあまり顧みられていないという状況がありました。息子としてはむしろそのほうが問題だって思っていたのかもしれません。一応偉大な父の業績ですからねえ。そう思うと、息子ジークフリートが多用した和声に納得がいきます。

多分、このアルバムはそうった新しいワーグナー像を提示するということが編集方針になっているように思います。驚くのは、確かに長いトリスタンが、実に筋肉質な演奏になっているという点です。スクロヴァチェフスキのタクトはテンポを幾分速めにしているのですが、そうするとトリスタンのおどろおどろしさよりも、むしり耽美的な愛のほうがしっかりと浮かび上がるのが不思議です。ワーグナーの作品に見受けられる「耽美的と健康的愛とのせめぎあい」が見事に表現されています。

岩波新書あたりで出ているワーグナーに関する書籍を読みますと、ワーグナーってほんっとうにだらしないというか、自己中な部分も多い人なんですが、同時に愛に飢えていた人でもあることは顕著で、健康的な愛にあこがれる一方、実際には耽美的破壊的愛を題材としては好んだり。機能不全家族ゆえのアンバランスなんですが、それを音楽でストレートに出したという作曲家だと私は考えます。そりゃあ、近代を迎え社会が激変したヨーロッパにおいて、機能不全家族がどんどん生産されていく時代の中で、衝撃が走るのは当然だったと思います。そう、そうなんだワーグナー!と。

やがてこういった作品たちが作曲されてから数十年たってようやく、新大陸アメリカにおいて、機能不全家族によって病気にならざるを得なくなった人たちのための回復プログラムが確立しますが、ワーグナーはその直前当たりの時代を生きた作曲家だと言えます。機能不全家族によってどんな問題が発生するのかを、ストレートに世に問うた作曲家だったといえるかもしれません。もちろん、彼自身の生き方にも部分部分で問題があったという点も含めて。それはやがて、ちょうどその回復プログラムが確立する時代に起こった第二次世界大戦という悲劇を生み出していく、一つのエンジンともなっていきます・・・・・

ワーグナーが決して耽美的だけではなかったことを証明するこのアルバムは、とても意味あるものだと思います。こういったアルバムがなかなか日本では出ないんですよねえ。単にかつての栄光よ!とか歴史の連続性だとかになってしまうんですよねえ。ただそれはそれで、我が国がいかにあの戦争で傷ついたのかの証明でもあるとは思うんですが・・・・・・なら、まずはそれを癒すことが先であって、憲法を改正することではないと私は思っています。




聴いている音源
リヒャルト・ワーグナー作曲
交響曲ハ長調
歌劇「恋愛禁制」序曲
歌劇「妖精」序曲�F楽劇「トリスタンとイゾルデ前奏曲と愛の死
ヘリベルト・バイゼル指揮
ハンブルク交響楽団交響曲ハ長調
アロイス・スプリンガー指揮
ルクセンブルク放送交響楽団(「恋愛禁制」「妖精」各序曲)
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮
ミネソタ管弦楽団(トリスタン)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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